第47話

「本田」と「村上」が笑って居る、「植田」と「上田」が違ったが。

どうやら壺に入って、気に入った様だ。

この前日からこの日迄の俺は、本当に冴えてた。

変な話だが本当にまるで、俺じゃない。

全く別人の様だった。

そしてクラスのほぼ全員が、経った今この教室へ。

此処へ入って来たこの野郎、この男の名前をloveコールしても居る。

コレも又昨日の晩、俺の想った通りに。

このクラスの、そのほぼ殆んど全員が。

この○○連合のその身内。

つまりは小・中学校の、その同級生達。

幼馴染みな訳だ。


(生徒全員)「植~田っ…植~田っ…植~田っ…植~田っ…植~田っ…植~田っ…」。


この「植田」って野郎は相当な人気者らしく、教室内へと入場をして。

既に3分余り。

まだこの男へのそのコールは、鳴り止む事はない。

「植田」は大きく回り込んで、俺の周囲。

教室内へと出来上がった、机で囲んだそのリングを。

ユックリと1週すると、俺の正面へと立ち。

その場で自分の首を回して、相変わらず自分の胸元へ。

何かを挟み込むかの様に、太い両腕を振りを続けながらも。

両脚を開き、その場へ一端。

デカイその図体を沈み込ませながら、深く腰を落として。

相撲の四股を踏んだ。

上体を前傾に、前へと倒し。

頭だけを其所から持ち上げて、コレも又相撲の仕切りの様に。

ブチ噛ましのそのポーズで、脇を絞り。

拳を握りしめて。

全身へ力を込めた儘、もうドッシリと構えて居る。


この時俺の眼が捉えていたのは、ヤツの。

この図体の度デカイ男の、その重心だった。

身体の重さやパワー、つまりはその自重。

体重と瞬発力から成る、コイツの力は既に。

俺も知ってはいる。

真面に遣り合えば当然、俺は苦戦をし。

この男へ振り回されて、仕舞う事だろう…???

そしてその体重差から成る、パワーの部分へだけに。

もしも俺が、囚われて居たとしたら。

俺のこの喧嘩、「植田」とのこの「タイマン勝負」へは。

恐らくは全く、その勝ち目も。

無かった筈だろう。


しかし相手の体型や、その体格を観て。

その者の身体能力を、見抜く事は。

俺の得意な、その「十八番」。

観察力と洞察力の、その延長線上へと在る判断力。

優れた自己能力だ。

今この俺の正面へと居る、俺の対戦相手で在る「植田」は。

その立端で俺拠りも更に、5~6cm近くは高い。 

当時の俺の身長は175㎝、体重は68.5㎏程だ。


「植田」は確かに、腕力もその瞬発力も。

遥かにこの時の俺を、上回っても居た。

脚も前へ繰り出す、恐らく10歩迄は。

その瞬発力から発揮される、その脚力で。

確かに瞬時のその移動も、可能な筈だろう。

上半身の筋力はもう、この当時未だ。

高校1年生だった俺達の、その人並み外れて。

極端に優れても居る。

上半身も下半身も、恐らくは相当な迄の。

筋肉で固められている筈だろう…???

しかしどう観てもそれが、少し太っている。

腹や膝裏、足首等へ脂肪が着き。

かなりの量で、その下へと在る筈の。

筋肉や筋を、覆い隠してしまってもいる。


このタイプは前へ出る、その突進力が在ったとはしても。

勝負の前半、その僅かな時間のそれみで。

決してそれが、長くは続く事も無い。

更に「反復横飛び」等の、左右への動きや。

身体を捻りながらも、その進行方向を変える。

変化の動きへは鈍感、寧ろ俺より遥かに。

それは鈍いだろう…???

