20.ものすごく共感します
「自室に帰る途中で王宮図書館に行くブライトを見たんだ。けど、髪の色を変えているお前なら正体を知られずに済むと思ったんだが……嫌な予感は当たるものだな」
「ノーブル様……」
―――ものすごく共感します。
髪の色を変えていればバレないと思ったのだが、全然ダメだった。
ブライト王子、恐るべし。
「抜け出して来てみればブライトはお前を怒らせたのか、攻撃される寸前。ギリギリセーフってところか」
―――わっ、すごい。この場にいたかのような説明……。
さすが
簡潔でわかりやすい解説である。
―――……ん、待って。
今ノーブル様、『抜け出して』って言ったよね!?
大丈夫かなぁ……。
でも、心配して来てくれたってことだ。
少し嬉しい。
ちょっと申し訳ない。
「で? どうしてこうなった」
「っ、ノーブル! 私は悪くなど……!」
「俺は心境なんて聞いてない。それ以前に話しかけたのはユリアーナだ。ブライト、お前の話はあとで聞く」
ピシャリとブライト王子の言葉を止めるとノーブル様は私の背丈に目線を合わせた。
つまり、しゃがんだのである。
「教えてくれるか?」
私はコクリと頷くと、状況を説明した。
「ブライト王子に読みたい本を取られ、魔術師に興味はないかと脅され、逃げ道を塞がれてしまったので正当防衛として魔法を展開しました」
「!」
「ユリアーナ嬢! 事実無根のことを言うのはやめてください! 第一、あなたは私に……っ」
「ブライト」
ノーブル様の静止が入る。
凪のような静かな時間が過ぎた。
「お前の話は後で聞くと言った。今は口を挟むな」
「っ……」
悔しそうに顔を歪めるブライト王子。
私は心の中で「ナイス! ノーブル様!」とガッツポーズをする。
「他には何かされたか?」
「そうですね……結果的に私の読書時間を奪われました」
キリリと至極真面目に私は言った。
「そうか。……わかった。ありがとう」
ノーブル様は立ち上がり私の頭を撫でた。
「ブライトの迷惑料として来てもらったのにまた迷惑をかけてしまったな。すまなかった。俺は今からブライトを連れて話を聞きに行く。俺が戻ってくるまで読書をして待ってもらってもいいか?」
「! わかりました!」
やっと読書ができるってことだよね!?
やったぁ〜っ!
「この件も含め、また別日に王宮図書館に行く許可を出す。それで許してくれるか?」
「はいっ! 大丈夫です!」
ブライト王子への報復はできなくなるが、王宮図書館での読者には変えられない!
私は即答で許可をした。
「二階に閲覧室がある。あそこは静かで心地がいい。そこで読むのがおすすめだ。きっと雰囲気も気にいると思う」
―――閲覧室!
それは知らなかった。
前世の図書館には閲覧室などなかった。
読書のために作られた部屋……イイ!
響きも素敵だけど意味を知るとワクワクが止まらない。
「ちなみに閲覧室は席の確保ができない。すぐに席を取られてしまう可能性があるから、読みたい本を全て持っていくといい」
「はい! では行ってきます!」
早く閲覧室に行って読書がしたい!
ノーブル様、神!
ブライト王子は最悪だけど閲覧室行きの切符を渡す役割があったと思えばギリギリ許せる!
うん、許す!
私は【透明】の付与付きの【防御】以外を解き、うきうきしながら他の本棚の方へと行った。
「さ、行くぞブライト」
もちろん、読書したいる間にブライト王子とノーブル様が何を話していたかなんて知るはずもない。
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