ゆきおんな

DRy0

第1話


 雪女という妖怪がいる。

 雪女に関する伝承や物語は数多く存在するが、有名な話はこうだ。

 若い男が雪山で遭難し、雪女に助けられ、雪女に助けられたことを誰かに話したら殺すといわれる。その後、結婚した若い男は、妻にこの話をしてしまうが、実はその妻こそが雪女だった。話してはいけないことを話してしまった若い男は......


 雪女とは儚くも美しい存在である。そう信じていたものだ。


「差せ!!!差せ!!!!差せ!!!!!

 あーーーーー!!!!!!ふざけるなよ!!!!!!!」


 今、隣にいる女、いや、化生の類こそが、実は雪女なのである。

 ただ、違いとしては、雪女に助けられたのではなく、雪女を助けたことだ。

 

 会った瞬間、滑り落ちていく雪女に手を伸ばし、必死に持ち上げたあの瞬間。雪女に対する幻想は全て無くなったといっても過言ではない。

「決して離さないでください。」

 やかましいわ。


 そんな雪女ではあるが、自称、超現代的であり、実際かなり現代に精通している。

 やれ、現代社会では現金が必要だの、雪女でもつくれる口座が欲しいだの、彼女の欲望は尽きない。

 夏場になると、山での活動がしにくいのか、家に入り浸られている。

 何度か、放流してやろうかと思ったが、そう思うと隣でこういわれる。

「決して放さないでくださいね。」

 やかましいわ。

 ただ、この女、非常に顔が良い。顔がいい女が部屋にいると寿命が延びる。

 ただ、この女、夏場は遭難者がいなくて盗れる現金収入がないからと、金を得るために賭博を選んでいることがいただけない。

 夏競馬が好きなのか、新潟競馬場をせがまれた。


「このレースは外枠有利で、実績としても8枠が手堅い。

 ここは枠連8-8が板ですね。

 あぁ、これは話しても構いません。」

 

 やかましいわ。ここはいつものフォーマットじゃないんかい。

 そう言って彼女は馬券を買ったのだが、結果は見ての通りだ、

 彼女にこう言った。

「ハナ差じゃあないですね。」

「やかましいわ。」

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ゆきおんな DRy0 @Qwsend

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