【フット・ワーク】だ。

俺は脚を使って、この図体の度デカイ男を。

左右へ翻弄する事を考えた。

そして実はコレも前の晩から、俺が想い描いて居た。

その戦略で在ったのだ。


しかしその前に、1発その前置きとして。

俺のその意志で、この男を翻弄して措かなければ成らない。

俺自身が、自分を落ち着かせるその為にもだ。


(俺)「何だよ…???もう始め様ってのか…???此処迄は流石の俺も…予測して無かったがっ…」。


と言いながらもこの状況下、コレから始まるこの男との。

俺とのその一騎討ちへと関しては。

コレも又ほぼ俺の、その予測は的中していた。

先ず前日の入学式、あの校門でのその激突で。

俺に掴みか掛かったこの男は、拳を一切使わなかった事。

更にこうした肉付きの良い、大男の場合。

打突系のそんな格闘技の技選りも、柔道や相撲の技を。

選り多く好んで、それを多く使う。

その事をだ。


俺が恐れて居たのはこの男の、その馬鹿力。

つまりは怪力のその話で。

仮にもしもこの男が、相撲選りも柔道が。

得意で在った場合。

最も俺が警戒しなければ成らないのは、所謂羽交い締めや。

首締め等の、スリーパー・ホールドと。

そして腕式逆十字等の、関節技なのだ。


俺は入学式直前、あの校門で起きた。

この連中達との、あの激突の際に。

知略戦略へと長けた、この2人の存在と。

「本田」と「村上」のその存在を。

自分のこの眼で、既にシッカリと確認をし。

その組織内での、2人の役割迄をも。

家へ帰って、自分の部屋でそれを考えながらも。

既に昨日の晩にそれを、全て見抜いても居た。


今朝その事を此方から、俺の方から。

俺を放り出し、既にこの○○連合の連中の側へと。

寝返って居る。

俺の小・中学校の、その同級生達2人へ。

敢えてその事を漏らし、伝える事に因って。

「本田」「村上」の、その2人を。

実は逆に自分のこの元へと、俺が呼び込んで居るのだ。


そしてあの晩、この日の前日に。

この図体のデカイ、怪力男と。

連合の副番との、その勝負を。

優位に展開する為の、そのルールを迄をも。

俺は全て、自分で考えて。

作り上げても居た。

つまりほぼそれも、9分9厘で。

此処でも俺の想った通りに、その戦略通りに。

事は進んでもいる。

クラスのほぼその全員近くが、この○○連合の連中。

奴等と幼馴染みで在る事。

それも小・中学校の、その同級生達で在った事も。

全てを俺は見通して、予測をしても居た。


只俺が此処で、予測出来なかった事は。

唯一この図体のデカイ、○○連合。

その副番との勝負が、この交渉のその直後。

この場で直ぐに行われるのだと言う、その事と。

その勝負の前に、それを盛り上げる演出計画迄が。

既に練り上げられても居て。

その計画の全貌が、既にこのクラスの全員へと。

行き届き。

その連中達が立てた、その計画の元に。

此処へ居るほぼ全ての生徒達が、それに呼応し。

呼吸を合わせながらも、既に動いても居ると言った。

その事をだっ。

要はつまりは未だ、自分のクラスのクラス・メートの顔も。

未だ覚えても居ないその内に、この場へ居るほぼその全員を。

連中は自分達の身内で在る、○○連合のメンバーへと。

入れ換えていたと言う訳だ。

って事は俺に、それもこの場で直ぐに。

この【タイマン勝負】をさせる、その為にもだろう。

この対戦相手で在る「植田」と呼ばれたこの男の。

その情報を得て、俺がその対策を練り上げるその前に。

圧倒的な【パワー】のみで勝負させ、俺を捩じ込むその為にだ。


それでもだ、この時でさえ俺には。

全くの焦りは、その微塵んも無かった。

拳や蹴りを使い、打撃の衝撃で相手を倒す。

空手やボクシング、キックボクシングや。

中国拳法等の格闘技を。

これから俺の対戦をする、この男が。

