新米領主奮闘記 その三 修正しました。

 交番制度を整備しつつ、他の仕事もこなす安崎。実に多忙である。


「殿、お話があります。」


 冬を土木工事と書類仕事で終わらせ、いよいよ春を迎えようかといううららかなある日、五郎に執務室に呼ばれた。執務室とは文官たちの仕事部屋に近い場所にあるので安崎が入り浸っているただの和室である。便宜上そう呼んでいる。


「食料問題が何一つ解決していません。」


 五郎の的確にして緊急性の高い案件についての発言に対し安崎は微笑んだ。


「殿、諦めないで下さい。」


 なぜバレたのだろうかと訝しむ。


 食料問題。実はかなり危機的である。もともと不作続きのなか領主どもが強制徴収して尼子と戦い、勝利した尼子が根こそぎ分捕っていき、ボロボロのところに盗賊共が襲いかかってきた。


明日の食事に事欠くありさまである。


「殿?よろしいですか?冬は我々がため込んでいた物資を吐き出したことと、山中村と取引したことでなんとか越せましたが、それで精一杯でした。」


うむ。


「蔵は、いいですか?文字通り空です。文字通りに。」


うむ。


「殿!!!」


「はい。」


「危機的なのです!いいですか!今晩我々は、穀物を口に入れられるかも怪しいのですよ!」


「はい。」


ぐいと身を乗り出してきた五郎は、顔を赤らめて居住まいを正した。


「・・・殿?」


ちんまりと正座していた安崎は、真顔で五郎に顔を近づける。


「いいか、五郎。食糧危機には古来より伝わる解決法がある。」


「へ?」


安崎はにやりと笑ってこう言った。


「略奪だ。」





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