「トリあえず」で浮かんだのがこれだったのだもの。

トリあえず

　取り敢えず。

　意味は、「さて」「まずは」「すぐに」。あと「ところで」とか「そんなことより」みたいに気まずい話題を回避したり、場合によっては「こんにちは」「おやすみなさい」なんて意味もあるよ。

　嘘だって分かるか。私も正しい意味を知らなかった。だからテーブルのキーボードの横に転がっていた手のひらサイズの長方形に聞いたくらいだ。マイナスの意味を多く含むらしいから皆も気をつけるように。

　さて「トリあえず」をお題に小説を書かねばならなくなってしまった。何せ私はこのサイトに来てほんの数日、行事に参加して空気を掴みたいからね。

　けれど大学なんて崇高な場所に通ったこともなし、当然日本語科なんてものも知らないからね、言葉について語ったり面白い小説を書いたりする能力はない。だからお題の表記に着眼してお茶を濁そうと思う。具体的には「“トリ”あえず」だ。バナーも景品もトリなくらいだから、きっとこのサイトのマスコットキャラクターがトリなんだと思う。可愛いトリだね。そういって媚を売るくらいしか私にはやることがない。

　トリといえばちょっとした話があって、せっかくだからその話をしよう。

　私の知り合いにトリ好きがいる。トリ好きなんてどこにでもいるだって？　そりゃそうだ。私の高校時代の親友もーー今は親友ではないけれど、何をやっているか連絡を取ったら詐欺を疑われてしまうだろう？ーートリが好きで、亡くなった飼いトリをガラケーの待ち受けにしていたし、世の中がスマホに移行した時もその画像だけは移動していた。だからトリ好き自体は珍しくはない。けれど、あれほどまでのトリ好きを私は知らないよ。

　まず鶏肉を食べない。鳥刺だけじゃないよ、焼き鳥もほぐし身も。チキンラーメンになってくると分からないけど。あとトリが出てくるゲームに目がなくて、「トリをペットにできるよ」と言ったら喜んで五千円以上出すんだ。結局、そのゲームの敵モンスターにトリが出てくるせいで、その子がゲームをクリアすることはなかった。一応「面白いね、このゲーム」と言ってくれたけど、まあ、お世辞半分かな。それと一緒に居酒屋に行く時は気をつけた方がいい。焼き鳥を頼もうものなら空気が最悪になるからね。

　何でそこまでトリ好きなのかって？　さあ。聞くことすらできないよ。だって「飼ってたトリを目の前で飼い猫に食べられちゃったんだ」なんて言われた日には口を閉じてアルカイックスマイル、ごめんなさいの意思を目に乗せて無言を貫くしかないだろう。

　あ、「取り敢えず」。違った、「そういえば」ね。今、私は病院に入院していてね。お金があるから個室にいるんだ。それで備え付けの机に、これまたお金持ちだからiPad Proを乗せて、実はそんなにお金持ちじゃないからパンタグラフのキーボードをBluetoothで繋いでるわけ。それで、まあ食事がね。身長マイナス百十が適正体重なんて言うじゃないか、余裕で数十キロ超えてて、だからあんまり豪華なご飯が出ないんだ。

　オチが分かっちゃったか。ごめん。まあ、ちょっとだけ聞いておくれ。

　それでまあ食事制限のついた食事なんて変わり映えしないもので、ご飯に薄味の味噌汁、ちょっとだけ味のついたあんかけが乗った白身魚。それと和物。和物の種類だけ異様にあるんだ。酢とか胡麻とか梅とかマヨネーズもどきとか。

　そう、そういうわけ。大体は野菜を和えるんだ。だから私はこれが言いたくてこんなに書いたし、読者様に至ってはこれを読むためだけにこのくだらない話に付き合う羽目になったわけだ。ごめんね、謝っとくよ。

　それじゃ、ひと言だけ。これで締めようか。

　「トリ和えず」。