第7話 となりで

数日後、僕は母の匂いを嗅ぎながら後ろから抱き寄せてた。


「母ちゃん……」

「なに?」

「瑠花のとこ行くね」

「好きにしたら?」

「……行きたくない」


「私だって。誰にもあんたを渡したくない。でもね、いつかは渡さなきゃ行けない時が来るの。1人にしなきゃ行けない時も。わかるでしょ?」



「やだ。無理。」

「なんで?」

「いや…。母さん!!無理だよ!!」


僕が強引に僕の方を向かせてキスしようとすると、止められた。


「もうだめ。やめよ。瑠花の所に行って。」

「やりたい。母さんとしたい。」

「もうだめ。もうしない。」



「母さん!!」

「行って!!」


僕はすぐに瑠花に電話をかけた。


「瑠花!…」

「どうしたの?」

「……母さんに、母さんに捨てられた。」

「わかった。うちおいで。」



途中、電話が鳴った。


「涼太、いまどこ?」

「うーん。交差点。」


信号が変わる向かい側から瑠花が歩いてきて僕の手を引いた。



そして、信号を渡りきると僕を抱き寄せた。


「…瑠花。」

「大丈夫。あんたが嫌いでそうしたわけじゃない。」

「うん。」

「瑠花…」


「辛いよね。大丈夫、そばにいる。」


僕は僕より少し背の高い瑠花の首に鼻をつけた。


「瑠花の匂い…」

「あんたそれすんの久しぶりだね。」

「変わってない。」


「これするあんた好き。」

「匂い好き」

「あたしは?」

「好き。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る