11.わーお、年下公爵令嬢に愚痴ってる
「で、答えは?」
―――……なんの話をしてたっけ?
ブライト王子の演技に衝撃を受けたのとノーブル王子が神なことに感動して忘れてしまった。
そんな私の心を病んだのか、ノーブル王子は親切に問いを教えてくれた。
「パーティは嫌いかってこと」
―――そうだ。その話をしていたんだ。
ポンと心の中で手を打つ。
唐突に切り出された話題だったからすぐに記憶の隅に行ったのを思い出した。
だが答える前に一つ、確認しなければいけないことがある。
「それを聞いて、ノーブル様はどうするおつもりですか?」
いつどこで何に悪用されるかわからない。
この回答によって自爆の道を辿ることになるのは避けたい。
しかも相手は王族。
言葉の信用度が違う。
「どうもしない。個人的に聞きたいだけだ。好きならパーティが来るたびの憂鬱感がなくなるかもしれないし、嫌いならパーティを嫌ってるのは俺だけじゃないと安心できる。言っただろ? 個人的に聞きたいだけだって」
本当に個人的に聞きたいだけのようである。
「ならお答えします。……パーティは嫌いです」
「俺と同じだ。何故?」
「……貴族的な理由と個人的な理由、どちらがよろしいでしょうか」
「じゃあどちらも聞かせてくれ」
「わかりました。貴族的な理由は、私との婚約を目的に話しかけてくる男性の相手が面倒だからです」
公爵は爵位の第1位だ。
爵位は上から順に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵となっており、国によっては準男爵などもある。
当然公爵家に嫁げば人生薔薇色。
富も権力もある素晴らしい家である。
それを狙って公爵家の息子、娘に近づく殿方や令嬢は多い。
「美しい」「綺麗」「愛してる」などという言葉を並べて好意を寄せるふりをする者は多く、下心や目的が丸わかりだ。
嘘つきの目は無駄にキラキラしており、冷めているからだ。
―――それに……。
白髪碧眼の私への
碧眼だったからまだしも、母さまのような白髪赤眼の者は白髪の時点で奇妙な目で見られ、赤眼により「呪われた子だ」「気持ち悪い」と言われ、疎まれる。
私への反応はマシな方なのだ。
―――けど、みんなバカだよね。
真っ白な純白の雪のような、艶のある髪。
海の美しさを閉じ込めた煌めく瞳。
これのどこが気持ち悪いのだろうか。
それに、母さまの瞳は優しい陽光の
そんな母さまの目を「気持ち悪い」と言う
エリアーナの目も赤眼だが、エリアーナの人柄からか、あまり嫌われていない。
白髪赤眼の者はあまりいない。
ただそれだけの話なのだが、人は愚かなので自分たちと違う異分子を「違うから」を理由に嫌うのだ。
―――というか、私からしたらみんなすごく個性的なんだけど。
髪の色も瞳の色もカラフルなため、初めはすごく動揺した。
前世で言うと全員髪を染めてカラコンを入れてる感じだ。
今はもう慣れたのでそんなに気にならないが、慣れるのには時間がかかった。
色アリの人物が多く、白髪赤眼の者への蔑視はお決まり事だ。
そういうものだと受け止め、気にしないことが一番だろう。
「あいつらが欲しているのは自己満足感だ。俺たちはそんなもののために時間を使わされている。婚約者を勝手に決められる方が楽だと思う日もあるぐらいだ」
自己満足感。
本当にその通りである。
「ノーブル様もそう思うのですね」
「当たり前だろ? 十回に一回くらいは俺と話す順番を俺の目の前で揉められる。どちらが先に話しましょうか、と聞かれるのが一番厄介。選んだ方に好意を寄せていると思われるし、選ばなかった方はすぐに泣く。王族って結構面倒なんだよな」
―――わーお、年下公爵令嬢に愚痴ってる。
不快に思っているわけではないので共感して流すが、この
ノーブル王子を狙っていない私だから話せることだろう。
それが少し嬉しかった。
「あーすっきりした」
ストレス発散も兼ねていたのだろう。
適度に行うことが大切だ。
「で、個人的な理由は?」
―――切り替え早いなぁ……。
「本当に個人的ですよ?」
「それでいい」
なら、と私は個人的な理由を口にした。
「読書ができないからです」
私は堂々と至極真面目に答えた。
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