転生傀儡師

壁]ω・)ニャ

第1話 異世界…転生?

 「これより職業授与の儀を始める!」

 神々しい衣装に身を包んだ年齢70歳ほどの老人が告げる。神父様だ。目の前には数十人の子供達が左右のこれまた高級そうな長椅子に座っている。


 見ての通りここは教会の中だ。ここ、ナベル侯爵の所有するナベリアで最も大きい教会である。この教会は森を司る神であるフィンレルを信仰対象とするフィンレル教を信仰しており、この地域一体では巨大勢力として数えられるうちの一つである。その証拠に、今現在も子供達が職業授与を受ける為の場所として多くの民に利用されている。教会側としてもフィンレル教を信仰する自分たちの教会で、名のある職業を発現する子供が現れたりする事は今後、大きなアドバンテージとなるのだろう。俺にはよく分からないが。

 さっきから俺が度々言葉にしている〝職業授与の儀〟とは、7歳になった子供が神から〝職業〟を与えられる際の儀式の事である。職業とは、この世界にいる人なら誰もが絶対に受け取る事となるものだ。職業は、その人に最も適しているものが授与され、例えば職業が《テイマー》なら魔物をテイムする事が出来るわけだから戦闘の手段は魔物を戦わせるという事になるし、多くの魔物をテイムしている人なら町を防衛する為に協力したりする事もあるだろう。この様に、それぞれに合った職業が神から授与され、将来の見通しもこの瞬間にほぼ決まるといっていい。そんな重要な儀式が〝職業授与の儀〟なのだ。


 「次、アレン•パラドス!」

「はい!」

神父様に呼ばれたこの子は長椅子の前の開けた場所へと歩いてゆく。アレンと呼ばれた子は緊張でガチガチで、歩く時に右手と右足が同時に出ている。…あ、今躓きそうになった。

「我らが森の神、フィンレル様よ。アレン•パラドスに適する職業を此処に!」

神父様様が虚空に叫んだ瞬間、アレンの立っている床に大きな魔法陣が現れた。青白い光次第に強くなっていき……。

「おお‼︎こ、コレはッ!この子の職業は聖騎士です!」

 目の前の石板を見た神父様は叫ぶ。

「なんだって⁉︎」

「すげー‼︎」

「初めから第二職業かよ!」

大抵の職業は進化する。その条件はそれぞれの職業ごとに異なるものの、進化した職業はそれまでに出来なかった事か出来る様になったり、新たなスキルが得られる様になったりする。そして、授与された時点で既に一度目の進化が済んでいる職業を第二職業と言うのである。この職業を持っている人は限りなく少ないとされており、戦闘職や生産職に関係なく才能があるとされ重宝される。

 《聖騎士》は《騎士》の進化先の一つであり、剣術に補正のかかる《騎士》の能力に加えて聖属性を剣に付与する事が可能となる職業である。

「素晴らしい!初めから第二職業を持つ子供なんてそうそういるものではありません。努力すれば宮廷魔剣士も夢ではありませんぞ!」

「あ、ありがとうございます!頑張ります!」

 アレンはペコリと頭を下げて長椅子に戻って行った。


 「次、レブィ•マドラ!」

「はい。」

ようやく俺の番らしい。俺の職業は何だろうか。あれから十人ほど儀式を行ったが、アレンの様な第二職業を授かる子供はいなかった。これで期待しない方がおかしいと言うものだ。

「我らが森の神、フィンレル様よ。レヴィ•マドラに適する職業を此処に!」

それ毎回言うんか。恥ずかしないんか。


 その時、俺の頭にあらゆる情報が流れ込んできた。いだだだだ!


――そこは、一面長い建物に囲まれた世界。その建物に真っ黒い服を着たおじさんが映る。

仕事……コンビニ……トラック……ってなんだそれは!

「うぐっ!」


 頭が破裂するかの様な鋭い痛みがおさまった時、俺は全てを理解した。



 「異世界転生ってやつ?」



 どうやら俺は異世界転生してしまったらしい。いや、転生…なのか?レヴィという少年のなかに俺という存在が乗り移った感じに近い。

頭の中に前世の情報が流れてきて理解した。前世の俺は典型的な社畜だったらしい。朝起きて仕事して上司に叱られてカップラーメン食べて仕事机の上で寝て起きて……、の繰り返しである。で、一週間振りに休暇が入って舞い上がってた俺はコンビニ帰りにトラックに轢かれて死んでしまったと。


