第2話 前兆無キ計画

 柊慧学園で迎える初の定期テスト基期末テストは学年十二位という成績で終えそのことを舞乃さんに報告すれば褒められ秀輔さんに言えばシドニーからおめでとう。舞乃さんはいいとして秀輔さんはしょっちゅういろんなところに行っててむしろ不審に感じるところもある。そして俺は夏休みの前に夏季自宅学習期間を迎えたためルーク事務所で勉強していた。夏休みの宿題を俺は容易くこなしていた。ドアが開く。そこには誰でもない。


「あれぇ、お勉強教えようか。」


「舞乃さんかと思ったけどナルミさんすか。何の用ですか。」


「私服意外といいわね。まあ、お姉さんんもここを自習室だと思ってるので。お勉強をね。」


「そうすか。頑張ってくださいね。」


「なんか。私だけ態度変えてない。岳斗君。」


「そんなことないですけどね。意識はしてないんですが。」


 いや、意識は軽く、しているのかもしれない。それは分からない。それに定かでもない。だからはぐらかすしかない。


「なんで来たんすかナルミさんは。任務でも。」


「そういえば近江君がパソコンとかそういうの得意だって聞いて。プログラミングとか。舞乃からだけど。」


「そうですか。まあ得意に越したことはないすけど何すれば。ハッキングとかはやめてくださいね。できるかもだけれど。」


「今は求めてないよ。私のPCにウイルスが入ったらしくて。」


「そんなものですか。やるっすね。」


 ウイルスとかどうして入ってきたんだと思いつつ対処した。久しぶりながらも慣れているおかげかすぐに終わった。


「じゃあナルミさんまた今度。」


「これで終わりみたいに言わないでよ。私も宿題しに来たの。ここ集中できるから。」


「なるほど。なんだ。邪魔しないでくださいね。」


 そうさり気無くいい俺は目の前に集中していた。結構ページも進み猶更このテキストは終わりを示す総合テストというページの丸付けを終えやり直しを丁度終え持ってきていた本を読もうとしたタイミングで俺が活躍記念に佐々井さんからもらった小型PCの通知音が鳴る。


―――――――――天聖本部より計画実施。


 実は少しハッキングして天聖本部のちょっとした中身を分かるように指定た。これから一人でも対処するためにと。そしてそのファイルをクリックした。


―――――実施日:七月十八日より。任務依頼者:叶、シュベルツ。目的:魔術庁所属魔術師と思われる桜庭舞乃の魔術、十核立式<サザンクロス>没収。没収方法はシュベルツの魔術、眼式<異ノ鎖>。邪魔が入るかもしれないが叶で取り巻く。万が一の場合シュベルツは武具使用を認める。魔術の力を他に使うことも許可する。天聖本部聖律裁判所所属最高司令官ディアの判決に基づく。


 機密事項そう書かれていた。七月十八日は明後日。誰かに教えるのもありだから舞乃さん以外に伝えようと思う。そして場所は東京都八王子市内天聖本部直轄管理第五教会。地図もそこには記載されていた。そして実験名はチェインナイト。


 始まりの音を告げたのかもしれない。長き夜の。


 そう感じ取った俺はこの部屋にいる佐々井さんとナルミに伝える。二人は動揺を隠せていなかった。


「私は近江君と同行しそこへ向かう。」


「近江君のプログラミング技術は侮れないね。凄いぜ。申し訳ないがこの日の夜は千葉県内での捜査要請があってね。」


「大丈夫ですよ。レイさんもいますし。桂場さんも含めた四人で何とかしてみせますので。」


「そういえば近江君。舞乃はどうやってそこまでいくの。」


「どうやらそこまで虚偽任務を課しそこへ来いという感じらしいです。」


「なるほど把握。まあ頼んだよ近江君。桂場君はどうするつもりだい。」


「桂場さんにも言って手伝ってもらいますよ。」


「桂場協力するかな?ちょっと疑問だけど。でも意外とやりそうね。あいつなら。」


 桂場さんもいるしでなんとかなりそう。そう思い安心していた俺だった。


***


「俺さ緊張してきたわ。叶。」


「勝手にしなよシュベルツ。何かあっても足止めするし。」


「頼むよ。十核立式<サザンクロス>は夜に強くなり十字架のようなモノを現す。星を付与し付与されたものに対し攻撃が変化していく。十核立式だからこそだが強力だな。」


「気を緩めな。特別緊急時以外はあなたの身も保証するから。」


「ただの緊急時であれば大丈夫か。楽しみになってきたな。」


「そう?いつも通りよ。」


「オッケー。明後日の夜。宴とするか。」


「程々にしなさいね。」


「分かってるさ。ハハハ」


 俺、シュベルツそして叶は只敵を討つそして任務のことで頭がいっぱいであるが派手にやりたく楽しみすぎだぜ。


***


 一瞬不穏な空気を察知したが気のせいに違いない。でも覚悟が必要。そう俺は心の中で決めた。もしかしたら最悪の場合。これを考えなければいけない。昔よく誰かから聞いたものだと。そう感じて、いて。でも、こう思ってもしょうがない。だから俺はいつも通りいることにする。


 ナルミさんはもう既に桂場さんとレイさんに既に作戦やその計画についてはもう明かしており了承をもらっているらしい。実に仕事は早いなこういうばかりはと呆れつつも感心している自分がそこにはいた。


