トリあえず、そのままで

国見 紀行

探しトリます!




 私は、トリを探しています。

 見失ってから半年が経とうとしているのです。


 ご存知ですか?

 かつては、そのトリを中心に人が集まっていたんです。

 あの美しいビロードブルーの羽毛。

 そのさえずりは心地よく、またその仕草を見たくて多くの人が集まるのです。


 でも、半年前にそのトリは大きく羽ばたき、私たちの目の前から消えてしまったんです。


 だというのに、トリが飛び立った場所にはまだ人が集まる。

 もう帰って来ないと分かっていても、まだまだ人は集まる。


 けど、そのトリを探しに一人、また一人去っていく。

 ある人はトリのかわりに蝶に出会い、またある人は双眼鏡を片手に探し、またある人はタイツを手に走り出す。


 どこにいったのだろう。

 私は、それでもトリが忘れられずその場所に残っている。


「あ、久しぶりです。なんだかここ、ちょっと変わりましたね」


 すると、一年ぶりに会う人が声をかけてきてくれた。


「お久しぶりです! そうなんですよ。みんなが目標にしてたトリがいなくなっちゃって……」

「おわ、本当だ。人も減ってるし、なんだか暗いっていうか。シンプルっていうか……」


 トリが飛び去った後には串が二本。折り重なるように放置されたその場所に、こうした人がまだやってくる。

 まるで私は、かつてトリがいた場所へ久しぶりにやってくる人にトリの行方を伝える案内人のようだ、と思った。


「でも、こうして皆さんにまだ会えるのは悪くないですね」

「ええ。また前みたいにワイワイお話できればいいんですけど」


 私は知っている。

 この場所を離れた先で、かつての知り合いたちがまた楽しくお話していることを。

 けどなぜかここを離れたくないのだ。

 執着が強い、とでもいうのだろうか。


「ふふ。また何かたくらんでるんでしょう?」

「え、ええ!? そんなことないですよ!」

「でもなくならないでほしいな。私あまりこういうの詳しくないから、別のところに行くのだって結構大変なんだから」


 そう言いながら、その人も去っていった。次はいつ会えるだろう。


 今日も、トリ会えず。

 またいつか、会えますように。

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トリあえず、そのままで 国見 紀行 @nori_kunimi

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