学校で一番人気の美少女に告白して玉砕したら、何故か隣の席に座る眠り姫と付き合う事になったらしいお話

汐風 波沙

第1章

第1話 玉砕から始まる物語

春野はるのさん、高校入試のときから、そ、その……、す、好きですっ!!付き合ってくださいっ!!」

この桜の樹の下で告白すると上手くいくというジンクスのあるこの学校の告白スポットである

僕こと秋月陽色あきつきひいろは、一世一代の大勝負である、学校一の美少女である春野天葉そらはへの告白イベント真っ最中だった。

思えば、あれは高校入試の最終日だった。




あの日、僕は緊張のあまり吐き気に襲われて、足元がふらついていた。

学校の校門の目の前で倒れそうにその時、

「大丈夫?もしかして、貴方もこの学校の受験生?」

助けてくれたのは、彼女だった。

「あ、ありがとうございます……。実は面接とかがあまり得意ではなくて、緊張のあまりあまり寝れてなくて……」

こんな事、普通今会ったばかりの人に話すことでは無いことは、自覚していたが、吐き出さなければ、別のものが込み上げてきそうだったのだ。

「なんだ、そうだったんだ〜!!私も面接とかって苦手だけど、それ以上に、この学校に入学して色んな人に会える事の方が私的には楽しみって考えてるの!!だって、そっちの方がワクワクしない?」

彼女は僕に笑顔を見せた。

まだ冬の寒さを残した春風がその瞬間、僕と彼女の間を通り過ぎた。

「な、なるほど……、ありがとうございます。元気出ました」

「そっか、あと、敬語は使わなくていいよ、私も同級生だし!!」

「そ、そうだったの!?」

「じゃあ、私は行くね」

彼女は歩き出した。

「ちょ、ちょっと待って!!名前!!最後に名前だけ教えて!!」

「私の名前は……」




という長い回想が終わって、今に至るという訳です。

正直、入学してからも、身だしなみには気をつけたし、同じクラスだったことも想定内、暗い印象を持たれないように自分なりに頑張ったし、それなりに仲良くなるためのイベントを通過してきたはずだし、文化祭も2人でまわった……。

我ながら完璧まであるこの攻略具合だと思う。

これで振られるなんて事……。

「気持ち伝えてくれてありがとうございます、……」

さあ、Yesとこれから始まる僕との青い春を待ちわびてましたと言って……。

「でも、ごめんなさいっ!!私好きな人いるのでっ!!」

は?

今なんて?

「ご、ごめん……、上手く聞き取れなかったからモウイッカイイッテモラッテモイイカナ?」

「だから、私、好きな人がいるので付き合う事は出来ません、ごめんなさい!!」

グハッ!

その言葉が、僕の心を粉砕どころか粉々になった後にさらに細かく潰された。

「ソ、ソッカ-。ジカントラセチャッテゴメンネ-」

「私の方こそ、気持ちに答えられなくてごめんなさい。じゃあ、行くね?」

「ウ、ウン。キヲツケテネ-」

彼女はそのまま颯爽と校舎の方へ走って行ってしまった。

彼女が見えなくなるまで彼女を見つめていた。

そして、彼女が角を曲がり見えなくなった瞬間、

「な、何が完璧な攻略だァァァっ!!」

僕は膝から崩れ落ち、地面を叩きながら叫んだ。

「僕のこの一年間の努力は、ここまでだったのか……」

そんな風に思うと、自然と涙が溢れてきた。

「ぢぐじょぉぉぉぉぉぉお!!」

僕の高校2年の始まりは最悪で始まるとこの時までは思っていた。








一通り泣き終わると、僕は立ち上がった。

「帰ろう、帰ってスマ〇ラに八つ当たりしよう……」

そして僕は、その場を後にした。

その後、その場所は告白に使うと振られるというジンクスが一年間ついたのは、僕のせいじゃないよな?

そんなもん知るかっ!!

リア充なんて、爆発してしまえっ!!

