8.マジでしつこいんだけど……っ!
ブライト第一王子はノーブル第二王子と比べても人気のある嫁ぎ先候補だ。
誰にでも隔てなく優しく接するその姿に惚れるらしい。
そんなブライト王子の好きなことは魔法である。
美しく、洗練された魔法をよく好み、魔法に優れた者に興味が湧くという。
今年の貴族にもそれが影響したらしく、例年よりも優秀な人が多いらしい。
―――だからなのかしら。
私にはブライト王子が一番にやって来た理由の心当たりがあった。
それは3年前のことである。
4歳になった私は本格的に魔法の練習に励んでいた。
それ以前から安定した読書時間を確保するために練習していたこともあり、魔法には自信があった。
最強ルートにならないよう、魔術師の反応を見ながら少しずつ規模を大きくしたつもりだったのだが……。
「素晴らしいですユリアーナ様! その歳でその規模、精度、速度……将来は筆頭魔術師の道も夢ではありません!」
などと言われてしまった。
どうやら規模を大きくしたり小さくしたりすることはなかなかできない作業らしい。
つまり、魔術師の反応を伺いながら行うのは悪手だったということだ。
すぐにその情報は王宮でも伝わり、新聞にまで載る事態に。
最強ルートに警戒し過ぎた結果、私はそのルートに足を突っ込んでしまったのだった。
後悔しても、もう遅い。
―――私の目的は
なら、今やるべきことは一つだけだ。
―――
私はリンドール公爵家の次女の名に恥じぬ挨拶をした。
「お初お目にかかります。ユリアーナ・リンドールと申します」
白髪は珍しく、好奇の対象だ。
時にはいじめの対象となるが、それはいじめる者が
艶のある癖一つないこの白髪を醜いだなんて思うはずもない。
その持ち主がお人形のように着飾られているのなら尚更である。
「君の噂は聞いているよ。4歳で大規模魔法を使った天才児だと」
「大規模魔法だなんて……そんな素晴らしいものではございません。一種の魔力暴走とも言える事故で起きたことです。お恥ずかしい……」
「魔力暴走でも、大規模魔法同等になることは滅多にない。君の才能だ。恥ずかしがることなんてない。むしろ誇るべきことだ」
「身に余る光栄です、ブライト様」
「正当な評価をしたまでだ」
10歳の第一王子と7歳の公爵令嬢の評価と謙遜は続いた。
助けを呼びたかったが、呼ぶ隙をブライト王子は作らない。
―――早く終わって……。
切実な心の叫びは誰にも届かない。
「ぜひ一度王宮に来てほしい。きっと良い経験になる。魔力量も魔法の精度も素晴らしいと聞いている」
「わたくしのような半端者が立ち入って良い場所ではございません。わたくしよりも優れた者は大勢います。功績の一つもないただの公爵令嬢には相応しくありません」
正直に言おう。
―――マジでしつこいんだけど……っ!
何度も遠回しで言ってるよね?
私は王宮に行きたくないって。
それに私はブライト王子のような
―――いい加減察してよ、本当に……。
これ以上話していると、周りの令嬢からの嫌がらせが発生しそうだし、嫉妬と憎悪の目で死にそうである。
しかも私は色アリの公爵令嬢!
黒髪黒目ではないから
―――これ以上目立ちたくない……帰りたい……本……本読みたい……。
私は私の読書時間を仕方なく捨ててここにいる。
なのに最悪の気分にされるのは酷過ぎる。
―――誰か、誰でもいいから助けて……っ。
大抵この
これもお決まり事だ。
これで来たら私は
来てほしいけど来てほしくない、複雑な心境で祈った結果は―――
「ブライト」
僅かな怒気を帯びたその声は、はっきりとしていて聞きやすかった。
この場においてブライト王子に敬称を付けず呼ぶことができるのはただ一人。
「しつこい勧誘はやめろ。嫌がっている」
ノーブル第二王子である。
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