第114話 邪悪の秘策

ちょっと話が進まないので、今日は特別に二話目を投稿。

明日も二話投稿するかは悩んでます!


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「……来たか」


モンスターの対応を二人に任せ、私はこちらへ近づいてくる気配に向き合う。


すぐに気配の主が姿を表し、不敵な笑みを浮かべた。


「やあやあ、久しぶりだね?」

「そうね。不本意だけど、ずーっと会いたいと思ってたわ。嬉しいでしょ?」


もちろん、その『会いたい』という想いは、『会って直接ぶち殺したい』という意味だ。


当然ヤツはそれを理解しているし、知っていて笑っている。


強者の余裕と言うやつだ。、


「僕は出来れば会いたくなかったよ。でも、僕以外に君達を殺せる人間がいないからね。僕がやるしかないんだ」


そう言って、何かの魔法の術を組み始める早川照。


コイツの魔法はどうとでもなるし、無視しても良いだろう。


仮に後ろの二人狙いだとしても、二人共これに対応できないような雑魚ではない。


「術を構築する時間をくれるなんて、優しいね?」

「それくらいのハンデはあってもいいって事。そして、気になるから見てみたいと思ってるのもあるわね。私達を倒せるという秘策を、ね…?」


この臆病者が前に出てくると言うことは、少なくとも私達を倒せる策があるという事。


それが超強力な魔法なのか、最強のモンスターなのか、私の知らないアーティファクトなのか?


それを見てからでないと、こういうのは面白く無い。


これが、本当の強者の余裕と言うやつだ。


「僕としては嬉しい限りだけど……後悔しないことだね?」

「ふっ…!望むところよ」


いつでも早川照の首を掻き切れるように、最低限構えていると、突然地響きが鳴り出した。


そして、その地響きと共にとてつもなく強大な何かの気配が、辺りを包み込む。


「なになになに!?」

「『青薔薇』無様な姿を晒さないで」

「なに?喧嘩?いつでも買うよ私は」


……とりあえずあのおバカ二人は放置して、後でしっかり怒るとしよう。


しかし、あの二人があんな反応を見せるくらいには、この気配は強大で、規格外だ。


それこそまるで…アラブルカミのような―――まさかっ!?


「そんなバカな!?」


最悪の展開を予想した私は、《ゼロノツルギ》に大量の魔力を流し込み、思いっきり振るう。


空気をも凍てつかせる極寒の冷気と、大質量の氷が出現し、早川照目掛けて押し寄せていくが――――私の攻撃は間に合わなかった。


直前に出現したナニカに遮られ、空気が一気に冷やされた水分が凍結し、視界が真っ白になる。


「ふふっ……ふふふふ……あはははははははははははははははは!!!!」


そんな霧の奥でヤツの高笑いが聞こえる。


改めて《ゼロノツルギ》を構え、霧の奥をにらみ続けていると、5メートルはあると思われる、巨人の影が見えてきた。


そして、その影は両手を上げて奇妙なポーズを取ると――――


「アブラビィィィィイイイイイイイイ!!!!」


なんとも言えない、奇妙な咆哮を上げた。


…なんとなく正体は分かるが、鑑定をしたほうが良いだろう。


アイテムボックスから鑑定水晶を取り出し、それを使用してアレのステータスを見る。


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名前 カイキノカミ 《傀儡化》

種族 神霊

レベル350

スキル

  《神威・怪奇》

  《神体》

  《腐食》


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……まあ、そうでしょうね。


「ダンジョンの生ける厄災『カミ』……まさか、こんなものまで傀儡化しているとは思わなかった」


ダンジョンには、『カミ』という種類のモンスターが存在する。


種族で言えば《神霊》に分類され、どいつもこいつもレベルが高く、とんでもなく強い。


私は3体の『カミ』の存在を認知しているけれど、おそらく他にも居るでしょう。


そしてコイツは、そんな『カミ』の1体であり、人知を超越した力を持つ化け物だ。


「咲島さん!!アレは一体…?」

「『青薔薇』あなたはダンジョンから溢れ出してくるモンスターの殲滅に全力を注ぎなさい。アレの相手は私がする」

「わかりました!ご健闘を…!」


緊急事態を察し、私の横にすぐ飛んできた『青薔薇』。


彼女では手に余る。


すぐにモンスターの対応へ向かわせると、こちらを見下ろすカイキノカミと睨み合う。


カイキノカミには首が無く、某巨大ヒーローに出てくる宇宙人のような体型をしている。


目は真っ赤で見ているものに恐怖を与える開き方をしており、口の奥は何故か赤く光っている。


腕や脚は普通の生物ではあり得ない肉のつき方をしており、まさにファンタジーの化け物。


ホラーゲームやホラーアニメに出て来そうな、クリーチャーだ。


「気分はどうだい?咲島恭子」

「まあ……悪くはないわね」

「強がりかな?純ステータス最強の君が、怯えるわけにはいかないもんね?」


早川照はここぞとばかりに煽ってくるが、そんなことを気にしている余裕はない。


カイキノカミが放つ、錆色のオーラ。


何やら酸っぱい匂いがして、鼻がツンとくる。


……それはつまり、ヤバイって事だ。


「コイツを支配するのは本当に苦労したよ。遠くからずーっとチクチクチクチク攻撃してちょっと弱らせて、回復の為に寝たところを―――ね?」

「あっそ。それは良かったね」


コイツ寝るのか…


いや、実体があるから寝る必要があるのね。


アラブルカミみたいな、実体がないタイプだと面倒だったけど……それなら割となんとかなりそう。


……まあ、レベル差が絶望的なことに変わりはない。


こっちの攻撃が効くってだけで…今の私じゃ、勝てないだろう。


「さてさて、どうやって死にたい?咲島恭子」

「私は死ぬ気はないよ。その『カミ』も返り討ちにしてお前を殺してやるから覚悟しろ?」


私のことをバカにしてきたので、強めに言い返してカイキノカミ諸共倒すと宣言。


《ゼロノツルギ》を構え、出し惜しみ無しの最大出力で魔力を纏い、攻撃の構えを取る。


そして、ヘラヘラと笑う早川照目掛けて、全力で走り出した。






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