第89話 修羅場?
人に服を着せるのは難しい。
一応辛うじてミネアに服を着せたが、整えてはいないので服が乱れている。
泣きじゃくってしまいオロオロしながらロイはミネアの服を直そうとしていた。ミネアはされるがまま、もしこのまま押し倒されても謝罪として受け入れんとしており、今これを見たらロイがミネアの服を脱がせているように見えなくもない。
その時、ソニア、ミランダ、そしてエリナがロイが寝かされているミネアの部屋のドアを開けた瞬間、この場の空気が一変した。
彼女たちの足音が廊下を響き渡り、扉の外から話し声が漏れ聞こえていたのだが、ロイは気がつかなかった。
ドアがノックされたことさえ聞こえておらず、必死だった。
ドアを開けた瞬間、3人が見た光景は、ロイが泣いているミネアをベッドに座らせ、愛し合うか、犯そうと服を脱がしに掛かっているとしか思えない姿。
それを見たエリナは泣きながら部屋に入ってきた。
彼女の涙は、純粋な心がこの複雑な状況に圧倒され、感情が抑えきれずに溢れ出していることを物語っていた。
一方ミランダはこの展開を面白そうに見守っている様子で、彼女独特の冷静さと距離を置いており、物事を俯瞰で見る能力を持っていることが伺えた。
そしてソニアは、安堵の息をついている。彼女にとって、ロイが無事であることが何よりも優先されているようだった。
ソニアは妾で良いとさえ思っており、貴族は複数の妻を娶ったり、妾を持つものと思い込んでいた。
この三人の異なる反応は、それぞれが持つ性格や立場を如実に表しており、その複雑さがこの状況の緊張感を一層高めていた。
さらにこの場にいるミネアはこの状況を見て、ロイが自分以外の女性と親密になっているのだという現実に直面した。
彼女は自己犠牲の精神というか、先ほど告げたことを3人にも告げることにした。
「私は正妻になる資格はありません。許されるなら最下位の妻でも、駄目なら妾でも良いので、罪滅ぼしと街を救ったお礼のためにロイ様のお側にいさせて欲しいのです。決して皆さんのロイ様を奪ったり独占するつもりはないのです」
そのように懇願した。彼女のこの切実な言葉は、既に緊張感に満ちていた空間に、さらなる修羅場を引き起こそうとしていた。
ミネアは3人に国中の領主のみが知る予知について話し、ソニアに抱き締められ再び涙が頬を伝う。
しかしロイはだんだん事態が不味い方向に向かっていると理解し、その場の緊張を和らげるように冷静に対応した・・・つもりだった。
「ミ、ミネア、まだ魔法学園に1年半通うんだろう?」
そう問いかけた。
「再び通っても良いのでしょうか?求められましたらロイ様のお世話役を・・・」
「魔法学園にもどり、まずはちゃんと卒業しよう! 話はその後、まだ俺のことを好きだと思ってくれるならそのときに考えよう。今は俺もヴィーナスラヴェールの販売を軌道に乗せたりと、やらなければならないことが山積みだから」
そう提案し、問題を先送りにすることで緊急を要する問題から注意を逸らし、未来に向けてより良い解決策を見出す時間を確保したつもりだった。
ソニアが何やら耳打ちしたが、ミネアが同意したのでロイはホッとした。
「ロイはやはりロイだな。アタイのことどう思っているんだい?」
にたあぁっと悪い笑みを浮かべ、ミランダは意味深なことを呟く。
「ロイ様・・・私のことを少しは見て欲しい・・・」
エリナも呟くが、火消しに必死なロイの顔を見て少し安堵した。
いつも頼れるリーダーも、女には弱いのだと。
この提案は、当事者たちにとっては一時的な解決に過ぎなかったかもしれない。しかし、それぞれが自分自身と向き合い、何が本当に大切なのかを深く考える機会を与えた。そして、この複雑な感情の渦の中でも、彼らは互いに理解と支え合いの精神を育むことができたのである。
この経験は彼らにとって、今後の関係を築く上で重要な礎となるだろう。
ロイからすれば、一年半もあれば色々状況に変化もあるだろうし、何より今この場の空気が重すぎたのだ。
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