第4話ローランサン

車山高原のペンションは朝食のブルーベリー以外にこれといったものはなかった。車山のドライブウェイ を走って見たけど今日は雲海は見えなかった。時間帯によるのかなぁ。初めてこの辺りを走った時は綺麗に見えたのに…。なおみは助手席で楽しんでいた。ドライブが好きなんだろう。軽く ハミングしながら景色を楽しんでいた。

土産物を見た後はこれと言ってすることがなかった。白川郷 ゆっくり回って森の中を通る道を左に入ってみた。道路から見えなかったがそこにも綺麗な池があった。駐車場に車を止めて眺めていると綺麗に透き通った水の中をマスだろうか白い砂の上に影を落として美しい魚が泳いでいく。釣りをしている人は誰もいなかったけれども その気になれば結構 釣れるのかもしれない。信州はどこに行っても美しい森や林 そして、湖や池があちらこちらにあった。自分が住んでいるところにも池や林はあったけれど その透明感というか澄み渡った感じがまるで違った。夏の信州は水も 空気も澄み渡っていて、光量というか 明るさの質が違っていた。

車山高原から清里を南北に結ぶ森の中のハイウェイみたいな道に入った。新しく作られた道なんだろうか 以前は こんなところに こんなに素晴らしい道路はなかった。まっすぐに伸びた 杉古 太刀の中をどこまでも伸びている。木漏れ日が単調さの中に美しいリズムを刻んでくれる。

清里にはすぐについてしまった。

ガラス工芸店 オルゴールの館 清里駅にはいろんな店が集まっていた。どれも結構なお値段 なので 見るだけにして 次を急いだ。まだ時間があったので途中でお昼を食べて 山梨の方へ向かった。こんな山の中にどうしてこんなに美術館 があるんだろうと思ったがその中の1つ マリー ロラン さんの館に向かった。僕は美術には疎かったのだがローランさんは以前 呼んだ サガンの小説の表紙になっていたので 知っていた。パステル調とどう言うんだろうか ローランさんの絵には淡く綺麗な色が多かった。だからだろうかローラン さんのファンには女性が多かった。若い なおみはきっと退屈するだろうと思っていたが、意外に直美はローランさんを楽しんでいた 好きだとも言っていた。どうやら なおみは絵が好きらしい。

「私 こんな風に美術館に来るのは初めてよ。」

「デートで美術館 なんか来たことなかった。」

「絵とかよく見るの?」

直美はなぜかずいぶん興奮していた。まあ、喜んでくれていることは間違いなかった。ローランさんを選んだのは正解だったのかもしれない。もしかしたらなおみは僕が信州に憧れるようにローランサを見るデートに憧れていたのかもしれない。そして君を誘い、君を抱くごとに君を失っていくのかもしれない。

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