ジョークスター

那須茄子

第1話

 今日の朝は、静かだった。

 一人の男にとっては、寂しさに満ちた夜と同じだった。



 


 ジョークスターの部屋の中は、彼の心のように、混沌としていた。壁には色褪せたジョークのメモが無造作に貼り付けられ、床には使い古された小道具が散乱している。


 彼の目は、昨夜書き留めたばかりの新しいジョークに向けられていたが、その目にはかつての輝きはない。



「またこれか.....」



 ジョークスターは、ため息をついた。


 彼の頭の中では、昨日の公演の失敗が繰り返し再生されていた。観客の笑い声が次第に消え、最後には沈黙が残った。

 彼は、自分の提供する笑いが、マンネリ化していることを知っていた。




 気晴らしに、窓の外でも眺める。

 

 子供たちは公園で追いかけっこをし、商人たちは市場で大声で商品を売り込んでいる。

 いつも通りの日常。アハハランドの人々は今日も楽しんでいる。

 

 

 しかし、ジョークスターにはその光景が遠く感じられた。

 彼は、自分の役割に疑問を持ち始めていたのだ。


 



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