自称推理好き少女と蒼い紫陽花のミチシルベ

狂歌

プロローグ

 突然すぎる告白なんですが、私……花哀はなかなれいには、直せない病と特異体質がある。

 病と言っても身体に異常がある病ではなく、かと言って精神に異常があるという訳ではない。

 それよりももう少し軽い方だと私は思ってる。

 私の小さい頃からあるその病……それは「好奇心旺盛」である。

 この病のせいで、私の学生生活が大変であった。

 1度気になってしまえばそれを解明するまで、授業をサボったり、抜け出したりしていました。

 まぁそのせいで留年間際になってしまいましたが、まぁその事は端に置いといて。

 そして何故今この事を話し出したか……それは、今まさに私の好奇心を刺激するモノを道ばたで見つけてしまったからだ。


「これは……またですか」


 空は曇り、チラチラと雪が降る寒空、は学校の登下校に使う道の端っこ、電柱がある場所で見つけた紫陽花である。

 紫陽花と聞いて、みんなは最近の流行りの猫ミームの如く、はぁ?って言っているだろう。

 なら、私だって見飽きてるぐらい見た。

 見飽きたというか、見すぎて逆に好きになってしまった。

 ただ、問題はこの紫陽花は、普通ではない。

 なぜならこんな冬に咲くわけもなく、ましてやここではあまり咲かない蒼い紫陽花が1輪咲いているからだ。


「これが咲いているって事は……この近くかしら」


 だが、私はこの花がここに咲いている理由を知っている。

 いつもこの花を見ると、心臓がバクバクし、少し体がゾワッと鳥肌が立つ。

 勇気をだして、曲げていた膝を真っ直ぐにし、立ち上がると、モワモワとした暑さのせいで、出てきた汗を持っていたハンカチで拭き取ると、手提げカバンから黒い日傘を取りだし、開く。

 ヒラヒラとした白と黒を基調としたワンピースの臀部分をパンパンと一応汚れがついてるとかもしれないと思い叩く。

 そして私は少し歩く事数分、辿り着いた場所は普通の一軒家である……いや、普通じゃないかもしれない。

 普通の家には、警察車両や警察官が囲んだりしていないし、厳つい刑事さんが近所の人に聞きこんだりしていないだろう。

 はァ……またこれか。

 厳つい刑事は鋭い目付きで近所の人に話を聞いていたのだが、流石に怖かったのか事情聴取されていた人は今にも泣き出しそうな顔をして話をしていた。

 まぁ、泣きたくなるのは私もわかる。

 何せ刑事さんの顔面は言ってしまえば鬼……鬼のような顔つきなのだ。

 まぁでも、私はあんまり怖がらなくなった。

 人はほとんど目で相手を見るため、見た目だけで偏見を持つ生物。

 だから、初対面の人は大抵怖そうな体格、怖そうな顔ってだけではヤクザやそれに近しい人と勘違いする。

 でも、案外話せば分かることもある。

 例えばこの刑事さんとか。


「また顔怖いですよ、固嗤かたわら刑事」


壁と壁の間にあった黄色いテープを上から通り抜けると、ヤクザ顔の刑事に一声かける。

 私の声に反応したのか少しビクッとし、ゆっくりと大きな巨体をこちらに向けてくる。

 鋭い瞳はゆっくりと近所の人から私映っていた。

その瞳に見られた時、ドキッ!と恋とは違う恐怖で体が跳ねてしまった。

 毎回の事だがこれだけは慣れない。


「……お!莉ちゃんか!」


 その巨体と見た目から離れた爽やかな声で私の名前を呼ぶ。

 流石に驚いたのだろうか、近所の人も、え?っと表情と、声に出ていた。


「お久しぶりです固嗤刑事」

「おう久しぶりだな!どうだ?学校は?」

「えぇ、毎日知らない事を知れて満足です」

「それはいい事だ!」


 がっははははと豪快な笑いながら、花哀の肩をバンバンと固嗤刑事が叩く。

 勢いが強すぎて、肩にズキズキし出していた。

 そろそろ力加減をしてほしい物ですね。

 

「というか……刑事さんはなんでここに?」

「実はこの一軒家で殺人事件が起きてな今うちの班で聞き込み中だ」

「殺人事件……またですか」


私はそっと手を合わせると、死んでしまった誰かに合掌する。

その姿を見た固嗤事件があった方を向き、合掌をする。


「あー!固嗤先輩!なんで一般人通してるんですか!」


合掌していると、私の後ろの方から若々しい男性の声が聞こえてくる。

足音から細身で、身長は大体180cm。

声からして20代前半。

ここまで絞り出すと私は誰か分かってしまう。

誰か分かったが……あまり私は会いたくない人物だ。

会いたくない……は少し酷すぎますか……もうちょい柔らかにすると相性が合わない。


「……正義まさよしさん私ですよ」


私は彼――架樣たなさま正義に背を向けながら彼の名を呼ぶ。

正義は固嗤さんの後輩で、捜査一課の刑事。


「?……あんたか!毎回言ってるだろ!民間人が入ってくるなって!お前みたいな好奇心しかない人間は嫌いだ!」


耳の鼓膜を勢いよく貫通させてしまいそうな声量で怒鳴ってくる。

毎回そんな声出して、体動かしてて寒くないのだろうか。


「ほら、さっさと出ていった!」

「嫌です……私だって一応はこの事件を調べる権利はあります」


少し声を落として、低音で言い放つと、突き刺さったのか少し後ずさりした。

力加減が出来ない固嗤と声を加減出来ない正義を見ているといいバランスの組み合わせだなァっと思うが、正直嫌すぎる。

彼を一言で表すと……熱血。

名前の通り警察を絶対的正義と思っているらしく……自分の行動は全て警察の秩序、ルールを守り、全ての行動が正しいって思考が強すぎる。

私とは全く合わない。


「……なんでこんな自称探偵に……」

「文句があるなら固嗤さんに言ってください……それに」


そう言うと少し言葉を詰まらせ、少し遠い目をさせながら曇りきった空を見つめる。


「それに……私は好奇心で動く事はあっても……関わった事件を解決するわよ……この事件も」


今起こっているこの事件、私はココ最近何回か目撃した事がある。

私は自称だが探偵紛いのことをしている。

している……というか、無理やりやらされたと言うべきか。

まぁそれは置いておいてその事件とは殺人事件なんですが、被害者は年齢や性別、交友関係がバラバラ。

なんの関係性もない……だが、ある1点だけ共通点があった。

それは殺し方だ。

殺された被害者は全員頭が無くなっていた。

そして1つだけ不思議な事がある。

事件現場に蒼い紫陽花が咲いているのだ。

そしてそれが見えているの

これが私の特殊体質……色んな事が花や匂いで分かる。

人の言葉には花の匂い、現実世界の痕跡には花自身と言った事がある。

事件と出会ったのも、私の好奇心を爆上がりさせたのも……この特殊体質と紫陽花だ。

紫陽花と出会ったのは……今から数ヶ月前……そう大学生になって初めての夏休みだった。

いや……もしかしたら……もっと前の……春かもしれない。



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