最強の野鳥

睡田止企

最強の野鳥

 空が自由になった。

 昔、偽りの平和があった時代、各国の領空は閉ざされていた。

 今は、現魔王の治世のおかげで、平和な時代だ。

 各国の空を行き来することができるようになった。

 私は航空手段としての鳥を探していた。


 私は、とりあえず、旅に出ることにした。

 最強の野鳥と言われているワイバーンを捕まえるためだ。

 ワイバーンの生息地は零下の空と言われている。

 私は、とりあえず、北に向かうことにした。


 北に向かうに連れ、空を舞う鳥の大きさが大きくなっていく。

 しかし、その大きさは噂に聞くワイバーンほどではない。

 私が求めているのは自分が乗れるほどの大きな鳥だ。

 大きい鳥であればワイバーンに固執するつもりはない。

 だが、ワイバーンよりも大きい鳥はいない。

 だから、とりあえず、ワイバーンを探している。


 昔、ワイバーンはドラゴン種だった。

 しかし、現魔王が言った「ワイバーンなんて鳥だろ」という発言から鳥扱いされることとなった。

 鳥ということは、個人で狩っても良いということである。

 この世界には、ドラゴン種の討伐・捕獲には十人以上のパーティを組まなければならないという神の定めた法がある。


 私は寒村に唯一ある宿屋に辿り着いた。

「聞きたいんだがね、この辺りにワイバーンはいるかい?」

「この辺りにはいませんね。もっと北に行かないと」

「そうかい。では、一泊だけさせてもらうよ」

 私はこの宿に一泊だけして、明日から更に北に向かうことにした。


 北に進むに連れ、空に鳥の姿が見えなくなる。

 ワイバーンではない鳥の姿すら見えない。

 それどころか、人の姿すら見えない。

 見知らぬ土地で知らぬことが多い。

 私は、とりあえず、空を見上げるのを止め、人を探すことにした。


 一人の旅人と出会った。彼は北から歩いてきた。

「北にはワイバーンがいると聞いたが本当だろうか?」

「本当でしたよ。たくさんのワイバーンが飛んでいました」

「そうかい。それを聞いて安心したよ」

「でも、今はいませんよ」

「どういうことだい?」

「空の移動が可能になって、皆、とりあえず、ワイバーンを捕まえましてね」

「もうワイバーンは捕まえ尽くされたということかい?」

「はい。今は皆、あの鳥に会えず帰っていきますよ」


 私の旅はトリあえず終わった。

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最強の野鳥 睡田止企 @suida

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