第1話
「多分───というか、絶対にそれは、お兄ちゃんが
オレが撮影したビデオを見ながら、どこか呆れたように
「お兄ちゃんが一目見て紗代さんだと思ったって事は、間違いなく本人だよ。というか、このビデオを見る感じ疑いようが無いんだけどね」
「世の中には似たやつがいるからさ。ほら、マスクしてるし」
「それでも多分、紗代さんの持ち物で確信しちゃったんでしょ?それか、このビデオには映ってないけどマスクを取ってたとか。見つかりたくないって隠れたのは、本人である事を認めさせられるのが怖かったからなんでしょ?」
まるでその場に居たかのような推理に驚かされる。
そう、雪の言う通り、あの時───ラブホテルから出た紗代は、年齢がバレずに終えられた事に安堵したのかマスクを取っていた。
しかし、男の方に注意され再び着用。
そこからの映像がスマホに収められていた。
「やっぱりね」
「まだ何も言って無いんだけどな」
「バレた!って顔に出てるから分かるよ。でも、何だか我がお兄ちゃんながら本当に悲しそうじゃないのも、怒ってないのも怖くなるよ」
「そうなるのは本人の口から真実を聞いた時だけだな」
「自己防衛だと思っておくよ」
本心は分からないけど納得したみたいで、2度頷いた後余計な溜息を吐いた。
訂正する──絶対納得してない。
「その様子だと紗代さんに確認してないんでしょ?」
「してないな」
「そんな堂々と答えないでよ。まぁ、紗代さんの事好きなのは知ってるし、すぐに連絡しろとは言わないけどさ……疑ってはいた方が良いよ。絶対に、って信じるのは余計に辛くなるだけだから」
「無理な話だな」
「……はぁ、お兄ちゃんは、なんか残念だよね」
「残念って」
呆れたように何度目かの溜息を吐いてから立ち上がった雪は、おやすみ、とだけ言い残して部屋を出ていった。
「少しでも希望抱いてないとキツイんだよ」
悪夢を見る覚悟を終え、眠りに就いた。
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