マッチ売りの少女

 むかしむかしあるところに、マッチ売りの少女が……いませんでした。


 タイトルにマッチ売りの少女ってあるのに詐欺じゃないかという人もいるでしょう。そこはごめんなさい。

 ですが、マッチ売りの少女みたいな境遇で、貧乏かつ、寒い中父親から無理やり働かされている少女はいました。


「小説を。私の書いた小説を買ってくれませんか?」


 少女はマッチでなく、自分の書いた小説を売ってお金にしようとしていたのです。

 ですが小説は売れません。出版不況と言われ、街の本屋さんが次々に閉店していく今、いきなり誰も知らない同人小説を買ってと言われても、見向きもされませんでした。


 そうしている間に雪が降ってきて、寒さはますます厳しくなります。

 体の芯から冷えてきて、このままでは死んでしまいます。

 なんとかして、暖かくしなければなりません。


「そうだ。トリあえず、本を燃やして暖をとろう」


 そんなことをしても、本当にトリあえずの一時しのぎにしかなりませんが、今の少女に選択肢なんてありませんでした。


 小説に火をつけようとしたその時です。


「待つトリーっ!」


 やって来たのはトリさんでした。


「せっかく書いた小説を燃やすなんて、そんな悲しいことしちゃダメトリ。トリあえず、何かあったか話してほしいトリ」


 そうして少女の事情を聞いたトリさんは、涙を流して悲しんでくれました。

 売っていた小説を買ってくれたばかりか、近くの居酒屋で焼き鳥まで奢ってくれました。


「けど、今日はお金を稼げたからいいけど、いつまでもこのままじゃいられない」


 トリさんが助けてくれたのは嬉しいですが、根本的な解決にはなりません。


「せめて、もっと多くの人に小説が売れてくれたらいいんだけど」

「それなら、いい方法があるトリ!」


 何かを思いついたトリさん。

 そしてトリさんは、少女にカクヨムを紹介しました。


「カクヨムならタダで作品を見ることができるから、わざわざ小説を買ってもうよりもハードルは低いトリ。それでたくさんのPVがついたらリワードとしてお金が得られるし、サポーターがついてギフトを贈ってもらえたら、さらにもっと稼げるトリ。そして何より、コンテストに出せば受賞のチャンスがあるトリ。受賞という泊がついた上で出版社から刊行されたら、きっと売れるトリ」

「でも、そんなのできるの、ほんのひと握りの人でしょ? 私じゃ無理だよ」

「やる前から諦めてどうするトリ。チャレンジするのはタダなんだから、トリあえずでもやってみるトリ」

「うん。そうだね。私、頑張ってみる!」


 それは、少女にとって初めて見えた希望の光でした。


 その後少女は、自作の小説をカクヨムに投稿。

 たくさんの読者やサポーターに恵まれ、ついにはカクヨムコンで受賞、書籍化に至ったのです。


「ありがとうトリさん。私、書籍化作家になれたよ!」

「君が頑張った結果トリ」


 カクヨムコンの授賞式で、二人は喜びを分かち合いました。

 それから、二人だけのお祝いとして、また仲良く焼き鳥を食べたそうです。


 めでたしめでたし。





 ※次回、ハーメルンの笛吹き。

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