第21話番号は黒い鴉




「ここが俺らのネスト。まぁ、かっこよく言ってるけど鴉の巣だな」





一体どんな感じなのか、昨日から密かに楽しみにしていたネストは私が想像していたのとは全く違う場所にあった。 



普通、こういうのは人目につかない所にひっそりとあるとか、カラクリ屋敷みたいな感じかと思っていたけれど、現実はそれとは全く違い高層ビル





「え、ここ??」


「うん、ここ」



嘘でしょ?と猿田に言うが彼は真剣な表情で、ここだと答えた。


ここはどうみても高級マンションにしか見えない。

なんなら、マンション名Black crownは有名な高級マンションの名前だ。


金持ちしか住めないと有名な会員制マンションが鴉の巣だと言われ、呆気にとられる私を猿田は、気にすることなく地下に車を停めると、とりあえず着いて来てと私を連れ、そのままエレベータに乗り込んだ




エレベータに入るや否や、猿田は階数ボタンを何やらぴこぴこ押し始める


普段からエレベーターに乗りなれている為、彼の不思議な行動に首を傾げて見ていれば96196と何やら番号を打ち込んでいる様に見える



すると、突然何もなかったボタンが出てきた


ボタンには0と書かれており、猿田は慣れた様にそのボタンを押すと、エレベーターが地下へと降りていくのが分かる。




「ここ、ボスの持ちマンションで地下がネストになってんの。メンバーしか入れない様に番号知らないやつは絶対に辿り着けない仕組みになってるから、お前も覚えときな、Black Crowを数字にしたら961960だろ?それをボタンで入力すれば0が出てくるから押したらネスト、いい?」



「うん。覚えた…けど、ちょっと情報量多くて驚いてる」



ちょっと一回整理したいと言えば猿田は頷いた



まず、ここのビルがボス、龍王蓮の所有ビルと言う所から既に驚いている。


凄い人だとは思っていたけれど、ここまで凄い人だとは。


ちょっとどころか、龍王蓮は大金持ちのようだ。


そして、次はエレベータが暗号化されていて番号を打ち込むとネストに行けるらしい



さっき実際に見たから分かるけれど、まるでスパイ映画の様だった、今度私もやってみたい



「まぁ、確かに驚くよな〜俺も最初はお前と同じリアクションだったわ」



チーン


ちょうど返事をしようとした所で、地下に辿り着いたエレベータがゆっくりと扉を開くと、そこは想像していた地下室とは違い、広く綺麗な場所だった。




中は黒一色、ではなくて白や黒で統一されており普通におしゃれだ。


何部屋が部屋がある様で、奥の方へと視線を移せば奥の壁には武器が沢山飾ってあった。


それはもう、見たこともない数の拳銃がいくつも並べてあり、その中には刀まである



「あの、奥のすごいね…?」


「あぁ、あの種類覚えるの頑張れよ」



誰もいないネスト内を歩き、武器が飾ってある方へ歩いて行けば、この種類全てを覚えろと鬼の様な事を言われ気が遠くなった


こんな数の武器を覚えるなんて無理だ。


まず、武器すら握ったことがないというのに、全ての種類なんて鬼すぎる。


あえて覚えるなら、この中だと数の少ない刀くらいしか覚えられそうにない



近くへ行き、じっくりと見れば拳銃からライフル、ボウガンと、沢山あり正直よく分からない


壁に掛けてある刀も何種類かあり、特にふたつに重なってある刀が気になった



「強ちゃん、これ2つペアなの?」



重なりあった刀を指差し、猿田へ聞けば、彼は頷き、刀をふたつ手に取ると、私へと差し出す



「持ってみ?これは、双剣2つセットに作られた剣だな」



「…わぁ、重いね」


双剣と言われた剣を受け取れば、思っているよりも、重くて吃驚した


これを振り回すなんて大変だろうと口に出せば、慣れればそんな事ない、らしい


猿田は壁にかかっているひとつ刀を取りとカチリと、いい音を立てて鞘から引き抜くと、銀に光る刀の刃を私へと見せた



「これは銀の刃、死人は銀に弱いからここにある刀や銃弾は全部銀で出来てんの。これじゃないとあいつらは殺せないんだよ」 



なるほど、銀の弾丸に銀の刃と言うことだろう

という事は、吸血鬼は銀に弱いと言うことだろうか?



