未だ点線な三角関係
最早無白
未だ点線な三角関係
「さあて、今日こそは聞かせてもらうわよ?」
「いつも逃げるんだから……私とあの子、どちらか決めるだけなのにねぇ?」
「「――ねえ、どっちなの!?」」
女二人に割れんばかりの大声で好意を向けられ、男はたじろぐ。何回問い詰めても、毎回初回のような驚きを見せるので、数秒後には彼女らがため息をつくところまでが一種のお約束となっている。
「だからさ、二人同時に付き合うのはダメなの……?」
「「ダメに決まってるでしょ!」」
彼女らは強欲すぎる折衷案を断固拒否し、どちらか一人に絞れと再度男を詰める。傍から見れば、もはやこのやりとりそのものがカップルのように見える。
「でもさ……どっちかと付き合うってことは、どっちかとは付き合えないってことじゃん? そんなの、じゃない方に悪いよ……」
「じゃない方って言うな!」
考えうる例えの中で最悪な表現を用いてしまい、ついに髪の毛を引っ張られる事態にまで発展する。もう素直に三人で手を取り合うのは不可能なのかもしれない。
「あなた……慈悲を与えるフリをして、二人同時に攻略しようとしてるでしょう? どちらかと上手くいかなかった時用の、保険として……ねぇ?」
「なにそれ! アンタね、あたしらのことナメすぎでしょ! このあたしが、アンタのことを嫌いになるわけがないじゃない……」
当然もう一人の片割れもこれに噛みつく。思い人の毛根をいじめながらのツンデレとはこれいかに。三人を観察する周囲の目は、次第に男への嫌悪から同情へと変わっていく。
それに男は、まだどちらの女にも『好きだ』と言っていない。先の『じゃない方』発言も、実は能動的に嫌われるための布石なのかもしれない……。
果たして、三人が手を取り合える日は来るのだろうか……?
未だ点線な三角関係 最早無白 @MohayaMushiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます