第33話 悪い予感はだいたい当たる
(専用パッシブスキル【魔力吸収】を発動します)
え、なんで!?
そんな考察をする暇もなく、目の前の復活したゴーレムが瞬く間に岩の残骸へと再び姿を変えた。
「お前、何をした? 」
気づけば俺のそばまでやってきていた浦岡が声をかけてきた。
珍しく彼が驚きを隠せないといった表情をしている。
「いえ、自分にも何が何だか…… 」
俺の答えに納得がいっていないのか再び彼は表情を無くし、そっぽを向いた。
本当にこの人は何を考えているのか分からないな。
「戸波さん、すごいですよ!! 本当に何したんですか? 」
「そうそう、急に光り始めてぼわぁぁっとゴーレムを吸い込んでいったし! 実はスゴい冒険者だったり?? 」
一方、この本部組の2人は分かりやすい。
助かったことの嬉しさからかヨウスケ、ヒナは興奮状態になっている。
それから2人はどうやっただの、スゴい人だのとやたら俺を持ち上げてきているが、詰まるところいい気分にさせてこの先も助けてもらおうという魂胆だろう。
俺の性格が歪んでいるって?
いやいや、人間そんなものなのだ。
自分の利が1番。
しかしまぁ褒められるのは悪い気しないな。
そういえばふと気になったことがあったので口に出す。
「あれ、他のゴーレムの残骸は? 」
おそらく俺が吸収したのは、ヨウスケが斬り刻んだゴーレムの一部だけのはず。
浦岡が倒したものや、俺のところまで辿り着けなかったゴーレム達に何かした覚えはない。
なのに、他のゴーレム達もただの岩に戻っているのだ。
「本当だ。そういえば浦岡さんの周りにもゴーレムが何体かいたような? 」
戦いながらもヨウスケは周りがよく見えていたようだ。
まぁそりゃD級冒険者で俺より強いわけだから当然といえばそれまでなのだが。
「それは……あいつが何かした途端、崩れ去ったのだ 」
浦岡は俺を指差し、そう物を言う。
それによって再び俺に注目が集まるが、知らんふりしてやった。
何しろ本部の人間がいるのだ。
マジックブレイカーがバレてもめんどくさい。
それにしても本当に全て消えた?
それとも術者が意図的に消したか。
どちらにせよ、あのゴーレムが魔法で創られたものだということは確定した。
あとは誰が発動した魔法なのか。
この遺跡に俺達以外の人間がいてそいつが発動した、もしくはこの中の誰かがこっそり魔法を使った?
まぁ……浦岡が1番怪しいわな。
アイツ土魔法の使い手みたいだし、ゴーレムも簡単に創れる可能性は充分にある。
いや、こういう悪い予想は止めといたほうがいい。
フラグがたってしまう。
「とりあえず、進みません? 」
この提案をしたのは魔法剣士、ヨウスケだ。
これはかなり意外。
彼なら根掘り葉掘り聞いてきそうなものだが。
そして俺に向かって下手くそなウインクをしてくる。
え、もしかして俺に何か隠し事があることを感じ、庇ってくれたのか?
彼氏の姿を見てヒナも何か勘づいたのか、ハッとした顔をした後に、
「そうそう! 目的はこのダンジョンの攻略だし! 」
彼女もヨウスケと同じくウインクをカマしてくるが、彼氏に引けを取らず決して上手いとは言えない。
いや、この2人は一体なにを察したんだ。
「まぁ……そうだな 」
おお……。
浦岡が納得して前に進み始めた。
本部組のおかげでごまかせたのか?
今は彼がゴーレム生成の犯人という証拠もない。
しっかりヤツのことは警戒しておこう。
そう思って俺とヨウスケ、ヒナの3人は彼の後に続いた。
……のはいいが、俺はなんでこの2人の間にいるんだ?
初対面のカップルに挟まれている状況、これは俺のことバカにしてるのか?
未だ童貞、彼女いない歴年齢の俺を嘲笑ってんだろ。
って思いたくなるような心境だ。
「ねぇ戸波さん 」
そう声をかけてきたのは、俺の右手側のヨウスケ。
「え、何? 」
そう聞くと、彼は俺に耳打ちをしてきて
「あのゴーレム吸い込んだの戸波さんでしょ? さっき浦岡さんには知らないふりをしてたみたいけど戸波さん、ゴーレムが残骸に戻ったあとそんなに驚いている様子には見えなかったから 」
こいつやっぱりよく人のこと見てるな。
剣でゴーレムをぶった斬りながら俺の表情まで見てたって今思ったらすごくね?
まぁこの2人ここまで絡んでいて悪い人じゃなさそうだし、それくらいなら教えてもいいか。
「あぁそうだよ。魔力を吸収できるスキルがあるんだ 」
浦岡に聞こえてはいけないと思い、耳打ちで彼に返答する。
するとヨウスケの表情がパーッと明るくなり、
「やっぱりヒナの予想は当たってたよ!! 」
彼女に話を振る。
「え、なんの話!? 」
俺が左右の2人を交互に見ながらそう聞くと、ヒナはヨウスケよりもさらに小さい声で俺に耳打ちをしてきた。
「最初からゴーレムが魔法で創られたって分かってたの。魔力感知……私はそれが得意で 」
「あ、そうなんだ 」
人の彼女がこんな近くに居て、それに耳元で囁いてくるなんてダンジョンというこの状況下でも変な背徳感を感じる。
ちょっと興奮してしまったのはここだけの話にしよう。
にしても魔力感知ってめっちゃ便利そうじゃん。
さらにヒナは俺の耳元で説明を続ける。
「この魔力感知、どんなものでも魔力がこもってるかどうか分かるの。それでね、さっきから気になってるんだけど少し前、二手に分かれたでしょ? こっちの通り道にだけ魔力を感じるんだ 」
「え、それってこの奥にめっちゃ強いモンスターがいるとか? 」
彼女は首を横に振っている。
どうやら俺の見解は違うらしい。
「そうじゃなくて通り道に、です! 」
彼女の口調からは力強さを感じる。
通り道に?
まさかこの通路自体が魔法で創られたってことか!?
そうだとしたら、なんの目的でそんなこと……。
「思ったより、気づくのが早かったようだな 」
さっきまで足を進めていた浦岡は気づけば立ち止まり、俺達の方を向いていた。
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