外れギフト魔石抜き取りの奇跡！〜スライムからの黄金ルート！婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

第53話 男の涙とレポート

　夕暮れの町は、その日の冒険で疲れた者たちの足音で賑わっていた。ロイ、ソニア、そしてリラは今日のパワーレベリングを予定より早く終え、ギルドへと足を運んだ。彼らの歩みは、まるで戦いの余韻を引きずるかのように重かった。

　特に慣れないことにリラの疲労が厳しく、帰り道の途中からロイが背負ったほどだ。

　ギルドの解体場では、素材の換金手続きと魔石の納入が行われていた。ロイはそこに残り、解体場での仕事を手伝った。一方、リラとソニアは討伐依頼の達成手続きを進めていた。リラの姿に周囲の者たちは驚きの声を上げていた。

「リラたん！」

「リラさん、その格好は？」

「リラさんが武器を持ってるぞ？何があったの？」

　リラの取り巻きたちが声をかけるが、リラはただ笑顔で手を振るのみで、事務スペースへと急いだ。

　彼らの心はその笑顔で癒されるも、姿が見えなくなると彼女の勇敢な姿について話し合った。

　ロイは解体場のスタッフから頼まれた魔石抜き取りを終えると、昨日のスライムの魔石を中心に、魔石の合成に取り掛かった。

「おい、ロイがまた何かやってるぞ」

　仲の良い解体場のスタッフ２名が興味深げに覗き込んだ。

「ええ、僕の加護、魔石操作で魔石同士を合成できないか実験しているんです」

　ロイは答えると、魔石を握っている手に意識を集中する。

「魔石融合」

【（注）:魔石合成も魔石融合等の言葉がなくても、魔石を合成すると念じるだけで良い】

　その掛け声と共に魔石から光が溢れ、熱を帯る。熱さから取り落とすも、一回り大きな魔石が現れた。

　指先でちょんちょんと突くも熱が取れ、手に取る。

　魔石からは元の魔石より強い力を感じ取れた。

「成功したぞ！」

　ロイが叫ぶと良く分からないながらも、２人も一緒にその成果に歓喜した。

　しかし、次の試みでは魔石は反応せず、合成は行われなかった。　

「まあこんなものか」

　ロイはその結果に頷きつつ呟いた。

　ロイが実験を続けるも【注】、２人は頑張れよと声をかけると仕事に戻る。

　一通り予定していた実験を終えると、ロイは査定票を受け取ってリラに渡した。

　その日、三人で早めの夕食を済ませると、ロイはリラを自宅まで送ることにした。

「リラ、一人で帰るのは危険だから僕たちが送るよ」

　ロイが送るよと言うと、リラは感謝の意を示した。

　そして、リラは何故かリックガント魔法道具店に向かった。

　店内にいたリックガントとの「ただいま」と「お帰り」の交わりから、ロイはリラとリックガントが親子であることを知り、大いに驚いた。

　そこにベリーズ、エリナ、ミランダが現れ、ロイは混乱した。

　彼らはベリーズの素材集めが完了しておらず、残りの素材集めの為に今日だけ別行動をしていた。

　ベリーズはソニアにしか伝えておらず、誰もそのことをロイに伝えていなかったことが明らかになった。

　去っていったと思った３人が、実は自分のことを見限ったのではないと知り、ロイは涙を流し、皆は動揺した。

「アタイがロイ様のところを去るわけないじゃん！ロイ様に捨てられなきゃ一生付いてくって決めたんだぜ！」

「そうですよ。私も、ご迷惑でなければ、臨時加入を正式な加入にして欲しいのです！何でもしますからお側にいさせてください！」

　ミランダが力強く言い、エリナも加入の願いを述べた。

　そしてエリナはロイを抱きしめ、彼の涙を隠した。

　ソニアも抱きつき、ロイの嗚咽はしばし続いた。

　彼らは互いに支え合い、未知の世界へと一歩を踏み出していく。明日への希望を胸に、新たな冒険が始まるのだった。

　**注**：以下に示すのは、ロイがギルドマスターに提出する魔石合成実験のレポート。物語の中で触れられた実験の詳細と、他の実験結果が含まれている。

　**ギルドマスター様へのレポート**：

　本日行われた魔石合成実験に関するレポートを提出いたします。

　- スライムの魔石2個を合成した際、火傷をするほどの発熱を伴い、数秒間光り輝いた後、一回り大きな魔石に変化しました。魔力量の増加が感じ取れたため、これは成功したと考えられます。

　- スライムの魔石3個にて合成を試みた際、元の大きさの魔石が1つと、合成された魔石が1つ残りました。これは部分的な成功です。

　- スライムの魔石4個を合成を試みるも、合成された魔石が1つ、反応しなかった魔石が2個残りました。５個の魔石で試みても合成された魔石が1つ、反応しなかった魔石が３個残りました。この結果から、一回の合成で、魔石２個の合成しか行われないと推測されます。

　- 同種の魔石（ゴブリン同士、オーク同士）を合成した際、合成された魔石が得られました。これは成功です。

　- 異なる種族の魔石（ゴブリンとオーク、またはスライム）を合成しようとした際、何の反応もありませんでした。失敗した魔石を使って同種の魔石との合成を試みたところ成功したため、異なる種族同士での合成は何も起こらないと推測されます。

　- 合成に成功した魔石の再合成について、以下の組み合わせで検証を行いましたが、結果として何も起こりませんでした。

　- 合成後の魔石プラス合成後の魔石

　- 合成後の魔石と未合成の魔石

　- 合成後の魔石プラス別種族の魔石

　- 合成後の魔石プラス合成後の別種族の魔石

　今回の合成実験の結果から、同種の魔石間では一定の成功率があることが確認できました。特に、スライムの魔石は比較的合成が容易であることが示されています。一方で、異なる種族の魔石間での合成は困難であることが明らかになりました。これは、魔石の内在する魔力の相性や、種族固有の魔法的特性が影響している可能性が考えられます。

　今後の実験では、異なる種族の魔石合成に成功するための条件を探ること、また、合成に成功した魔石の魔力の質と量を測定することを提案いたします。これにより、魔石の更なる活用法を見出し、ギルドの冒険者たちの力となることを目指します。

　考察として、術者のレベルが上がると、今回の実験で失敗した項目も成功する可能性があると思われます。

　以上、ご報告申し上げます。

　ロイ