『威療士/レンジャー・ファミリー』の登場人物がメタ的に用語解説していくショートストーリー
ウツユリン
第1回 威療士って何ぞや?
「――みなさ~ん! いつも『
「……あのさ」
「ちょっとまってね、エリーちゃん。イントロまだ終わってないから。……こほん。ここでは、作中に登場するやたらと多い専門用語とか設定を、ワタシたちが解説していくコーナーです。プロに訊け! っていうスタンスね」
「いや、だからさ、ルー。なんなの、この『メタ的に用語解説』って」
「う~ん、ワタシも実はよくわかっていないんだけどね。なんか、第四の壁っていうのかしら? それをブチ抜いていけ、って言われたの。ほら、エリーちゃん、壁をブチ抜くの、得意じゃない。こないだも、救命活動中に要救助者宅の屋根、突き破ったでしょ。お小遣いから引いておきますからね。あ! でも、きょうの解説をエリーちゃんがやってくれるなら、今回は免除してもいいかな~?」
「んぐっ……。わぁったよ。いろいろ突っこみたいとこがあるけど、どーせ答えないんじゃん?」
「さっすがエリーちゃん! だって、ワタシの台本、ほとんど読み終わったんですもの。あとはアドリブで尺をかせがなきゃね」
「ルーさ。
「もぅ、なぁに言ってるの。ワタシは、
「……あー、で、あたしはなにすりゃいい? 用が済んだんなら、ランニングしてくるけど」
「やだ、はぐらかしたわね、エリーちゃん。トレーニングはあ~と。きょうは、
「威療士? そんなの、“腹ぺこ”の命を救う仕事に決まってんじゃん。よし、以上。じゃ――痛っ!
「エリーちゃん。アナタ、史上最年少の威療士でしょう。そんなんでホントにいいかしら? 独り立ちして、ロカみたいな威療士になりたいんでしょ。だったら、もっとしゃきっとしなさい」
「……それ、ロカに言った?」
「いいえ。でも、自分で言いたいのなら、こういう広報の仕事もきっちりこないしてみせなさい。将来、チームメイトを持ったら、ぜんぶ自分でやらないといけないんだから」
「あたし、
「エリーちゃん?」
「はいはい、わぁったって」
「それじゃあ、よろしくね。……そうそう、匿名のファンから『名前と愛称が一致しない』って意見があったから、ちゃんと自己紹介してからね?」
「まじ?」
「マジ。さ、エリーちゃん。自己紹介と、威療士の解説、よろしくぅ」
「はあ。……あたしは、リエリー・ジョイナー。もうちょいで16歳になる」
「若いっていいわね……」
「ちょっとルー! てか、ルーに歳、関係ないじゃん」
「ごめん、ごめん。つづけて」
「あー、それで、あたしは11歳から威療士やってる。だから威療士歴は5年ちかくになるか」
「エリーちゃん、年齢とライセンスの解説もお願いね」
「はいはい。威療士ライセンス取ったのが11歳。あ、だけど、あたしはなりたくてライセンス取ったから、べつに、このルーに無理強いさせられたわけじゃない」
「もぅ、人聞きが悪いんだから。ワタシは人じゃないけれどね」
「出た、鉄板ネタ」
「こほん。補足するわね。エリーちゃんがライセンスを取得するまで、この
「しかも一発でパスしたし?」
「そうよ! あのときの彼奴ら……こほん、役人たちの顔、いま思いだしても最高よね」
「お、ブラック・ルーが出てる」
「や、やめて! そういうの、すぐネットで拡散されて定着するんだから」
「で、まあ、その役人が大慌てでルール変えて、今じゃ、16歳にならないとライセンス試験を受けられなくなったわけだけど」
「癪だけれど、妥当な対応よね。威療士の仕事は、いつだって命がけだもの。小さい子がやるものじゃないわ」
「べつに生身で〈ドレスコード〉するんじゃないんだし、やる気がありゃ、歳とか関係なくない?」
「大ありですっ。〈ユニフォーム〉を着てるからって、
「だけどほら、今も五体満足じゃん?」
「エリーちゃん! 油断は禁物!」
「油断なんかしないってば。〈ドレスコード〉で気が緩むのは、鍛錬が足りてない証拠。それと経験不足」
「エリーちゃんったら……。威療士のみんながみな、アナタみたいじゃないの。色眼鏡はだめよ? ……あらら」
「うっし、出動要請。じゃ、準備してくる」
「仕方ないわねぇ。ほとんど解説できなかったじゃないの。……みなさん、ごめんなさい。だけれど、これが威療士という仕事なんです。ワタシたちは、どんなときでも、命を救うことを最優先する。それだけでも知ってくれたら、うれしいわ。じゃあ、また次回!」
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