第11話 ギルドマスターへの報告

 ロイのお腹が鳴り、ハッとなり二人は離れるも、ソニアはロイの服がボロボロなことに今更ながら気がついた。


 金貨10枚もする手持ちの中級回復ポーションを使い、怪我は完全に治っていた。

 村を出る時に母親から持たされ、万が一の為に取っておいたなけなしのポーションだった。


「ロ、ロイ、その格好・・・大丈夫なの?」


「ああ。持っていたなけなしの回復ポーションで全快したよ!」


 ロイはソニアにポーションで怪我は治っていると告げたが、ここに来て自分が臭いことに気が付いた。


 安堵からソニアが泣いてしまったので、オロオロしてしまう。


「ごめんソニア。こんな格好だし臭いし、まず体を洗うから、悪いけど着替えを解体場に持ってきてくれないかな?」


 そう告げると、逃げるように手っ取り早く臭いを落とす為にと、解体場の水浴び場に行く。


「ロイ臭いぞ!」「ソニアちゃんに嫌われるぞ!ほら来いよ!洗ってやるから!」


 このような感じで、解体場の職員に臭いぞとからかわれながら水をかけられ、更にデッキブラシで洗われた。急いで着替えを持って来たソニアが見たのは、痛いよと唸り、裸で洗われているロイだ。ソニアに裸を見られるのは恥ずかしかったが、臭いよりはマシだと半ば諦めのロイ。

 しかし・・・見られている時に興奮したのはナイショ・・・と言いたいところだが・・・


「何だよロイ、お前さん何ソニアちゃんに見られて興奮してんだよって、てめぇ俺よりでかいじゃないか!どうなってやがる!」


 などと言われる始末である。

 そしてそんなやり取りと、見てしまったため真っ赤になっているソニアから渡された服に袖を通す。

 何を見られたんだか・・・


 ここ解体場は皆、仕事が終わる時にはこうやって臭いを落としている。

 なんだかんだとここの人は親切だ。

 からかっては来るが、何があったのか聞かずに、ただただ無事なことを祝ってくれる。


 皆に洗われながら解体場長のガレスに言われたのは、クイーンの死体だけでも持って帰るとかなりの額だぞと言われる。

 もし行くならゴブリンの討伐証明部位もあると、それも金になるからなと言われる。

 するとソニアがロイに向き直る。


「私行くよ!荷物を持つしか能がないけど、ロイの役に立てるなら!」


「いいのかい?危ないかもだよ?」


「でもロイはそこから無事に帰ってきたし、もう倒したんでしょ?」


「危険はゼロじゃないけど、確かに群れは倒したよ。じゃあ一緒に行くとするか!」


 ソニアが一緒に行くと言うので、ソニア自身の準備をお願いし、ロイはギルドマスターのところに報告に向かった。


 ロイのカバンにはゴブリンの魔石が煌めいていたが、討伐証明部位はない。


 ソニアの心配を背中に感じながらも、彼の足取りは確かなものだった。

 ギルドマスターの元に到着したロイは、見るからにあきれた表情をされたが、ギルドマスターはねぎらいの言葉をかける。


「ご苦労さん。改めて無事で何よりだ。ずいぶんマシになったな。同居人に嫌われなかったか?」


「あっ、はい。大丈夫です。心配かけましたがこれからクイーンの回収に一緒に行くと言ってくれましたから!」


 安堵の言葉を口にしたロイに頷くと、ギルドマスターは本題に入った。


「お前さん戦闘系のギフトは持っていなかったよな?確か騎士の倅だから多少は剣を使えるのだろうが、ゴブリンはともかく、どうやってクイーンを倒した?」


 先ほど概要を聞いたが、臭いので後で来いとしたので、詳細が分からなかったのだ。


 ロイはどうやって生き延びたかを報告した。そのままを伝えるのはどうかと考えたが、嘘をついてもバレると開き直った。


「ギルドマスター、少々信じがたいかもしれませんが、私が経験した真実をお話しします。乗り合い馬車が襲われた時に剣を手にゴブリン二体を討ち果たしたものの、わずか30分で敵に囲まれてしまいました。恐れ入りますが次のことはどうか、他言無用としてお聞き取りください。メスのゴブリンに組み伏せられた際、思わず「魔石抜き取りができたら」と呟いたところ、不思議なことに魔石が手元に現れ、そのゴブリンを倒すことができたのです。これまで生きた獲物から魔石を抜くことは叶いませんでしたが、その後もゴブリン相手に「魔石抜き取り」と発する度に、魔石を抜き取り、怪我をしながらもゴブリン10体以上を倒し、何とか生き延びることができました。」


「にわかには信じられんが、お前のギフトか加護が進化したとしか思えんな。加護は魔石操作だったな?死体からしか抜き取れないと加護全集にあるが、まあ進化したとしか思えない話はなくもない。だが、あまり口外しない方が良いが、冒険者をやるなら隠せないだろうがな。それとクイーンの死体は是非見せてくれ。今から回収に行くのだろ?ならばギルドの馬車を使うと良い」


「あ、ありがとうございます!」 


 ギルドマスターは『こいつに馬車を貸してやれ!』となぐり書きにした木札をロイに投げて寄越し、用は済んだと追い出した。


 そうしてギルドマスターの執務室を後にしたロイは、解体場にてソニアと合流した。

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