第6話 繋がる糸、揺れる心の秤

夜明け前、ピットは一通の手紙を受け取った。封を切ると、そこには密偵たちからの緊急の情報が記されていた。隣国からの使者が、秘密裏に渚王国を訪れるというのだ。この使者の来訪が、王国にとって何を意味するのか、誰にも予測できなかった。


ピットはこの情報を国王である兄、渚大治郎に直ちに伝える必要があると感じた。しかし、国王と直接連絡を取るのは容易ではなかった。ピットはこくすけとやよいと相談し、使者の訪問に関する情報を探る計画を立てた。


その日の夕方、ピットは教師としての役割を終え、密偵としての活動に移る。彼らは、使者が宿泊すると噂される宿に近づいた。こくすけは、周囲の警戒を潜り抜けるための策を練る。やよいは、暗闇に紛れ、宿の近くで見張りを始めた。


ピットは隠れて、使者の一挙手一投足を観察する。すると、使者が隠密に町の外れに向かうのを目撃する。ピットは、この動きが何かの暗号ではないかと疑った。彼は、使者の後を追い、町の外れにある古い祠に辿り着いた。


祠の中では、使者と見知らぬ人物が話をしているのが見えた。ピットは彼らの会話を盗み聞きする。話の内容から、この会合が王国にとって重要な意味を持つ秘密の取引であることが明らかになった。


ピットは、この情報を兄に伝えることの重要性を痛感した。使者の訪問が、単なる外交の挨拶ではないこと、そして隣国との間で何らかの秘密の動きがあることがわかったのだ。


使者との会合が終わり、ピットはこくすけとやよいと合流し、宿に戻った。彼はこの情報を大治郎に伝える最善の方法を考えながら、深い思索にふける。この一件は、渚王国の未来に大きな影響を及ぼす可能性がある。ピットは、兄として、そして王国の一員として、自分に何ができるのか、何をすべきなのかを考える。


この夜の出来事は、ピットにとって、ただの討伐任務以上のものを意味していた。王国の平和を守るためには、力だけではなく、情報と知恵が必要であることを彼に教えたのだ。そして、それらを駆使して、渚王国の未来を守る決意を、ピットは心に刻んだ。

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