「吸血鬼はみんな銀に弱いの?」



「死人はこれで切れば塵になる。でも俺らは塵にはならないよ?ただ、普通の武器じゃ致命傷にはならないけど、銀だと流石に治りが遅くなるね」



「てことは…じゃあこれ自分で怪我しない様にしないとだね?」



「そういうこと。自分で振り回して怪我してたら笑うわ」



猿田は流石にそれはないと笑うと刀を鞘にしまい、壁へと刀を戻した。


そう言えば今私が持っている刀と、先ほど猿田が持っていたの刀は長さが違う



「さっきのと、私が持ってる剣は長さがちょっと違う?」



「あぁ、うん。刀と違って双剣は色んなデザインがあるぞ、ネジネジしてたり太いやつとか。ちなみに俺が持ってる刀は普通のやつだな」



「へぇ!強ちゃんも持ってるの?」



「うん、皆持ってるよ。刀は基本だな、弾がなくなった時はこっちに切り替えられるし」



「へぇ〜!」



弾切れになった時は、どうしようもないらしく

そんな時に刀で、死人を狩るのだとか。


と言うことは、刀の他にもこのゴツい武器も扱わないといけないのだろう。


そうなると、私が役に立つ道はまだまだ遠そうだ。



こんな見たこともない銃を扱える自信は今のところ全くない。


大体、拳銃すら使った事がないのだからそれ以外の銃を上手く扱えるはずがないのだ。



それでも一応説明だけでもと、猿田に聞いて入ればバタバタと慌てて走る足音が聞こえてきた


音の方に視線を向ければ、かなりの大荷物を抱えてやってくるピンク髪の青年


今日も相変わらず派手な色をしている彼は、寝坊したのだろうか髪に寝癖がついている




「おはよー!2人とも早くない?!」


「いや、とっくに10過ぎてるよ?!!」


「あれ?10時すぎてる??」


「おまえさぁ…ちゃんと時計確認しろって」


「ありゃ、ごめん2人とも!…てかそれ双剣じゃん?え、それ気に入ったの?」


 

時間にうるさい猿田は玲の遅刻にもやはり厳しい


家を9時に出発して、ここに着いたのは35分くらいそれから2人で武器の話をしていれば、気付かぬうちにとっくに10時を過ぎていた。



壁に掛けてある時計の時刻は、現在10時10分、確かに猿田が言う様に玲の遅刻である。


ごめんと謝る玲に、私は大丈夫だよと返すけれど隣の男は未だにぶつぶつと呟いている。



「これ?珍しくて見てただけだよ」



手元の剣を玲に見せながら、双剣って初めて見たといえば、玲は俺も双剣使ってるよと嬉しそうな表情を浮かべ、ごそごそと大荷物の中から同じ双剣を取り出した。




「俺、他の刀も扱ってみたけどやっぱり双剣が1番扱いやすいんだよね!海も刀持つなら双剣お勧めするよ!鴉の中では俺と天明さんしか扱ってないからさー!双剣仲間が増えるの嬉しい!」



そんなに、双剣っていいのだろうか?


両手が塞がるから難しそうではあるが、嬉しそうに双剣の話をする彼に少しだけ興味が出てきた


それに加えて、同年代のお友達のおすすめなら尚更だ。


ちなみに彼の言う天明という人物の名前は1度も聞いたことがない





「てんめいさんって?」


「あ、知らない?」



「天明さんなぁ〜、あの人はボスの従兄弟で中国出身の純血やね、双剣使いの天才でボス並みに強い人」


「従兄弟?!…え、ボスって日本語上手くない?



「そこかよ?そりゃあ、ボスは何百年も日本に住んでんだから、さすがに流暢になるに決まってるだろ?」


「何百年…」


「ボス上手いよね。俺も言われなきゃ分からなかったな〜。逆にね、天明さんは若干カタコト気味で可愛いよ」


「あぁ、たしかに天明さんは癒されるわ」



まず、まとめると王蓮は元々、中国出身で従兄弟が双剣の天才、天明で彼は、話し方が可愛い人、という所までは理解できた



「もし双剣扱うなら、天明さんに直接教えてもらった方がいいよ〜!」



「中国出身の天明さんは双剣の扱いに長けてるから、教えてもらえるならラッキーだな」



「そうそう、どうする?天明さんに連絡しようか?」



「うーん…そんな急に初心者がマスターレベルの人に教わるのって大丈夫かな?」



両手に双剣を抱えたままボソリと言えば、キョトンとした顔の玲は砕けた様に笑った



「それは、やってみないと分からないよ、こればっかりはセンスと努力だから」


「まぁ、確かに。…てか、さっきからそれ手放さない時点で、結構気に入ってんじゃないの?」


「え?」


「あ、本当だ!気に入ったの?」



猿田の言葉に手元に視線を向ければ、確かに無意識にずっと離さず持っている。


あれ?と自分でも驚き、彼らを見ればとりあえず体験してみようかと言われ、頷いた。




「知ってた?刀とか剣は人を選ぶんだって

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