第50話

第26部

中国式武具ヌンチャクと双節棍 双節棍と三節棍 三節棍の薦め 一騎討ち 戦争も差しの勝負も全く同じ 作戦と戦略 仮想現実訓練 【Virtual reality training】(バーチャ・リアリティー・トレーニング) 地元で人気の男と全く不人気な男 余所者 そして運命と生涯への誓い


1980年4月8日(火曜日)


再び俺の高校生時代、その正味2日間だけの。

俺の通ったあの工業高校で起きた、一連の事件のその話だ。


俺の正面にはまるで野牛、つまりは野生の牛。

水牛の様な。

全身色の黒々とした、図体の度デカイ男が。

鼻息を荒げ、荒げたその息を。

鼻から吹き出しながらも、四股を踏み。

前屈み前傾の、その姿勢と成って。

相撲の立ち合いで繰り出す、ブチ噛ましのそのポーズを取っている。

昨日の段階で既に俺はこの男、「植田」の持つ。

その破格な迄の馬鹿力、強靭な腕力のその凄まじさを。

既に体験済みだ。

そしてそれと又同時に、既にこの男の攻撃の。

その種類。

主にその性質迄をも、全て見抜いて居た。


俺がこの戦闘を始めるその前に、この○○連合の副番で在る。

「植田」とのその【タイマン勝負】へ。

その俺が飲んで遣る、その【タイマン勝負】へ。

俺の条件で在る、「ルール」を着けたのも。

それを想定して居たからだ。

そして在れだけのパワーと、瞬発力を持つその怪力の男が。

今度は俺の正面からの、その体当たりで。

俺を弾き飛ばそうと、している訳だ。

真面に正面からそれを喰らえば当然、その体重差も在り。

俺は意図も簡単に、弾き飛ばされて仕舞うだろう。

つまりこの場での正面衝突は全く、俺に執って不利って話で在り。

その勝ち目も全く、これっぽっちもない訳だ。

俺は手首のスナップを使って、自分の親指を振り下ろし。

振り下ろしたその親指を、内側から外側へと。

又勢い良く振るった。


この親指のスナップの力が、【ボクサー】達のその【パンチ】力と破壊力を。

極めて増幅し、そしてそれを増加をさせるのだが。

この時の俺は未だ、その事を良く。

詳しくは知らなかった。

只、子供の頃に良く見た漫画の。

【明日のジョー】で。

「ジョー」のトレーナーで在る、「丹下 段平」が。

それに似た様な事を、「ジョー」へ話しても居た。


(丹下段平)「小指から相手に向かって当てた…そのパンチを…捻りながら…人差し指と親指を…捻り込む様に…打つべし…打つべし…打つべし…」と。

確かこんな台詞だった筈だ。


しかし前日の、あのトイレでの13対1。

その喧嘩の際に。

自分の両脇から、俺を掴みに来るその手を。

振り払おうとして。

要は【顳顬】(こめかみ)と同じ高さの、その肩の上部から。

自分の脇腹へ向けて、一機にそれを振り下ろす。

つまりはその際に、子供の頃に覚えた【ヌンチャク】を振り回す。

その際の要領、その腕の振り方を何故か…???

俺は思い出して居たのだ。

この際に脱力と遠心力を応用した、撓やかなその腕の動きが。

スピードとパワーを産む、その最大の秘訣で在る筈だと。

身体が感じる何か…???

感覚の様なモノで、そう気付いて居たと言う訳だ。


中国式の武具、特にあの【ヌンチャク】ってヤツは。

初速を生み出す為の、その際の瞬発力と。

その後に産まれる遠心力のみを、もう最大限な迄に。

利用をし活用をする、そんな武具だ。

その後は脱力から成るその力が、最もその最大のその打撃力へと繋がり。

その破壊力へと変化する事を、自分の身体で体感し。

それを感じて行きながら。

身体が自然にそれを、覚えて行く。

その重要性を中国式の武具とは、其所を又シッカリと。

教えてくれるモノだ。

だから面白れえんだ、是非とも挑戦して見て欲しい。

しかし本当に、俺がお薦めしたいのは。

【三節棍】だ。

【三節棍】はこの【ヌンチャク】や、【双節棍】以上に。

その最大限の面白さを感じられる筈の、中国式武具だろう。

俺もこの先もしも、自分の時間が作れたらのならば。

この【三節棍】を、独自の練習でマスターして見たいと。

今もそう想って居る。


俺の場合は【ヌンチャク】、まあ【双節棍】へ最も近い。

その武具なのだが。

【ブルース・リー】オリジナルの、この【双節棍】は。

本物の【双節棍】とは、その形はとても良く似ていて。

全く異なる物だ。

その【ヌンチャク】を使う際の初速、つまりは始めの瞬発力と。

その後の遠心力と脱力に因ってこそ、産み出されるその力の。

その破壊力への応用が。

ボクサーとしてのパンチへも適応する筈だと、俺はこの日の前日。

あのトイレの中の戦闘のその最中に、それに気付いて居た。


そして何故か俺は、自分のパンチ力へ。

この時この際に、目覚ましく覚醒をし。

今迄のその自分へはない、桁外れのその破壊力を。

産み出せる筈だと。

そんな自信が俺の、その全身を包み。

身体中へその破壊的な迄のエネルギーが、漲っても居たのだ。

本当にあの日の俺は、何故だろうか…???