「其方の職業は………ん?なんだコレ?」

「どうしたんですか神父様?何か分からないことがでも?」

「うーむ。……読めぬ。なんだこの言語は。」

「まさかッ……!」

 まさかと思い、俺は神父様を押し除けて石板に走り寄った。石板を見た俺は目を見開いた。

 石板には日本語• • •でこう記してあった。



  職業  《傀儡師》  と。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「ステータス!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆

《レヴィ•マドラ》 Lv.1

年齢:7

職業:傀儡師

スキル:人形作成

HP :35/35

MP :14570/14570

◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「うわー、かなりファンタジーだなぁ。」

ステータス!って叫んだら目の前に水色の板が出てくるんだよ?前世じゃ考えられない事だね。というか、考えたとしても人前だ叫ぶなんて恥ずかしくて出来ない。

「一応ステータス開いて見たけど…コレってどうなんだろう?何となくMPの値がぶっ飛んでるのは予想がつくけど。正直、この世界の基準については理解が浅いから分からないってのが本音なんだよな。」

 Lv.が1なのは、おそらく儀式を行った直後だからだろう。経験値がLvに加算される様になるのは儀式後なのたと俺は予想している。あくまで、現時点での仮定に過ぎないが職業授与の儀までに行ってきた訓練などの成果は、HPやMP、スキルなどに影響するのではないかと考えている。

「にしても、《傀儡師》かぁ。字面的にも傀儡師って人形を使って戦う戦闘職だよな?スキル欄に《人形作成》がある訳だし、ほぼ確定として、そもそもどうやって使うんだろうこのスキル。………《人形作成》!」

 俺は虚空に手を伸ばして、スキル名を叫んでみるが案の定何も起こらない。何か条件が整っていない様に思える。

「もしかすると、コレは召喚系のスキルではなく加工系のスキルなのか?」

俺は今の今までこのスキルを手のひらから人形を作成する、召喚に近しいスキルだと考えていたが、実際、魔力(MP)放出して見ても何も起こらなかった。となると、このスキルは自分で素材を組み合わせて人形を作る、加工系なのかもしれないと考えるのが妥当だ。

 地面に落ちている木の枝を手に取り、スキルを行使する。

 すると、木の枝が俺の魔力放出に抑えつけられるように形を変えていく。メキョメキョと音を立て潰れるそれは、あっという間に、親指大の木の球となってしまった。

「ビンゴ!やっぱり加工系のスキルだったか!見た感じ魔力を起点に加工物の形を変えている様だな。という事は、魔力の質を変質させると加工の幅が広がりそうだ。そういえば今のでどの位の魔力を消費したんだ?ステータス!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆

《レヴィ•マドラ》 Lv.1

年齢:7

職業:傀儡師

スキル:人形作成

HP :35/35

MP :14468/14570

◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 大体100MPくらいか……。思ったより少なくて拍子抜けだ。500位持ってかれると思ったんだけど。いい意味で予想外だった。おそらく、素材によって加工のしやすさにも差が出るだろうし、人形作成に必要な量を加工する事も考慮すべきではあるがそれでも一部品100MPは破格である。

 俺はこのスキルにいち早くなれる為、枯れ枝や落ち葉をつかって訓練を始めた。


ーーー2時間後


 「お!いい感じじゃん!」

 あれから2時間、俺はひたすら《人形作成》の実験と訓練を繰り返していた。実験の結果、新たに発見した事は3つ。


 一つ目は『《人形作成》において大切なのはイメージと魔力のコントロール』という事。魔力は木の枝を俺のイメージした姿へと変える為、放出し続ける限り自ずと動く事がわかった。しかし、自ずと動いてくれるからと言って魔力のコントロールを放棄して良い訳ではない。魔力の自動作成に全てを任せた時とそこに自分の意思を織り交ぜて作成を進めた時の木の球には強度と精密度に大きな差があった。


 二つ目は『加工物に魔力を込めれば込めるほど作成された物体は硬くなる』という事だ。具体的に、100の魔力を込めたA、500の魔力を込めたB、1000の魔力を込めたCに分けて硬度の差を測る実験をして見ると、Aは俺が踏みつけただけで容易く折れたのに対し、Bは折れなかった。また、Bはダッシュボア(デッカいイノシシの魔物)の突進に耐えられなかったのに対し、Cはびくともしなかったという結果が得られたのだ。よって、硬度は込める魔力量に比例すると考えた訳だ。正直、この法則に上限はあるのか、とか知りたい事は山積みなのだが、いかんせん魔力の少ない今は無理なのでまた今度やって見る事にしよう。


三つ目は『単純にクソ難しい』という事だ。以上!それについては上手くなれば良いだけの事なので実質無問題かもしれない。



※更新は不定期です。

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