そういうお年頃は、中3で卒業しました

まだ息がある。


急いで救急車を呼ばないと。


スマホを操作して電話をかける。


しかし……


「おいっ、なんで繋がらないんだよ!」


スマホの画面を見ると、圏外となっている。


「おいおい、山の中じゃないんだぞ……」


山の中とか地下なら繋がらなくてもまだ分かるけど。


普通に公園だぞ?


バンバンに電波なんて通ってるはずなのに。


「無駄だ、ここはすでにヤツの領域内、外部との連絡は一切できないはずだ……」


「は?領域内って、お前何言って……」


「それよりも、ぅぐっ、今何時だ……?」


苦しそうにうめきながらも、倒れていた姿勢から上半身を起こす彼女。


ブロンドカラーの髪が揺れた。


「何時って、今はそんなこと話している場合じゃ」


「いいからっ……早く教えろ……」


「……17時くらいだけど」


「それはマズイな……」


俺の言葉に苦い顔をする少女。


「おい、一体どういうことだよ?

それに今は時間を気にするよりも先に、傷をなんとかする方が優先だろう」


少女が自分の手を傷口に当てて出血を抑えているが、どちらにせよ早く病院に行くべきだろう。


出血もまだしているようにみえる。


「いや、傷に関してはなんとかはなるはずだ。

ま、この領域内を出られればの話だが。


それよりも問題なのは時間だ」


「時間だって?」


「ああ、簡単に説明すると完全に日没すると、ここから出られなくなる」


「……どういうことだよ」


「魔術師にとって、昼と夜は別世界だ。

だから、夜になればこの領域は外と隔絶される」


「………」


ダメだ、さっきからこの女の子との会話が微妙に噛み合ってない。


領域内とか、時間がないとか。


色々拗らせてるお年頃か?


でも、彼女の表情を見るにそういう風には見えないし。


それに出血も酷い。


日没したらヤバいとかの部分はよく分からないけど、どちらにせよここからは出ないといけない。


ならやることは一つだ。


「すまん、俺はもうそういうお年頃は卒業したから、お前の話していることあんまり分かってないけど、とにかくこの公園内から出ないといけないってことだよな?」


「ああ、だがそれには一つ問題がある」


「問題?」


「魔獣の存在だ」

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