KAC20246と世界のおわり

馬村 ありん

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 カクヨムユーザーのリンは、KAC20246へと投稿するのをあきらめることにした。


 今回のテーマは「トリあえず」。

 根が真面目なリンは「とりあえず」と「トリ」の両方を消化しなければならないと苦慮してしまったのだ。


 リンは近況ノートに『「KAC20246」のテーマについて』と題した文章を書いて、今回のお題への不満を書き連ねた。

 投稿し終えると、眠気に襲われた。実は夜遅くまでゲームをやっていたのだ。

 布団に潜り込もうとしたその瞬間――。


 ガタガタとクローゼットから音がした。そして扉がひとりでに開く!

 ――いゃああ! オバケ!

 リンの前に現れたのは、小汚いおっさんと、カクヨムのマスコットキャラクター、トリだった。


「我々は二十年後の未来から来た」とおっさん。「私は君の二十年後の姿なんだ」

「僕が中学生の時に初めて書いた小説のタイトルは?」

「『魔剣使いジャック・ザ・リッパーの獣王転生』」

「本物だ!」


「どうして未来から?」

「世界の滅亡を止めにきた。実は君がKAC20246を書かないと世界が滅亡してしまうんだ」

「なんでだよ!」

「よく分からないが、そうなってる。ちょうの羽ばたきが地球の裏側で嵐を巻き起こすアレだよ」


「でも書けないよ、このテーマじゃ」

「原稿に向かえば筆は勝手に走るものだよ。なあ、トリ」

 トリはその黒点のような目をぱちくりさせた。


「ところで、そいつはなんでいるんだ?」

「いまはそんなことに構ってる場合じゃないだろ」

「気になるんだが」

 トリはリンに向かってはてなと首を傾げた。


「分かったよ。書けばいいんだろ書けば」

 トリは両の羽の先を合わせ拍手した。


「その前にやることがある。とりあえず眠らせてくれ」

「うむ。執筆は体力を使うからな」


 リンはトコにつくと、爆睡した。

 トリは短い足でよちよちベッドによじ登ると、丸い体をリンに横たえた。すぐにスヤスヤと寝息を立てる。


 リンが目覚めれば、執筆が始まり、物語が始まるのだった。


 終わり 

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