第2話
アリアが席を外してすぐの頃――。
「……殿下」
「ん?」
「殿下はシュレイン様をご存知ですよね?」
「ああ、うん」
「どんな方でしょうか?」
「無類の女好き」
笑うわけでもなく表情を変えずサラリと答えたキュリオス王子を見た限り、興味がないというよりも……。
――軽蔑している……という表現が合っているのかも知れないわね。
確かに、基本的に真面目なキュリオス王子からしてみれば軟派なシュレインは苦手かも知れない。
「でも……」
しかし、キュリオス王子はそこで話を終わりにせず、少し俯き……。
「意外と、ああいう人の方が一途かも知れないね」
そう言って小さく笑った――。
■ ■ ■ ■ ■
――意外と一途……。
確かにそうかも知れない。
彼と話したのは王宮で一度声を掛けられて以来。
多分、あの時冷たくあしらったからなのか、それ以来彼からイリーナに声をかける事はなくなった。
――でも、寂しさを埋める為に……というのは何となく理解出来るわね。
イリーナもその気持ちは理解出来る。
ただ、イリーナの場合は「書斎に籠もって本の世界に浸る」という事でその寂しさを解消していた。
――でも……。
正直。この様な話は貴族ではかなり「当たり前」で……特に上流貴族ではよくある話でもある。
――私の家もそうだったから……。
そう思いつつアリアを待っていた――。
■ ■ ■ ■ ■
「――おかしいわね」
アリアは辺りを見渡し、先ほど見かけた人影を探しているのだが……全然見当たらない。
「うーん」
二人には適当な理由を言ってここまで来た……のだが、肝心の人影が見当たらない。
「早く確かめて戻りたいのに」
あまり長く外していると探しに来てしまうかも知れない。
――正直、それは避けたいのよね。
そもそも怪しい人が一体何をしていたのかは分からない。
しかし可能性としては「飛行魔法の使用をさせなくする魔法道具」を使うかも知れない。
ただそれはあくまで「十分ありえる可能性」の一つとして考えての事だ。
正直。それくらいの事が起きても仕方ない。
しかし今回はどちらかと言うと「シュレインが学校側からの要請を受けて準備をした魔法道具に細工をしてクリスを貶める」という面の方が強い気がしていた。
もし、魔法道具に負備があってそれで怪我などがあれば、評判を落とす事にもつながり、クリスを学校から追い出す事が出来る。
「……はぁ」
こうった時に探知の魔法を使えるといいのだが、基本的にそういった魔法は私用で使わない方が良いだろう。
――このままじゃ埒が明かないから……。
「せめて……」
アリアはクリスに「念のために言っておこう」と歩き出そうとした瞬間……。
「――え」
突然立っていたはずの地面が音もなく消え、アリアはその事実を受け入れる余裕もなく、そのまま真下へと落ちて行ってしまった――。
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