黄道の迷い道

@3monbun4

第1話春、近からじ、我なら啼くに

 弥生三月。例年なら、もう春と云える頃合いだが、この年は上旬を過ぎても雪模様であった。

 一応は北国に該当する、この地方も今年は未だ寒さが衰えていなかった。だが、他の地域よりも降雪量は大した事が無かった、と云うのが春山昌典の率直な印象であった。

「そう言や、今年って閏年だったけか・・・」

 当日のニュースで彼は知ったが、余り関心も抱かなかった。少なくとも、大騒ぎする様な話では無かった。4年に1度だろうが、10年に1度だろうが、或いは毎年だろうが、定期的に訪れると云う点は変わらないのだから・・・。

 寧ろ三月に成っても、僅か乍らとは云え、雪に見舞われたと云う出来事の方が、予想外であって、何やら未知の事件であるかの如くに思われた。

「どうでも良いけど、寒いのは敵わんな」

 ポツリと呟くと、彼は自家用車に乗って、自宅を後にした。特に何処かを目指していた訳でも無かった。唯、家に居たくない、と云うそれだけだった。

「4年に1度ってか?でも世界は何も変わって無ぇよな」

 助手席に虚無感を同乗させて、彼は車を走らせた。

 春山昌典よ、何処へ往く。

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