0430「センスの哲学」
千葉雅也さんの本。私は結構、作者さんの本をもっていて、難しいなと思って断念した本(用語の解釈が日々の流れのなかでは不可能だった。つまり私の能力不足。)や、単純に納得してうなずける本、少しだけ独特だと思いながらも楽しめる本など、様々だ。
今回の本はどちらかというと、作者さんの専門よりの本だと思う。専門が哲学にあるとすればの話なんだけれども。作者さんは、哲学や文学、音楽なら絵画やら。様々な芸術的分野において活躍を為されているらしく、多才な人のようだ。
ツイッターの活用方法も一般的な呟きも含めて、思索を深めるためのメモ的な使用をしているところもあるし、実際かなりのツイッター古参ということでもあるらしい。古参ならではの多用な使い方を心得ている模様。
今回の、センスの哲学。
センスと生成はセットになって考えられるということ。生成という行為がなくして、センスは語れないということ。センスがあるね、という言葉から始まって、その態度や姿勢、意味や脱意味。様々な寄り道をしていって、最後には、芸術論、人生論にまで言及していく。そしてこの本は何より、芸術を理解したいと思う人々に向けてではなく、広義的意味における芸術の、生成をなにかしら行う私たち人間を対象にして、すなわち全員に向けて書かれている本であるということ。
そんなことを感じた。
特にこの本は、昨今のAIブームをうまく借用して話をしているという印象があった。最後にも、人間もAIも何かかを土台に生成をしている、というようなことが書いてあったし。AIというもの、特に統計的計算を経て生成を行う、生成AIというものについて、その人間との類似性、芸術的なものを生み出していく過程における類似性というもの、それを意味の限定などにおいて、具体的に論じていたように思う。(かなり殴り書きになっていて、何も本文から照らし合わせていないが。この書き方をして、ある意味で確率的生成の雲のなかで、ぼんやりとこの本の感想的なものを書いていきたい所存。)
極論、生成をするということに、意味はなくてもよく、脱意味という流れのなかで、まずはただ並べることの提案を行っている。そのあとに、様々な過程を経て、意味による限定などがある。そこには公共性の意味や、自己性の意味などがあるが、そのバランスがエンタメ的な創作物や、純文学より、すなわち純粋芸術の分野といったふうに、成果物をグラデーションのなかで分けていくのだろう。
ただ、並べることが、生成の基本である。そして、限定とは何らかの意味においてなされるものである。
このようなことを言っていて、そして私はこれが最も、重要な主張なんではないかとも感じた。芸術とはこれだ、とでも断言できてしまいそうなほどの勢い。(おそらくそうではないが。)
芸術の意味において、並べ方が限定される、選択されるということ。その理屈で、生成AIが学習されたとすると、果たして生成AIは人間から認められる出力をすることができるのだろうか。
たびたび、作中では差異としての、予測誤差という、おそらく機械学習の分野からくる用語を使っていたように思うのだが。その予測誤差を修正するために、機械学習分野では、誤差を表す誤差関数を最小化するために微分概念を使って、学習行っていく。
要するに、創作や芸術における、並べ方を個人的な体験として学習していくことが、方針となっていくのだと思うが、その学習はすなわち、予測誤差をある誤差関数という、なんらかの意味を内包した関数を最小化する、ということ。モデル化という固定的な考え方をするのであれば、そういうことになるのではないか。誤差関数とは、人それぞれの個人的な芸術的体験によって、時間経過的に変化していくものであることも忘れてはならない。
センスの哲学、非常に言葉選びが、機械的というか、最近の機械学習分野からの影響を受けているのはないだろうかと、そんなことを考えながら読んだりもした。
たしかに、生成をするという、要素の並べ方を、人間、AI、それぞれの方法によって決定(限定)していくという営みについて。それは非常に似通っていることであると思うし、共通点を見出すことで、芸術に関する考えということを、具体化することもできると、感じた。
また、そもそも人間的な限定の方法は、おそらくAIよりも明確ではなくて、そこには統計的計算、確率に基づく選択というものが、ないのかもしれない。プロセス自体にすでに予測誤差をたぶんに含んでいるともいえる。
なので、その限定の方法にも、センスと言われるものの存在が含まれるのではないかと思う。AIは確率的な選択。一方で人間は?
リズムという概念の抽象化によって、現生成現象はすべてがただの並びに還元されていくように、そこに対する限定が加わることにこそ、人間の生としての尊厳の一つが含まれているのかもしれない。
なんて、曖昧でナンセンスで、要領のえないことを書いてみたりした。
それでは、さよなら、さよなら、さよーなら。
また、繰り返し、読みにきます。
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