「舞乃さん」


 ちょうど帰ってきたようだ。


「そういえば明後日単独任務があるらしくて八王子のほうで。」


 俺とナルミさん、佐々井さんと視線を合わせともに頷く。


「全く珍しいなって。」


「そうっすよね。まあ頑張ってくださいス。」


 そうさり気無く言う。今の俺らにとってはこれが精一杯だった。


 その日を待つ。――――それはあまりにも辛かった。そう帰り道に思う。東久留米駅から家へ帰る道で。だんだん眠くなっていた。もう既に八時を回っており。さっきご飯を食べたせいもあってか。だろう。


『おい、眠んな』


 ギルティの声だった。


「寝てねーし。眠いだけだわ。それになんだよ。何でもないときに...」


『危機迫り。ここじゃあぶないからあの廃ビルに行きおびき寄せろ。地下もあるっぽいぞ。』


「りょーかい。」


 そういうことかと思うもののこう付け狙うなんて少し天聖本部らしくない―――。


 ギルティの言う通りその廃ビルへと行く。足音が響くようだ。そしてもう一つの足音が響く。


「レクイエム。貴様をつけ狙うのは少し申し訳ないが。」


「お前。天聖本部じゃないな。らしくない。」


「お前の洞察力は噂通りか。まあお前は面が多少割れてるから、自己紹介といこうか。」


 そういいその不穏な男は突如前触れなく現れ自己紹介を始める。違和感の塊。


「俺の所属組織はZETA。主に科学を主とした組織だ。科学武器サイバーを自ら生成しエージェントを雇う――――。そんな組織の二級エージェントだ。サイバー:ソード第三型を使用している。そしてなぜおまえを狙うか。それは生野東御司令からの直接任務だからだ。ようしゃはしない。そして俺はコードネーム:ラック。」


「そんなのも存在してるんだな。全く知らんし興味もないけどこの力ある以上やるしかないっぽいな。じゃあ―――。」


 そう言い俺はラックに向かい突進する。


罪過クライム<剣>」


 あの時の剣を使い戦う。あの時とは全く違う罪過クライムで行く。そう心に決めつつも。


「そっちもやる気ってことね。じゃあ行くか。――――スタイル<B>。」


 そう言い剣は変わる。とりあず目の前に集中しないといけない。


「ちょっと動きがついてきてなくなくない?なめちょんかね」


「おしゃべりさんだな。あんたは。」


 どこ出身の人かわからないが落ち着いて挑むことが大切なのかもしれない。既視感と違和感を抱きながらも――――。でも大丈夫そんなどこから来たか分からないような感情に振り回されずに。積極的に。


「やるんだ。」


「急にやる気になっちゃって。まあいいけどね。」


 右手に目をやる。薄っすらながらも烙印みたいなのが......気のせいに違いない。剣を只振る。これじゃだめだ防戦一方になってしまうし。攻撃になってもあっちは適応する。要は適応できない―――。罪過クライムの使い方がカギを握ってるのか。


罪過クライム<裂>」


 剣に反応させるこれならいける。そして裏をかく。―――これが今の精一杯というならば。屈することなんてない。


「判断は正しい。だがお前は俺を甘く見すぎている。いやこの技術を。」


 そう呟いて予測できない。いや、予測させない。そう詰め寄る。


罪過クライム<球>」


 剣で戦うことを辞め禍々しく黒に包まれた裁く力で構成されるスフィアで戦う。『戦え、これで』そうギルティから告げられれば。やるしかない。自由自在に操れるで。


「なんだよ。それ。少しでも楽しませろよな。ハハハハハ。」


 不気味に笑い本気モード、そう察せざるを得ない。だからこそ......


「オリャー!!!!」


 俺はスフィアから一つの黒い線を出す。禍々しく。―――いくしかない。これが今できる選択なのだから。その瞬間やつのソードの僅か横を通過し奴の頬を霞めた。これなら予測不能。そういうことだ。―――いや、そのはずだ。


「予想外の一手。上出来じゃねーか。」


 若干笑いつつも舌を出す、強者感を出す奴もきっと侮れないに違いない、だろう。だからこその決断。これだけでは決まらない。


「うぐっ...」


 奴はそう言い壁へと衝突する。スフィアから出た黒い線は直接あたらず反射し奴の背に不意打ちをする。走りながらこれをやるのは正直脳内的に若干乱れてキツイ。だけれどもだ。そんなところではとまっていられない。―――俺の決意と俺の変化それにふさわしい。


「それを壊せそうにはねえからお前を叩き割る。」


「そうはさせねーよ。」


「それにしてもずっと走ってちょこまかちょこまか放って。姑息...いやずいぶん弱kに...うぐぁっ。」


「隙だらけなんだよ。隙作んな。つまらねー。」


 つい出たひと言。これは余計―――などではなく。本気にさせる。


 剣先を向けただただ走るだけじゃなくさっきとは別人の動きを見せた。俺の攻撃をよける。遂に、本気を出したのだろう。そう確信させる一撃を奴は繰り出す。それはあまりにも衝撃的で、剣先はわずかに当たっていても勢いを纏わせたそれの力だろうか。


「おいおい、俺の本気マジに追いついてくれよ。そうしてよお。」


「くそっ......」


 あっという間にこんな展開になるなんて。そう思いつぶやいてしまう。だけれども立ち上がるんだ。俺の使命に違いないのなら防戦一方でもいいさ。


「お前の反撃なんて通用しねぇよ。スタイル<A>これで完膚なきまで。」


 漂う張りつめた絶望の空気感。奴の空気。流れは絶対に。―――それでも。


「今を絶好のチャンスにしてくれてありがとう。  。絶望がスフィアを強くする。」


――――――そうならば。今が絶対チャンスだ。反撃の時間といこうか。

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