第4話 はい。新入部員を騙すために大金をかけます。
放課後。生徒会室には、難しい顔をしたベジーさんとちょう先輩、そして記念すべき私がいる。
しばらく沈黙が続いた。私は歯に挟まったしらすを抜こうと頑張った。
ちょう先輩が椅子から思いっきり立ち上がる。その拍子に、ちょう先輩の座っていた椅子が、ぴちゃんっという音を立てて倒れた。
なんか効果音違うな。ぽちゃん?ぐわっしゃあーーーん?どれが正しいんだ?
ちょう先輩が生徒会室に響くぐらいに叫んだ。
「ねえ、ベジーちゃん!なんであんなこと言ったの!?」
「だって!新入部員いないと仕事出来ないよ!?こんな馬鹿サントリオに何ができんの!」
あれ、なんか私も巻き込まれてない?
私の横で、ちょう先輩とベジーさんが言い合いをする。
「いや、ちょうくんも悪いでしょ!ばーか!あーほ!チンパンジー!」
「は!?んなことないし!そっちこそあんぽんたん!嘘つき!」
うわあ。醜い。こんなにも醜くて幼稚な言い合いは初めて見た。というかチンパンジーってなんだよチンパンジーって。
横でグルグルと猛獣のような音を立てながら睨み合う2人に私は一撃を入れた。
「というか、みんな馬鹿だからこんな喧嘩しても意味なくね?」
すると2人ともスンッという音が鳴りそうなほどの真顔を見せた。
実際はスンッなんて音はならないので、口で言っといた。
ちょう先輩とベジーさんは椅子に座り直し、チンパンジーから科学者ぐらいの進化をとげた。
「で、どうするの?ベジーちゃんの大金を使うしかなくない?」
ちょう先輩が前の爆買いで買ったアイスを食べながら言う。
私も冷蔵庫に向かい、中からキャベツを丸々一個出す。
それをサッと洗ってからかぶりついた。
瑞々しくて美味しい。シャキシャキと口の中で切れ、土臭い匂いを残しながら喉の奥へと去っていく。
この土臭さも一緒に喉の奥へと拉致ってくれ。
「うーん。何億あれば偽装できる?」
ベジーさんが億という単位を口から放った。そんなぽんぽんと億も出せるなら、私に一兆円でも出して欲しい。
あれ?一兆って、億よりも少ないよね?
指で数えていると、ベジーさんが特大のため息を吐き出した。
どうやったらそんなに空気が出るのだろう。見習いたくない。
「取り敢えず、偽装しましょうか。ちょうくんが悪役ね。背高いし。」
「え!出来ることならカッコいい悪役がいい!なんかさー仮面ライ団みたいな、あの、なんか最新型鎧みたいなのつけてさー!あ、そうそう。仮面ライ団カレーラーメンの最新話でね、主人公のラッキョウ仮面が爆発したんだ!あれは熱かったなー」
長文オタクをちょう先輩が吐き出した。舌を噛んでしまえ。なんでそんなに完璧にサラサラと言葉を出せるんだよ。噛めよ。
そう思っていると、ベジーさんがこちらを見た。
「でね、ここちゃんにはあのー、ブリンキュアのペットみたいなのやってほしいの。変身時に付き添うやつ。」
「いえ。ならうちの犬にやらせます。あいつ人聞きいいんで」
愛犬ステーキの姿が頭に浮かぶ。
なぜかステーキは私の言うことだけは聞かない。前なんか『私とテレビをガムテープでグルグル巻きにしてくっつけて!』とお願いしたら、血相変えて逃げてしまった。
なぜだろう。
「じゃあ、ここちゃんの犬にしようか。じゃあここちゃんは人質ね。」
「わかりました!」
そんなこんなで、2週間後、『舞台!生徒会爆発死亡劇痛!〜僕のお姉ちゃんがプリティ最強戦士だった件〜』をすることになった。
この日は、副会長が仮面ライ団の話をして止まらなくなったため、お開きになった。
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