ドーアの日記

ドーア

3月18日

 今朝、珍しく早く起きたので着の身着のまま外を歩いていると、肌寒いこの時間にしてはやけに汗をかいたバリオスが大手を振って走ってきた。いやに笑顔で気持ち悪かった。


 やつはこの頃、近くの街の店(果物屋?)を手伝っているらしい。俺はてっきり、実のヘタを取り除いたり、軒先で客の婆の聞き役に徹したりなどの仕事を行っているものだとばかり思っていたが、どうやらけっこうキツい作業をやっているようだった。(具体的にどういう仕事だったか、聞いたけど忘れた)


 「朝から人のために働くのはよい、身体を動かすのは気持ちがよい」と、昔のやつでは考えられないようなことを言っていた。綺麗な目をしていた。


 家に帰って母にこのことを話すと、それはいいことだ、お前も見習いなさい、と同じような目をして言う。すぐに言うんじゃなかったと後悔した。そして母は「勤勉は万事に勝る美徳である」と続けた。


 母がこのような教訓めいたことを言うとき、それはたいてい、昔読んだ本からの引用である。だから、心からの言葉というより、使い時だからとっさに出した言葉、という感じがしてなんだか冷めてしまう。


 このように、その日何かあったら日記にしたいと思う。何も無かったら日記にしないと思う。でも、せっかくの紙がもったいないので、できるだけ継続したい。






 

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