下駄箱で靴を履き替え、僕は教室に向かう。

何故なら、荷物を置きっぱなしにしていたからだ。

「膝、汚れちゃったな。帰って洗濯しないとな……」

多少汚しても、一人暮らしをしている僕は親に何も言われないから、助かる。

なぜひとり暮らしなのか、それは、親の教育方針である。

うちの親、特に父親は、中学卒業後に定時制の高校に入学し、昼間は働き夜は学校という生活を送っていた。

その為、自分の子供は中学を卒業すると一人暮らしをさせる教育をしているらしい。

うちの姉も嫌々だったが、一人暮らししていた。

実際一人暮らししてみると、以外にも自由がきくし、親の月イチで行う生活の確認をクリアすれば、決して苦な生活では無いのである。

その為、自分の料理スキルも、家事・掃除スキルも中々に上がっていくのだ。

「くそ、なんで僕が……」

教室で、僕の席に到着してすぐにその一言が出た。

本来であれば、年度始めのクラス替えなので、席は出席番号順で座るのだが、

「私のクラスでは、みんなに早く仲良くなってもらう為に、新学期一発目に席替えを行いますっ!!」

と言う教師の都合で、窓側二列目の後ろから3番目の場所になったのだが、隣に座っているのが、学年である意味有名な女の子、通称眠り姫だ。

席替え後、席につくなり即爆睡。

名前すら聞けてない……。

というか、もう放課後だぞ。

まだ寝てんのかよ……

この時、僕の心の中で

『脇腹つついて起こしちゃえよ〜』

『だめ、普通に起こしてあげようよ!』

という悪魔と天使からの囁きが聞こえた。

ふと、机に突っ伏した状態で寝ている彼女を見る。

軽くウェーブのかかった髪、寝苦しいのか、少し緩んだリボン、身体と机に挟まれた豊満な胸……、それら全てに背徳感が湧いてきてしまった。

「ちょっとくらいなら……」

悪い事だってことは分かっている。しかし、止めることが出来なかった。

「えいっ……」

イタズラ混じりの声で彼女の横腹を軽くつついた。

「ッわ!?もうタイムセールの時間!?あれ?ミンナイナイ……」

「もう、放課後ですよ〜。お寝坊さんか?」

「君は確か〜……、待って、覚えてる。もう少しででてくるから……、あ、春月くん!」

「残念ながら、季節が逆です。僕は秋月です」

「そっか〜、ごめんごめん。ちょっと間違えちゃったっ!!」

「てへへ」と頭に手を置きながら笑い返す。

「ところで、なんでさっきから私の方を見てくれないの?人と話す時は見つめあって恋に落ちないように目を逸らしてるの?」

ニヤニヤとしながら顔を近づけてくるが、僕はそこまでチョロくない!(はず)のだ。

「違いますっ!!その、言わないでおこうと思ったんですが、その……、ボタンが取れてて、目のやり場に困る……と言いますか……」

その瞬間「あっ」となった彼女は、服を整えた。

「ごめんごめん、寝起きでそこまで気が回らなかったわ〜w」

「女の子なんですから、ちゃんと気をつけないと、寝てる時になにかされても文句言えないですよ……」

「大丈夫大丈夫、私、これでも中学まで空手習ってたし、それに、黒帯だったんだよ〜」

「ソレハオソロシイ」

「でも、君なら襲ったりしないでしょ?」

「な、何を根拠に……」

「1つ目、君童貞でしょ?別に、年齢的には悪いとは言わないけど、卒業できるなら早めがいいよ〜」

「よ、余計なお世話だよっ!!」

「ナイスツッコミ〜、で、2つ目は君、今日玉砕しただろ?」

「ウグッ!!」

「実はお姉さん見てたんだよねー、ドヤ顔で告白して玉砕してるところ。あれはすごく滑稽だったね〜」

ハッハッハーと笑う。

「な、なんでみてるんですかっ!!」

「ごめんごめん、さすがに悪いかな〜って思ったけど、やっぱり私も乙女だからそういうの気になるの」

「……見てたとしてもほじくり返さないでくださいよ」

少し苦い気持ちが込み上げてきた。

「でも、脇腹をつつかれたのは不意打ちすぎて驚いたよ」

「まあ、完全なる不意打ちだったし、それに放課後なのにいつまでも残ってても学校の迷惑になると思ったので起こしました」

「君、根は真面目なんだね」

ニコッと笑う彼女。

空いている教室の窓から春風が通り過ぎる。

「ねぇ、私と付き合ってみる?」

「はあ!?何で?」

「きっと君は女の子の扱いがなってないんだよ。だから、今回振られたんじゃない?」

「ナ、ナルホド……」

「だから、私が女の子について教えてあげれば、君も百戦錬磨の恋の男になれるんじゃない?」

「ひ、百戦錬磨て……、でも、僕まだ君のこと何も知らないし……」

「これから好きになってくれたらいいよ、それに、今なら私が毎日メイド服で朝起こしに行ってあげるよ」

「マジですか!?」

「ここで嘘ついてどうなんのよw」

彼女はケラケラと笑う。

よく笑う子だな……。

「で、どうするの、付き合ってみる?」

「振られた直後で気の迷いかもしれないけど、僕でよければ、よろしくお願いしますっ!!」

こうして僕は隣の席の子と付き合うことになったのでした。

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