もう完璧な迄に。

全くの別人がもう1人、自分の身体の中へ居て。

自分が自分で無い様な、そんな気さえもがして居た。

俺はその場で軽く、跳び跳ねながらも。

今真正面へと居る、その孟牛のその弱点を。

静かに探り始めた。


「植田」はピクリとも動かず腰を落とし、前屈みと成った儘で。

自分の拳を硬く、握り締めている。

更に眼光を光らせながらも此方を、俺の眼を睨んでも居る。

まああんまり此処で、喧嘩のアドバイスなんかしてっと。

クレームも入る御時世、世の中なんで。

あまり大っぴらにはそれも、出来んのだが。

1つだけ忠告して措こう。

この喧嘩の際にはもう絶対に。

相手のその眼から、自分の眼を離すなっ。

それももう決して、どんな事が在ったとはしても。

絶対に離すなっ。

離さずに相手の心を映し出す、その眼を視て。

その眼の光にこそ顕れる、心の微妙なその変化を。

全て自らの全身全霊、その直感のみで捉えろ。

怯えたり恐れたりさえしなければ、後は自分の頭と精神。

そして身体や命が勝手に、それに反応をする筈だ。


そして痛みを受けても絶対に、それを痛いとそう口にしたり。

痛いと想ったりはするなっ。

こんなモノでは痛くはねえ、例え痛くとも。

少しだけそれを耐えれば、それを帳消し。

皆無として見せると、そう考えて戦え。

戦闘と戦の神はそんな魂、人の抱き続ける。

その精神の中へこそ、舞い降りるのだ。


(俺)(コイツの図体はもう…それも未だ…高校1年生にしては…確かにもう半端なく度デカイ…そしてこの度デカイ図体から産み出される…その怪力と瞬発力は…もう並々成らぬモノだ…しかしどう見てもこの男…この男のこの体形は…持久力の在るモノとして…到底その様には見えはしない…俺は先ず徹底的に…自分の脚を使って…ヤツを翻弄し…コイツの疲労を誘発させる…そして同時に先ずは…ヤツの脚へ…この場での戦闘へと対する…その致命傷を与える…つまりは先ずは…【ロー・キック】からだっ…それもこの巨漢の…その体重を支える為に…最も負担の掛かる膝を狙った…【回し蹴り】の…その連打からだっ…)。


そうこの俺の対戦相手で在る「植田」が、もしもその。

自分の片膝を痛めた場合。

その後のパワーと瞬発力、そして当然の様に。

その破壊力も。

ヤツのこの度デカイ図体を作り上げている、その体重へと比例をして。

それももう完全な迄に、激減をする筈だろう。

それに俺は小学生の時に、【ブルース・リー】の真似をして居て。

【カンフー】の蹴りをもう既に完璧な迄に、マスターをして居る。

更に【バスケット・ボール】の自主トレで、それも中学の3年間に渡り。

足腰を鍛えて居たので。

痛烈な迄の蹴りを産み出す、その脚力と破壊力へは。

もう断然俄然にそれも最大級な迄の、その自信も在る。


この俺の自信は、この前日の。

トイレでの13対1、その戦いの際へと着いた。

あの際俺の背後には、勿論トイレの壁が在ったが。

例えトイレの壁が無くとも、スピードと重心移動を伴い。

ヒット・ポイントを違(たが)わない、俺のその脚力に因る。

その俺の【蹴り】は。

相当な迄の打撃力とそのパワーを、発揮する筈だと。

そうその自信が着いたのだ。


俺は「先制攻撃」を含めての、【ロー・キック】で先ずは。

ヤツの左膝を狙った。

俺は自分の利き脚の右足を、半歩後ろへ下げ。

左足を半歩前に、「植田」の左足側へと向けて送った。

この体勢から1発目の、その【ロー・キック】を放つ。

放つつもりだ。


(生徒全員)「植~田っ…植~田っ…植~田っ…植~田っ…植~田っ…」。


依然としてこの教室中へは、○○連合の副番。

「植田」へのその【Love Call】が、もう鳴り止まずに響き渡っても居る。

恐らくコイツはもう、それも相~当~な迄の。

その人気者の筈だ。

コイツも昨日俺を突き飛ばした、あの馬鹿さえ居なけりゃ。

俺と本当の、「間歩達」(マブダチ)に成れて居たのかも知れねえ。

まあもう周囲からの、その人気だけでは。

完全に「敗北」、俺の敗けだろう。

そもそも俺は余り、それももう子供の頃から。

人に好かれ様と、そんな努力をした事は無い。

嫌われるんならそれはそれで、もう全く構わないし。

それがきっと俺と言う人間の、その本性で在り。

ならばそれが運命でも、在る筈なのだからだ。


逆に自分の建前、その表面(おもてづら)だけを。

常に繕い。

良い人振って良いヤツだなんて、全く想われたくもない。

それで良い気に成ってるヤツなんてモンは、その実実は。

ろくな者じゃねえ筈だと。

散々自分へ、そう言い聞かせても来た。

俺が「1匹狼だ…」と言われる、その理由と所以は。

そんな俺の全く飾らない、自分を。

コレ迄もずっと、押し通し続けて来たからだ。

只そんな自分を、唯一誉めてくれたのは。

俺の信仰宗派で在る、「日蓮正宗」の。

「日蓮大聖人」のその御書。

御聖訓に因る、その言葉のみだった。

それのみでその1度切り、たったのそれだけだ。

後はもう殆んど全く、自分のその記憶にさえもが無い。


(笑)


著者・龍神 武明

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