第8話 シスターのお仲間
「転送魔法……?」
転送魔法。
現在の魔法学会の研究からすれば、あり得ない魔法だ。その反応も当然であろう。しかし、私は今、頭を使って自力でこのあり得ない魔法を再度見つけようとしている。
「転送魔法って確かないんじゃないんでしたっけ?」
「そうなんですけど……。ないものを見つけるってなんか夢あるじゃないですか?それに魔法学会の研究発表もどうも納得できなくて」
「なんですか……。それ……」
さすがに夢見すぎと思われただろうか。
さすがに馬鹿だろうと思われただろうか。
私は彼女の表情を伺いながら思った。
「なんですか!それ、すごく面白そうですね!」
次に来た言葉はまとものやつには出ない言葉だった。
まともに物事を考えて、現実を見ているやつには出ない言葉だった。
もし、私が転送魔法を発見していなければ、こんなことはしないし、こんなことする奴は馬鹿だと思う。つまり私は第三者から見れば馬鹿だ。だから、この時も勿論彼女に「何言ってんだこいつ」とでも言われるかと思った。しかし、彼女は言わなかった。
「私、そういうの大好きですっ!」
私は正直、彼女は本気で言っているのか?と思ってしまった。
「え……。マジで言ってんすか……」
「いや、実行している人に言われたくないです」
その通り過ぎて泣いちゃう。
「その研究、私も仲間に入れてもらっていいですか?」
「仲間!!」
『仲間』という単語!私の待ち望んでいた単語だ!
「仲間になってくれんの?!」
私はシスターの手を握って振った。
*****
翌日。
私はユウトに新たな仲間を紹介した。
「新たな冒険仲間である、シスターさんだ!」
「てか、私、冒険仲間になるとは言ってないんですけど?!」
「え、だって、仲間って……」
「それは魔法も研究仲間のことです!」
シスターは少し涙目だった。
「え~。何とかならない?私、なんか、勇者ってことになってるから、本当は違うんだけど」
「「違うの?!」」
私は二人にあっさり真実を告げた。
「まぁ、勘違いされているから、旅に出ないといけないんだけど……。だから、旅に出ながらで……」
私はそういう提案をしたが、彼女は微妙な顔をした。
「と言っても、長旅になるのでしたら、教会に相談しないと……」
ああ、そうであった。
彼女はこれでも、教会で働いているシスターなのであった。
「ちょっと聞いてきますね」
といって、教会のほうに行ったしまった。
こういう行動をするのであれば、彼女は別にまんざらでもないのかもしれない。
*****
シスターの野郎を待っている間にユウトが聞いてきた。
「お前……。本当に勇者じゃないのか?」
「うん……。転送魔法使ったら、勘違いされた」
「なんだそれ」
この反応はおそらく彼は転送魔法はあり得ないということは知らないのであろう。そうのだとすると、やはりおかしい。さすがにこの事実の発覚から、これだけ時間が経ったのであれば、どれだけの田舎でも情報は出回っているだろう。
だから、知らないのはおかしい。
まぁ、日常的に会話に使う話題でもないしな。だから、新聞以外で知ることはできないだろう。
*****
シスターが行ってから30分後。彼女は帰って来た。
「OKだって」
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