Sランクの最強魔導師には、とんでもない秘密があった。

アノマロカリス

第1話 最強魔導師レーヴァティン

「おぉ、またもやってくれたぜ!レーヴァティンの旦那…」

「まさか、あの暗黒龍を単独撃破かよ‼︎」

「レーヴァティンさんは、もう他のSランクとは比較にならないぜ‼︎」


冒険者ギルドの扉をくぐり、俺は背中に背負った暗黒龍の角を見せ付けながら受け付けの窓口に近寄った。

冒険者ギルドの皆は、俺が暗黒龍の討伐依頼をした事を知っていた。

そして、背中に背負った暗黒龍の角を見るなり…討伐は成功したのだと思っている様だった。


「討伐依頼は完了した。早速で悪いが、査定を頼む。」

「はい、お任せ下さいレーヴァティン様。」


俺は受付嬢のミルファに暗黒龍の角を渡すと、ミルファは慌てながら他の職員の元に走り去って行った。

俺は受け付け横にある柱に寄り掛かりながら、査定が済むのを待った。

その間、何人もの冒険者が声を掛けて来た…が、俺が睨むと途端に黙りだした。

俺はこの冒険者ギルドでは最強のSランクの冒険者だ。

そんな奴に対して気安く声を掛けて良い存在では無い…と言いたい所だが、それは弱さを見せない様に振る舞っているのであって、内心はビクビクしていた。

世間では俺の事を最強魔導師…なんて呼んでくれてはいるが、実際の所は攻撃に関係する魔法は一切使えない。

更に言うと、その秘密がバレてしまうのを恐れて…未だかつてパーティーに参加した事すらない。

あ…過去に何度かパーティーに参加した事があったっけ?

あの頃は、秘密がバレるのを恐れて上手くやり過ごしていたんだっけか。


「査定が終わりました。確かに暗黒龍の角で間違いありません!報酬の白金貨100枚です!」


俺は黙ってミルファから報酬を受け取ると、冒険者ギルドを後にした。

普通の冒険者なら、皆と一緒に騒ぐ所だろうが…?

俺にはそんな気は無い。

一緒に酒の席に着いたりすると、暗黒龍の討伐関係を聞かれるからだ。

正直に言えれば、楽な事この上ないのだが…?

実際の所は、暗黒龍なんか討伐していないからだった。

俺はこの街の高級ホテルに入り、活動拠点の代わりにしている部屋に入った。

瞬間…俺の額から大量の汗が噴き出て来た。


「はぁ〜今日も皆にバレずに済んだな!本当、ソロだとやりにくくて叶わん!」


信頼のおける仲間でも居れば、少しは気苦労も減るのだろうが…?

生憎…俺はこの世界の人間を全く信用をしていない。

本当は攻撃魔法を使えない事がバレでもしたら、それをネタに強請ってくる事が目に見えているからだった。


「そういえば、アイツは…」


俺は宙に浮かんでいるストレージを見ると、その枠の1つに暗黒龍が睡眠のマークが浮かんでいるのを見た。

実は…暗黒龍は倒してはいない。

俺のストレージの中に入って貰っているからだった。

何故、その様な事が起きているのかと言うと…?

それが暗黒龍との約束だったからだ。

俺は暗黒龍のストレージを押しながら、声を掛けた。


「そろそろ起きてもいいんじゃないか?今は街の中のホテルの中だから、安心して出てきても良いぞ…ただし、人の姿でな!」

『ここは居心地が良いので、もう少し居たいところだが…分かったのじゃ。』


俺は暗黒龍をストレージから出すと、暗黒龍は小さな女の子の姿になって出て来た。

…そう、暗黒龍はまだまだ子供で、幼女の姿をしていた。

何故、そんな幼女が世間で騒がれている暗黒龍なんて呼ばれているかと言うと、それにはある秘密があった。


「妾の角は役に立ったのかのぅ?」

「あぁ、アレのおかげでお前は討伐された事になっている。二度と狙われる事は無くなったから安心して良いぞ。」

「それは何よりなのじゃ!これで、静かな時を過ごせるというものじゃ!」


暗黒龍…もとい、彼女の名前はファーラネス。

年齢は、俺の軽く10倍は生きているという龍族だ。

だが、龍族の中では…その程度の年齢は子供と大差がないらしい。

そんな彼女が何故、冒険者ギルドの討伐依頼に載せられていたのかというと?

まぁ、見た目は巨大なブラックドラゴンだし、そんな物が付近の山にいるだけで討伐隊を編成されて何度も送りつけられたという話だった。

ファーラネスは、特に何もしていない。

何でも、故郷の龍の巣で父親と大喧嘩をして家出をしたという話だった。

そして安住な地を目指していた所、その安住な地が街から少し離れた山の上だったという。

まぁ、それも…50年前の話らしい。


「妾は静かに眠っていたいというのに、人間達は何度も妾の所に襲撃しに来るのでな…いい加減にうんざりしておった所なのじゃ!そんな時にお前の誘いに乗ったという訳じゃ!」

「俺の所にはいつまでもいて貰っても構わないぞ。ただ、条件があるけどな!」

「妾の角で結構な額を儲けた筈なのに、まだ足りないのかのぅ?」

「いや、資金は申し分はないんだが、ファーラネスはメシとか結構喰うだろ?」

「龍の姿の時ほどは食わんが、それでも普通の人間よりは喰う。」

「だとするとだ!今の所は問題は無いんだが、当面の事を考えると…金はあるに越した事はないんでな。」


ちなみに、今回の暗黒龍討伐の討伐証明部位は暗黒龍の角だったのだが…?

この角はバトルをした後に奪った訳ではなく、ちょうど生え替わりの季節で2日前に抜けた角を持って行ったのだった。

偶然に抜け落ちた角のおかげで助かったが、角が無ければ…戦う事になっていたのだろうか?

まぁ、正直…まともにやりやって勝てるとは思えないので、助かったと言えば助かったが。


「それにしても、お主の言う条件とは面白い話よのぅ!妾に人として冒険者ギルドに登録してパーティーを組むのが条件とは!」

「いい加減…1人にうんざりして来たのでな。それにお前だったら、下手な人間より信用出来るし、俺の秘密を暴露することもないだろうしな。」

「お主とはある意味で秘密を共有しておるのでな!持ちつ持たれつの関係じゃ。」


…そう、俺の条件というのは、これからの旅に共に同行して貰うというのが条件だった。

その代わりに、ファーラネスの正体は一切の秘密というのと、食事を提供するという事で了承を得たのだった。


「さて、今日は食事をしてから休むとして…明日からは忙しくなるぞ!」

「数十年振りの食事にありつけるのか!何が出るのか楽しみなのじゃ!」


こうして…俺の部屋に大量の料理が運ばれて来ると、運ばれて来た瞬間に空になった。

まぁ、元は巨大なドラゴンだった為にある程度は予想はしていたのだが…?

俺の予想を遥か上回る食欲で、白金貨100枚の内の2枚が失ったのだった。

蓄えは今回の報酬以外にもあるにはあるが、このままの食欲で食い続けられていくと…1ヶ月後には無くなっているかもしれん。

満足そうにしているファーラネスをよそに、俺は財布の中身を数えて不安になっていた。


次回、この世界で活動するきっかけをお届け致します。

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Sランクの最強魔導師には、とんでもない秘密があった。 アノマロカリス @keinmaster

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