第3話
「気になる話?」
「はい。実は――」
そう話を続けようとしたところでフィーユはふと止まった。
「どうしたの?」
「……お嬢様は『シュレイン・フォーガス』という方をご存じでしょうか?」
――シュレイン……どこかで……。
フィーユに聞かれた男性の名前にイリーナは少しだけ心当たりがあった。しかし、どこで聞いたのかがいまひとつ……。
――あ。
「確か国で一番の商人の息子……だったかしら?」
そういえば、王宮で見かけた事があった様な気がした。
「はい、後は生粋のプレイボーイだとか」
「プレイボーイ?」
――どんな意味だったかしら?
聞いた事はあるが今一つ分かっていない。
「女性を次々と誘惑したり虜にするような、魅力的でやり手な男性という意味です」
「ああ」
その話はイリーナも社交界で聞いた事があったし、それこそ多分父親の付き添いで来たにも関わらず女性に話しかけている姿を見かけた事があった。
――あの行動が『プレイボーイ』って事なのね。
しかし、彼がそうなってしまったのは幼少の頃から何かと忙しい両親にかまってもらえなかった事が原因で、その孤独さから来る寂しさを埋めたいが為に彼はそれを埋める相手を求めた結果だった。
「でも、確か婚約者がいたはずよね?」
「はい。噂ではこの学校に入学した当初は心を入れ替えて婚約者と共にいたとか。しかし、次第にボロが出始めていたとか……」
つまり、最初こそ婚約者に尽くしていたものの。結局は元に戻ってしまった……という事だろうか。
しかし、実はそれに拍車をかけてしまったのは彼の婚約を「仕方なく」受けた相手の態度のせいもあったのだが……イリーナがそれを知るはずもない。
――でも、この人も今はきっと「ソフィリアさん」に夢中なのね。
リチャード王子たちと同じ様に……。
「それで、その人がどうかしたの?」
「はい。その方がどうにも怪しい動きをしているという話を聞きまして……」
「怪しい動き?」
「はい」
――退学者が出るかも知れない。しかも、生徒会が主体になって動く『学校行事』という場で?
にわかには信じられないが、正直。今の生徒会の様子を見ていると……そういった工作をしてもおかしくないと思えてしまう。
――でも……何をするつもりなのかしら?
そう、今の話だけでは「工作をする」というだけで「誰に対して」なのかはたまた「大勢に対して」なのかそういった事も分からない。
「……」
そんなイリーナの気持ちを察したのか
「実は『星空会』で参加不能にしようと画策している様です」
「参加不能? 欠席じゃなくて?」
――どういう事? 怪我でもさせるという事なの?
「いえ。出席確認の時点では仕掛けず、出席確認が終わった後に仕掛けるつもりだとか」
「それってつまり……」
「出席を確認出来た後に仕掛ければ病欠とは違い『行事に参加するつもりがなかった』と判断されます。そうなると……」
「学校行事に関する退学条件が満たされる……という事ね」
そう、実は『退学』になるのは何もタイムオーバーだけではない。そもそも病欠などの理由で参加出来ないという事でなければ「不参加」扱いになってしまうのだ。
――そう考えると……誰かしらを狙ってという事よね?
「ねぇ」
「はい」
「私にわざわざその話をするって事は、その人が狙っているのは……」
「はい。お嬢様のお察しの通りです」
フィーユの言葉に、イリーナは思わず「やっぱり」という言葉を漏らしてしまったのだった。
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