怠惰なる悪役貴族のやり直し方 〜悪役貴族に転生したけど、頑張って痩せたら周りの女の子の俺を見る目がなぜかおかしい〜
エリザベス
第1話 転生したっぽいぞ?
(どこだ、ここ……)
目覚めたらそこは知らない天井だった。
「キャメロル様、お目覚めですか?」
声のする方に目をやると、メイド服を着た一人の可愛らしい女の子が立っていた。
(…………)
考えたくはないが、もしかして俺っていかがわしい店に行ってそのまま寝ちゃってたとか?
いやいやいや、そんなわけはない。第一、俺にそんな金はない。
あれ、待ってよ……?
今この女の子なんて言った?
キャメロルって言わなかったか?
なんで俺がさっきプレイしていたゲームに登場するキャラの名前が出てくるわけ?
キャメロルって言えば、大人気恋愛RPG『エクストリーム・オルタナティブ』、略して『エクオル』に登場してくる悪役の名前だ。マリナード侯爵家の長男、本名はキャメロル・マリナードだ。
そんなキャメロルを一言で表すと、怠惰である。
そう、キャメロルは古今東西において一番怠惰な人間と言っても過言ではない。
そのせいで、体はめっちゃ太ってて、女性からは嫌われていた。
ちっともモテないキャメロルはヒロインたちとラブコメを展開している主人公に嫉妬し、あまつさえ襲撃を実行したあげく返り討ちに遭ってしまうという、あまりにも不憫なキャラだ。
なんで俺はそんなキャラの名前で呼ばれているのだ?
恐る恐る自分の体を見てみる。
(うん、これアカンやつや……)
腕とかめっちゃ太いじゃん。
横になっててもお腹がぽんと出てるのが分かる。
もしかしなくても、俺はキャメロルに転生してるなこれ。
「それではお着替えさせますね」
うん、お着替え?
ちょまっ!!
なんで俺のズボンを下ろしてるんだよ、このメイドは!?
「触るな……っ!!」
「も、申し訳ございませんッ!! 私がなにか粗相をしでかしましたか!?」
あっ、いや、そういうことじゃなくてですね。
なんというか、恥ずかしさのあまりについ叫んだというかなんというか。
そんな悲しそうな目で見るなよ。
なんかすごく申し訳そうになってくるからごめんな?
「えっと、お前、名前は?」
「ッ―――!?」
違う。
違うんだ。
別に忘れたとかじゃなくて、ほら、転生したばっかだし、普通に知らないだけだから。
「……セリアです……」
セリアっていうのか、このメイド。なかなか可愛らしい名前じゃないか。
よく見てみると、顔もかなり可愛い。
「その、なんというか、着替えは自分でするから出てって貰えると助かるんだけど……恥ずかしいから」
さすがは怠惰のキャメロル。着替えもメイドにさせてもらってるのか。
なんという鋼メンタル。彼女いない歴イコール年齢の俺からしたら見習いたいもんだ。
「ッ―――!? どうされましたかッ!? 大丈夫ですか!?」
うん、俺は至って普通だから、そのリアクションはやめろ?
「……キャメロル様はご自分で着替えなさるということでしょうか?」
「うん」
「じゃっ、じゃ! 私が服を着せる時にさりげなく私のおしりを触るのも―――」
「しないよ!」
「じゃっ、じゃ! 着替え中にわざと私の胸に触れて、『けしからんぞ! お前のおっぱいが大きいから当たったじゃないか』と言うのも―――」
「言わないから!!」
「じゃっ、じゃ―――」
「もういいっ!!」
クズだな、俺は……。
いや、キャメロルか。
着替えさせてもらってる最中にセクハラし放題じゃないかよ。
まじで終わってんなこいつ……。
てか、なんだろう、俺に確認するふりをして、今までの不満をぶつけてくるこの感じは。
セリアって子相当溜まってるなこれは。
にしても、俺ってほんとにキャメロルに転生したのか。
前世でもモテなかったのに、今世でも豚ってのは神様厳しすぎやしませんかね。
いや、そんなの絶対に嫌だ。
せっかく生まれ変わったんだから、俺は人生をやり直すぞ!
頑張ってダイエットして、せめて女の子に嫌われないようにしたい。
あとは、この世界って魔法があると思うから、魔法の勉強もして、立派な職に就いてそうすればいつか彼女くらいできるだろう。
主人公に嫉妬する惨めな運命だけは回避したいな。
よし、まずは着替えよう。
なんかお腹も空いてきたし、着替えてご飯食べよう。
あれ? おかしいな。
なんで体が動かないんだろう。寝起きだからかな?
よし、もう一回だ。
(…………)
うん、もう一回だ。
(…………)
「くっそぉーーーッ!!」
「キャメロル様!! 大丈夫ですか!? キャメロル様っ!!」
詰んだわ……。
どうやらこの体は自分で着替えるのを強く拒んでいる……。
そういえばさっきから横になったまま動いてないんだった。
こりゃ筋金入りの怠け者なんかじゃないぞ。
日常生活に支障をきたすレベルだよ。
「キャメロル様……やはり私が着替えさせましょうか……?」
ありがたい提案だが、さっき散々言われた身としては頼みづらいかな。
というか、そんなメンタルは持ち合わせていないわ。
「動けッ!! 俺の手!!」
「え…………?」
ダメだ。
ピクリともしない。
どうしよう……俺の人生をやり直す計画はいきなり頓挫したぞ?
しかも、ズボンは半分セリアに下ろされたままになってるし。
「なっ、セリア……」
「……はい、何でしょうか……?」
「やはり着替えさせてもらっていい?」
「…………分かりました」
……転生早々、俺は大事なところをメイドに見られてしまったのだった。
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