web小説の流行の変遷に僕らはどう抗えばいいのか
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web小説といえば、流行のジャンルばかりが読まれる。
そう思っている人は多いのではないだろうか。
実際、ジャンルやテーマ、タグによる人気の差は大きい。
同じ内容だったとしても、タイトルやタグを変えるだけでその人気は大きく変わるだろう。
そのくらい、流行のものに合わせるというのはこの界隈では大事なことだ。
だけど、自分の書きたいもの、書いてるものが、その流行と大きくかけ離れている場合。
そう言う場合に、僕らはどうしたらいいのだろうか。
今回のエッセイでは、そういったことについて触れていきたいと思う。
例えばだが、純文学やミステリーホラー、SFなどといったジャンルは、とてもじゃないがweb小説の流行とはいいがたい。
もちろんそれらは書籍として書店にならぶばあいは、人気のあるジャンルだったりもする。
だけど、web小説の流行と市場のニーズは大きく異なっている。
それはweb小説を書いてたり読んでいたりするみなさんには周知のことだろう。
こういった不人気のジャンルの小説を書いて、まったく読まれない、そういう経験をした人は多いんじゃなかろうか?
実際僕も、そういう経験がある。
ちなみに、ここで一度僕のことを話しておくと、僕はどちらかといえば、流行のジャンルを書くことをやってきた作家だ。
なるべくweb小説の流行に合わせて書いて、それなりに人気を得てきた作家だと思う。
おかげで、何冊か本を出版することもできた。
だけどそんな僕でも、やはり不人気ジャンルの小説を書けば、ぜんぜん伸びなかったりする。
ようは、web小説の読者たちは、最初から読みたいジャンルが決まっているのだ。
ある程度ファンをつけたからといって、不人気ジャンルを書いても読まれるようになるかといえば、そうではないのだ。
web小説の読者は、作者が誰かということよりも、その小説が読みたいジャンルやテーマのものかどうかというところを見ているのである。
だったら、やはり読まれるためには、人気のあるジャンルを、流行に合わせたものを書くしかないのだろうか。
ではまずみなさんが、web小説の流行ときいて思い浮かべるのはどんなものだろう。
それは例えば、異世界転生だったり、異世界もの、追放もの、ダンジョン配信もの、悪役令嬢、婚約破棄、などなど、なんかなんじゃないだろうか?
これはまあ、大きくは間違っていない。
ただ、異世界もの、と一口にいっても、その内容はさまざまだ。
僕はこれまでに、いわゆる追放もの、や、異世界転生ものを書いてきた。
それはそれらのジャンルが好きだったのもあるし、それらが流行っていたからでもある。
だけど、実はこの流行はかわりつつあるのだ。
web小説の流行に詳しくない人からすれば、どれも同じものに見えるかもしれない。
だけど、今となっては追放ものや異世界転生ものが流行っていたのは過去の話だ。
こういったいわゆる「なろう系」は過去の物になりつつある。
女性向けの婚約破棄や悪役令嬢などのなろう系はいまだに健在であるから、ここではもっぱら男性向けのweb小説についてのみ話す。
僕がすきだったいわゆる、ふるきよき「なろうテンプレ」みたいなものは、すでに下火になりつつあるのだ。
これは実際に小説を投稿していても、肌で感じる。
あきらかに以前と同じものを書いても、読者の数が減っているように思える。
では、今の読者はなにを求めているのか、なにが流行しているのか、それがわかる人はいるだろうか。
これはカクヨムのランキングをいつも見ている人ならわかると思う。
今の流行は「ダンジョン配信」ものや「悪役貴族転生」ものなどになってきているように思う。
これすらも今では古いのかもしれない。
日々、流行は移り変わりつつある。
昔は「なろう系」がweb小説の主流だった。
それはなぜかといえば、小説家になろうがとてつもない人気をもっていたからだ。
web小説といえば小説家になろう一強で、そこが流行の発信地だった。
だけど、時代は変わった。
小説家になろうでは男性向けの異世界ものの人気が落ちていき、代わりにどんどん女性向けの短編が流行るようになっていった。
これにはさまざまな要因がある。
小説家になろうでは異世界転生がランキングから隔離され、システムの変更により恋愛と短編が有利になった。
それらが影響して、小説家になろうはすっかり女性向けの恋愛サイトになってしまった。
これがここ数年でweb小説界隈に起こった事件である。
それにともなって、小説家になろうからカクヨムへと、男性読者も作者も、多く流入した。
しだいにカクヨムはその規模を大きくしていき、いまや小説家になろう一強とはいえなくなった。
最初はカクヨムでも人気だったのは、いわゆるなろう系だった。
異世界転生ものが多かったように感じる。
それはなろうでは異世界転生はランキングから隔離されてしまうが、カクヨムでは隔離されないからだ。
だが、男性読者、作者が完全になろうからカクヨムに移行すると、あることが起こった。
それは、カクヨムが独自の文化を持つようになったのだ。
なろうを起点としない、カクヨム独自の流行が起こった。
それはいわば、カクヨム系といっていいのかもしれない。
昔は流行の発信地は小説家になろうだったが、今となってはカクヨムになったのだ。
カクヨムで流行したジャンルが、あとから小説家になろうで流行するようになった。
ダンジョン配信や悪役転生の流行は、カクヨムからなろうに逆輸入されたものだろう。
ここにはランキングシステムの違いも大きく影響している。
なろうは日間ランキングだが、カクヨムは週間ランキングが重要だった。
そのおかげで、なろうのようなスタートダッシュにすべてをかけたものよりも、長期的に評価されるような物語が求められるようになっていった。
このように、web小説の流行は常にうつりかわるし、いつどのようにかわるかわからないのだ。
なので、作者は人気を得ようと思えば、そのつど流行にあわせてスタイルを変えていかないといけない。
なら、結論としてはそのときの流行を書けばいいと言っているのか?
