第75話 終息

 ロイの前に来るとミランダは慌てて声を出した。


「奴ら、性懲りもなくまた壁に火をつけやがったぜ!」


 レーナはミランダのその汚い言葉使いにジト目を向けるが、ロイはほくそ笑んだ。


「引っ掛かったのか?」


「ロイ様の予測通りだぜ!今、レーナ様の護衛の方々が捕らえているんだぜ!なんとかいう騎士がお嬢様と奥様を守れって言ってたぞ!」 


「まあ、僕らに出番は回ってこないだろうけど、また馬鹿なタイミングでやらかしたな」


「どういうことですか?」


「サイラー商店ですよ。店を燃やしたのもね。多分貴女を狙ったわけではないですよ」


 レーナが首を傾げていると、ベリーズが入ってきた。


「ロイ殿、やはりサイラー商店の手の者です。今尋問官が誰の命か吐かせたところです」


「愚かな。私たちがこの店に来るであろうことは、子供でも分かるというのに。お母様、サイラー商店は潰しても良いですわよね?」


「ええ。例え偶々妾がここにいたのだとしても、もう終わりね。ほどほどにしなさい」


「貴女、お母様を守りなさい。ロイさんは私を守りなさい」


 そいうと、店の外にずがずがと向かっていき、続々と集まる騎士やその配下の兵士に頷く。


「首謀者は間違いないのかえ?」


「はっ!騎士セダリック殿直々に確かめ、サイラー商店の仕業だと判明致しました」


「宜しい。私の護衛以外向かいなさい。私の大事な時間を潰した罪は大きくてよ!」


 レイナがそう宣言すると、騎士たちはサイラー商店へ向かっていった。


 店の周りにいた者はあ然となっていたが、レーナはにこりと微笑むと、ロイに告げた。


「もう大丈夫でしょう。ロイさん、皆さんを落ち着かせてくださいな。私は見たいものを見れましたので、そろそろお暇しますわ。ご機嫌よう」


 そうして護衛のところに行き、近くに停めている馬車に母親共々乗り込んだ。


 ロイはその様子にため息をつきつつ、声を張り上げた。


「レーナ様、奥様、お気をつけて。ありがとうございました」


 ロイは見送り、彼女の護衛たちがサイラー商店、つまり首謀者を捕らえることで一件落着するのは時間の問題だと確信し、今はリックガント商店の混乱を静めないと駄目だよなと、またもやため息をつく。


 店の周りにいた人々は驚きと安堵の表情を浮かべていた。サイラー商店の事件は、彼女たちにとっても大きな出来事であり、騎士たちの迅速な対応に感謝していることだろう。


 ロイは集まった人々に声をかける。  

 

「皆さん、ご心配おかけしましたが、事態は収束しました。どうか落ち着いてください」


 そして、レーナの馬車が立ち去るのを見送りながら、ロイは心の中で思う。彼女は見たいものを見たと言っていたが、それが一体何だったのかな?

 ロイには分からなかった。


『さて、これからどうするかな?』


 ロイは自問自答しながら、人々を落ち着かせるために声を張り上げる。


「皆さん、お店の営業を再開します。どうぞご利用ください!切り身を振る舞わせていただきます」


 こうして、アルディスの町は一時の騒動を乗り越え、日常が戻っていくのでした!ちゃんちゃん!とはいかないのが世の常・・・

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