「KAC20246」 トリあえず、これでいいかな?

日間田葉(ひまだ よう) 

・・・・

 色は匂えど 散りぬるを

 我が世 誰ぞ 常ならむ

 ういの奥山 けふ越えて

 浅き夢みし とりあえず


 最後の「とりあえず」のところは本当は「ゑひもせす」です。皆様はもちろんご存知のことだと思いますが一応。


 突然何の話だと思われるでしょうが、これは速記の練習でのお話しです。


 日本語の速記ですから、もちろん最初は「あいうえお」から習います。最後の「ん」まで習ったら繰り返し練習し、五十音を覚えたら単語や短い文章などのかたまりで覚えます。


 話を戻すと「五十音順」を一通り覚えたら順番がバラバラになる「いろは順」で練習すると速記文字がよく頭に入るので流れるように書くことができるよ、という理屈らしく凄く納得のいく話でありました。


 途中から教室に入った私はこれで少しみんなに追い付けるようになるかもと、半紙と鉛筆を用意して流れるように…そう、流れるように「いろはうた」を頭で歌いながら速記の練習をしたのです。が、いかんせん「浅き夢みし」の後がどうしても覚えられず途中で止まってしまいます。


 何故かというと私は「ゑひもせす」という言葉に意味がある事を知らなかったのです。なので私にとっては意味もない唐突に表れた言葉としか思えず、いちいち何だっけとメモを見直さないといけません。


 これでは効率が悪いので「浅き夢みし」で終わらせることも考えましたがオチがないようでそれも嫌。


 仕方なく私は「とりあえず」に置き換えました。すると最後までスラスラと書けるので何度も繰り返し練習することができました。


 速記を習ったのは20代半ば(かなり前です)だったと思いますが、結局は身に付かず終わり「ゑひもせす」の意味も知らないままにしてしまいました。


 それから随分たったある日「ゑひもせす」という杉浦 日向子さんの本を見つけてええってなりました。


「ゑひもせす」は「良いも悪いも言っていられない」つまり「仕方ない」という意味でした。そうです、意味があったのです。びっくりしました。


 知らなかった、恥ずかしい。


 何年も知らないでいた事がある日突然分かった時の何とも言えない気持ち。


 とりあえずこれでいいやで片付けないで分からない事はちゃんと調べようと思った出来事です。


 終わり



※ 沖ノキリ様より 間違いのご指摘がありましたので訂正いたします。


 いろは唄における「ゑひもせす」は「酔いもせず」の意味になります。


 江戸時代に使われていた「ゑひもせす」が本文にある「仕方ない」という意味です。


 無知に勘違いを重ね申し訳ございません。お詫びして訂正いたします。


 ご指摘ありがとうございました。


 間違った情報を垂れ流してすみません!


 と、とりあえず調べたんだもんねっ、という笑えないオチでした。


 つか、これって現在進行形の黒歴史じゃね(笑)


 

 今度こそ終わり

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「KAC20246」 トリあえず、これでいいかな? 日間田葉(ひまだ よう)  @himadayo

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