全く使わない、その場合。

最もその驚異と成るのは。

気道を閉められた、その呼吸困難から成る。

体力やその大元の意識を奪われる、スリーパー・ホールドのみだ。


そのスリーパー・ホールドを、俺は先ず先程の交渉で。

既に成立をさせた、御互いのその合意と共に。

この場のルールとして、禁じてもいる。

俺は先ず、横隔膜を凹ませて。

脹らませる、機関車呼吸を激しく繰り返すと。

全身の血液内へと在る、その酸素を。

その場で全て、入れ換えた。

昨日もトイレでの、その喧嘩の前に使った。

インド・ヨーガの、その【ライオン】のポーズをで在る。

更に自分の肩や首を回し、肩甲骨を上手く剥がしながらも。

全身のその間接を、隈無く鳴らした。

【李 小龍】【ブルース・リー】の、その準備運動で在る。


この間接鳴らしで、全身の節々は。

急速に温まり。

その可動域を大きく広めて。

まるで油を差し込んだ、機械の様に。

素早くそして速く、自由自在に動く身体へも。

成る訳なのだ。

更にその周囲を覆う、筋肉や筋から。

無駄な力が抜けた、その状態を作る。

それが鞭の様に撓る、柔軟な間接や筋肉を準備する。

リラックスをしたその集中力こそが生み出す、

柔軟性な訳だ。


脱力をすると身体が軽く成り、闘いへ伴い。

自ずと高まり行く、その集中力と共に。

自分の身体のその重さ、自重さえをも。

それすらもが全く、もう殆んど感じなくも成る。

「柔能制剛」、「柔能く剛を制す」の。

その言葉通りに。

所謂身体の引き起こす、その瞬発力とスピードが。

マックス・レベル迄へも、引き上げられる訳なのだ。

勿論この対戦相手、「植田」もそれを又。

同じ様に使っては居た。

その準備運動として、腰を捻り。

首や肩を回し。

自分の身体へ必須なその柔軟性を、準備している訳だ。


しかしそれが、知識をその元として。

行われた場合と。

何も知らずに、知らないで遣っている場合とでは。

大きくその格が、全く違って来るのだ。

俺はその場で、爪先立ちと成り。

先ずはピョンピョンと、跳び跳ね始めた。

この図体のデカイ、怪力の大男を相手に。

この時俺の頭の中へと、描かれていたその対戦法は。

先ずは御得意、【ブルース・リー】の「ジークンドウ」と。

そして【モハメッド・アリ】の、そのボクシング・スタイルで在る。

【フット・ワーク】。

つまりは先ず爪先立ちに脚を使った、その身軽な動きと。

撹乱作戦だ。


「蝶の様に舞い…蜂の様に刺す…」。

「ヒット&ウェイ」の、つまりは【アウト・ボクシング】と。

もう一つ当時まだ、体重も軽く痩せて居た俺の。

大好きだったその戦法の、そのスタイル。

特に【ボクシング】、【渡辺二郎】さんの得意な。

その一撃の、【カウンター】技だっ。

一度自分の眼で視て、自分の頭。

その記憶へと残された、映像としてのその動きは。

天性的な迄の才能で、高度な運動神経を要する。

遠心力で振り回される、宙返り等以外は。

ほぼその全てが、全く同じ様に。

俺はその真似が上手く出来る。


俺のこの眼とこの身体へは、幼い頃からのその憧れで。

【ブルース・リー】を良く、真似していた事に因り。

そんな能力が既に、身に着いても居た。

この時のあの一騎討ちの、その戦いで。

俺は素晴らしく、そして美しい迄の。

そんな攻撃を。


「植田」へその1撃を放ち、浴びせる事を成し遂げたのだ。

在れがこの勝負で対決をした、○○連合の副番「植田」への。

留目の1発で在った筈だと、そう言っても良い。


俺の最高峰のその大技が、この時まるで。

それも【ブルース・リー】の様に、鮮やかにヒットし。

成功をしたのだ。


著者・龍神 武明

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