18.絶対に許さないから……!
「私がなんでユリアーナ嬢だと気づいたのかわかりますか? 魔力ですよ。髪の色や声色をどれだけ変えたとしても魔力を変えることはできない」
「そ、そうなのですね……」
―――すごくどうでもいいけど寿命を伸ばすためと思え、私! 耐えるんだ!
ブライト王子が話している間、私は逃げる方法を考える。
読書時間確保のためにも急がなくてはならない。
―――魔法でなんとかする?
しかしここは王宮内。
許可のない魔法の発動は禁止されている。
第一、魔法を使えば本に影響が出かねない。
それは絶対に避けなければならない。
私は自分のために本を犠牲になんて絶対にしない。
―――でも、魔法以外私にはこの状況をなんとかできる方法なんてない。
魔法だけが私の武器なのだから。
本に影響が出ないぐらいの強さで、だけどブライト王子から逃げられるくらいの威力の魔法を使う必要がある。
―――なら……!
私は背後にある本棚に触れ、【透明】にした【防御】を施す。そこから周りの本棚に同じ【防御】を構築していく。
攻撃が当たっても、本に影響を出さないためには、本を守る本棚かカバーを強くするしかない。
全ての本棚に【防御】をし終えたのを確認すると、私はブライト王子を真っ直ぐ見つめた。
「……ブライト様」
「なんだいユリアーナ嬢」
愉悦に満ちた笑みのブライト王子。
気持ち悪い。
身分の差を利用し魔術師に取り込もうとするこの第一王子は完全なる悪役だ。
こんなやつとエリアーナが結婚する未来があるかもしれないと思うと、もっと苛立ちを覚える。
―――王族だろうがなんだろうが関係ない。
この王子には自分の行動が間違っているとわからせる必要がある。
―――私の至福の楽しみにしていた王宮図書館での読書時間を減らした恨みは大きいんだからね!
早くたくさんの本を読みたい衝動を抑えるのはかなり辛い。
しかも衝動を抑えなければならなくなった原因は前からウザ絡みしてきたブライト王子だ。
ブライト王子にはストレス発散のためにも生贄になってもらおうではないか。
―――【隠蔽】【領域】【包囲】
「!?」
【領域】を作り【隠蔽】で隠す。【領域】の中で【包囲】されれば逃げ場はない。
私はブライト王子の逃走経路を塞いだ。
これで安心して本を傷つけず、且つブライト王子を攻撃できる。
―――【創造】【促成】【拘束】
「〜〜っ!!? 何だこれは……くそっ、離れないっ……!」
【創造】で植物の種子を創り、【促成】で大きく育てる。
私の領域内だし種子は自分で創った物なので植物は私の思うがままに自由に操ることが可能だ。
それを利用してブライト王子の両手を【拘束】し、反撃の手段を消す。
どんな人であろうとも少しでも不利になるような可能性のあることは全て潰す。
前世の小説では気を抜く、侮る、軽んじることにより失敗するのがテンプレだった。
お決まりの事柄を知る私を相手にして勝てると思われては困る。
―――絶対に許さないから……!
普段は基本的に“どうでもいい”で済ませているが、本に関わること、守ると決めたこと、大切な人などが絡めば話は別だ。
今現在、私はブライト王子に読書時間と読みたい本を取られている。
もしかしたらエリアーナも……と思うと怒りが沸々と湧き上がってくる。
―――私を敵に回したこと、後悔させてみせようじゃない。
「準備はよろしいですよね? ブライト様」
私は怒りを帯びた黒い笑みでブライト王子を見つめるのだった。
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