[1万PV感謝] 中世を駆ける~尼子も毛利も叩き潰す~

山根丸

盗賊稼業

始まり


「逃がすな!追え!」

捕まるわけにはいかないとを顔いっぱいに表現した必死の形相の男は勢いよく跳躍する。

「どこだ!」

「湖に落ちたぞっ。」

「安崎ィ!逃げんなァ!」

くそっ夜の湖は無謀だったか!?視界が利かない。だが!はは、これなら逃げ切れる・・・逃げ切れるのに・・・ああ畜生、二日も飲まず食わずだとさすがに力が入らねえ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 意識を取り戻したとき、安崎は湖に浮かんでいた。

周囲に悪趣味なアクセサリーのおっさんたちがいないことを確認して、ザブザブと泳ぎ陸地にたどり着く。

倉庫街にいたはずなのだが、

「・・・あ?こんな森あったか?相当流されたみてえだな。明るいっつーことはまさか一晩沈んでたのかよ。」

考えを巡らせるが、腹が飢餓を訴えるので食料を探しにふらふらと歩いた矢先、

「おいっ何もんじゃおめえ!?」

げっ、さすがにびしょぬれだと怪しまれ・・・は?

理解不能だった、意味不明だった。疲労困憊の安崎の目の前に居たのはボロボロの麻布をまといヨレヨレでざんばらな頭の、農民だった。大河ドラマの農民を三倍ほど小汚く10倍ほど人相を悪くした男である。


「いや、道に迷っ。」

弁明する間もなく農民に襲いかかられる。

「おりゃっ。」

間一髪。こんなところでやられてたまるかと安崎は手元にあった石を襲撃者の顔面めがけて投擲し、ひるんだ隙に飛びかかる。普通は突然襲いかかられた場合、状況が理解できず、殺意に反応することもできないが、安崎は状況を分析しようとはせず、慣れ親しんだ殺意の波動にのみ反応し、飛びかかって相手をしたたかに殴打する。一撃でだらんと力が抜けた農民の首を、奪い取った鎌でためらいなくを切り裂いた。

 今後のことを奪い取った衣服をまといながら思案する。多少は怪しまれなくなるはず。ついでに死体の腹をかっさばき、河原の石を詰めて湖の中へ。いずればれるだろうが、放置するよりは多分マシだろうと判断した。


 それにしても困ったことになったと眼前に広がる農村を前にため息をつく。頭をひねって考えてみてもあの農民はあの村の住民だろう。ならば家族だのがいるはず。夜になっても帰ってこなかったら家族はどうするだろうか。十中八九捜索に出る。そこで見知らぬ男を発見したらどうなるのかを考え、目に見えている結果から逃れるべく安崎はその場を立ち去った。




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 主人公は普通の生き方をしてこなかったので、普通ではない精神をしています。


安崎が出現したのは1541年の因幡国の東端です。


4月16日 修正

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