違う。
僕自身、もともとは流行のジャンルを書いていた。
それはもちろん流行っていたから、というのもあるが、好きだったからが大きい。
好きじゃなければ、小説なんか書けないだろう。
好きなものが流行っていたのは運がよかった。
流行じゃないものを書いている人からしたら、妬ましかったりする面もあっただろう。
だけど、僕も今、流行からはずれてきてしまっている。
じゃあ、流行を研究して、あたらしい流行を書けばいいじゃないかと思うかもしれない。
だけど、僕にはどうしても、そのあたらしい流行を面白いと思えない部分があるのだ。
僕は今カクヨムで流行っているような小説は、読んでもおもしろくない、というか正直なところ、あまり面白さがわかっていないのだ。
これには悔しさを覚える。
創作者として、流行ジャンルの面白さを理解できないのでは致命的だ。
だけど、面白さがわからなければ、書くことはできないし、読むこともままならない。
よく「なろう系」なんて、面白さがわからないよ。
とか、流行のなろう系なんて自分は書く気になれない。
そういう作者さんがいる。
昔はその気持ちがあまりわからなかった。
そんなこといわずに、読んでみて、研究して、書けばいいのに。
だけど、今ならその気持ちがわかる。
僕は今の流行についていけない。
だったら、僕らはどうすればいいのか。
僕はこう結論を出した。
僕は僕に書けるものを書こう。
結局、僕らは自分の好きなものを書くしかないのである。
それは、流行のものをあきらめて、人気になるのをあきらめる、ということではない。
もちろん、人気になることは目指す。
その上で、好きなものを書くのだ。
どういうことか。
僕は「古き良きなろう系」が好きだ。
だけど、今では流行の変遷によって「古き良きなろう系」は読まれなくなってきている。
だけど、じゃあ僕がその「古き良きなろう系」を書くことをやめればどうなるか。
ますます読まれなくなってしまう。
僕はそのなろう系好きとして、それは悲しい。
僕は自分の好きなジャンルを盛り上げたい。
だから、なろう系を引き続き書いていこうと思うのだ。
僕がそれを少しでも書いて、少しでもおもしろいものを書けば、またそれが流行になることもあるかもしれない。
流行にはならなくても、少しでも、なろう系を読む人が減るのをくいとめられるかもしれない。
僕とおなじように古きよきなろう系が好きだという読者さんもいるだろう。
僕はそういう人に届けばいいなと思う。
それに、「なろう系」はたしかにweb小説の流行ではなくなったのかもしれない。
だけど、書店を見てみてほしい。
いわゆる「古きよきなろう系」は漫画でも本でも、いまだに売れているものはあるのである。
だから、完全にそれらの需要が減ったわけではない。
むしろ、書籍としてはまだまだいけるジャンルだと思っている。
そう、なにもweb小説の流行がすべてではないのだ。
だから、僕はweb小説としての人気はそこそこにあきらめて、これからはコンテストなどを積極的に狙っていこうと思っている。
コンテストなどを通じて一度市場に出れば、また違う流行があるからである。
そんなふうに、視野を広くもってほしい。
たとえば、SFやミステリーが好きな人。
それはweb小説としては流行じゃないかもしれない。
だけど、web読者にもそれらを好きな人はいる。
それに、本になって市場にでれば、それらはまだまだ売れるジャンルだ。
ここで僕がいいたいのは、どんなに人気のジャンルを書いていても、それはいつかは廃れてしまうのだ。
どんなに人気のないジャンルを書いていても、一定数はそれらを読みたいと言ってくれる読者は必ずいるはずである。
だったら、自分が好きなものを書くのが一番なのではなかろうか。
そうして好きなジャンルを書けば、自分の好きなジャンルが盛り上がる。
自分の好きなジャンルを盛り上げて人気にするのは、他でもない自分でやるのだ。
もし自分までもがそのジャンルを書かなくなったら、いよいよそのジャンルは廃れてしまうかもしれない。
自分が好きなジャンルの火を絶やさないためにも、好きなものを書こう。
そして、一番なのは、「新しいジャンル」「新しい流行」というのを自分で創り出すことだと思う。
まだ誰もみたことのないものを書いて、それを流行らせれば、その第一人者になれる。
だけどそれはとても難しい。
新しいものを無理に書こうとする必要はない。
ただ自分の好きなジャンルを極めていけば、きっとなにか新しい試みをしたくなるはずだ。
そのときはじめて、そのジャンルに新しい視点を加えてみる。
すると、きっとそれが新しい流行の種になるに違いないはずだ。
一つの好きを極めた先に、まだ見ぬ物語が存在するのかもしれない。
それでは、あなたの執筆ライフが少しでもよいものになることを祈って。
みんと
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