第12話 バレた

 「ねえ、今日何してた?」


 「え?」

 今は夕食の時間だ。今日の夕食は黒いパンとシチューだ。相変わらず硬いパンもシチューに浸して食べれば幾分かマシだ。

 そんな事を考えているとキリが話しかけてくる。

「部屋で本読んでたけど……?」

「本当にぃ?」

「う、うん。」

「本当に本当ぉ?」


……………いやこれ、なんかバレてね?


 俺が、皆んなに内緒で教会の外に行った事、バレてね?

「な、何でそんな事を?」

いやいやいや!そう簡単にバレないように俺も最大の注意を払っていた訳だから………

「いやさ〜、今日のお昼にレヴィくんの部屋に行ったんだよねえ。で、居なかったんだけど」

「あっ(白目)………そ、そうだ!トイレだよ!多分その時トイレに行ってたんだ!ごめんね、タイミングが合わなくて?」

「僕、その後トイレも見たよ?居ない事を確認した後、もう一度キミの部屋に向かったけどやっぱり部屋にも居なかったんだよねぇ。外を探しても居ないし、どこ行ってたのかなぁって」

(やばいやばいやばいやばいぞコレ‼︎)

「た、偶々タイミングが合わなかったんだなぁー。凄い偶然だなぁ。あ、あはは」


 「今日キミがしていた事、当ててみようか?」

 

 キリは体を乗り出し、俺の耳元に唇を近づける。キリの口から漏れる呼吸音で、俺の腰あたりがゾワゾワしてしまう。そして―――


 「キミ、教会の外に行ってたでしょ?」







 はい。バレました。




 さて、どうすればいい?

 元々、いつかはバレる事を前提として活動していたからバレた事に対するショックは小さいが、まさかバレた相手がキリだとはなぁ。コイツ、こんなバカそうな話し方する癖して賢いし、何らかの交渉を持ちかけてくる可能性も考えられるんだよなぁ。

 うわー考えれば考えるほど、面倒くさい奴にバレてしまった。

 「…………バレた?」

とりあえず、このまま隠しても後々面倒くさいと考えた俺は素直に白状する事にした。

「あれ?当たってたんだ?というか随分素直に白状したね。」

「お前は俺が白状するまでまで監視してきそうだしな。」

「あはは!当たってるよレヴィ!コレで違うって言われたら決定的な現場を掴むまで影から覗き見する予定だったんだ!」

こ、コイツマジでするつもりだったのかよ。

「で、教会の外に出て何をしてたのさ。買い物?それとも商売かい?」

「いや違うな。」

「……へぇ?じゃあ何?今のキミに出来るのってその位しか無いと思うんだけど。」

「俺は教会の外は勿論、街の外にも出ている。」

俺の言葉を聞いたキリは目を瞬かせて、笑った。

「あっははは!嘘でしょ?外は魔物だらけなんだよ?」

「ああ。魔物を狩るために出ているからな。」

「…………………まじ?」

「大マジだ。この際だから言っておくが、レベルもかなり上がったな」

「え、もしかして20レベルとか?」

「60だ」

「…………………まじ?」

「何回やるんだこのくだり。」

 それから俺は、バレてしまったものは仕方ないと思い、ある程度の事はキリにも話す事にした。

 話を聞いたキリは、コレでもかと思うほどに驚愕の顔を浮かべていたが口元は笑っており興味深そうに聞いていた。

「―――ってな訳だ。」

「なんか、実は凄いんだねキミは」

「それほどでも無い。事実レベル60なんて世に腐るほどいるし、こうやって全力で隠していた事もキリにあっさりバレた。『脳ある鷹は爪隠す』、本当にすごい奴ってのは実力をここぞという時以外振るわないものさ。」

「なんだか、知ってる見たいな言い草だね」

 そりゃ、こちとら30越えのおっさんだからな。人生経験がちゃうねん。

「で、キミはこの事を教会のみんなに知られたくない、であってる?」

「そうだな。出来れば知られたく無い。」

「じゃあ取引しない?」

ほらきた。これだから賢いガキは嫌いなんだ。自分の立場が有利にあると見てしっかりふっかけてくる。というか中身おっさんの俺がいうのもなんだが本当に10歳か?おじさんコワイヨ。

「………内容は?」

……ごくり

「僕がこの事を黙秘する代わりに、僕も街の外に連れてって!」

「え?」

え?そんな事でいいの?

「そんな事でいいのか?」

「キミはいつでも街の外に出れるから分からないかもしれないけど、たいていの孤児は外なんて見たことがないの!外の光景を見るのが夢の一つって子も多いんだから。」

「な、なるほど。………危険かもしれないぞ?」

実際、ゴブリンやオークが徘徊している森に行くのは俺たちガキにとっては自殺みたいなものだ。

「ん〜。まあ、なんとかなるっしょ!」

「そこは、自慢の頭脳を使って考えろよ!……だがまあ、そんな簡単な条件で黙秘してくれるのならお安い御用だ。」

「じゃあ、これからよろしくね!」

「ああ、よろしく頼む。」




 「街の外だぁぁあぁァ‼︎」

「うるせぇ!傭兵にバレるだろうが!(小声)」

「ご、ごめん」

キリと契約を結んだ日の夜、俺たちは早速街の外の森にやってきていた。初めての森にキリのテンションは上がりっぱなしだ。ただ、大きい声で叫ぶのだけは勘弁してほしい。マジでバレるから。

「ところで、キミはどうやって魔物を倒すんだい?職業の恩恵かい?」

「まあ、そうだな。職業専門のスキルを駆使して戦う。」

「なんの職業なんだい?《騎士》?それとも、《魔導士》とか?」

「いいや、俺の職業は―――《傀儡師》だ。」







作者「今回は会話が多いね」





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