転生男装王女の死後【6100PV感謝】
風宮 翠霞
第1話 私の死
(私の努力、無駄になったなあ)
私は、眠る様に死んでいる自分の顔をぼんやりと眺める。
顔が蒼白いのは、死んだからだろうか?
(まさか、妹に毒を盛られるとは)
ずっと、悪意から守って来た妹。信じてたし、信じてもらえてると思っていた。
(多分、王妃とかそこらに唆されたんだろうけど、ほっといたら勝手に死んだのに)
私の余命は、持病や、子供の時から何度も盛られた毒によって、既にあと三年にまで縮まっていたのだから。
(みんなは上手く逃げれたかなあ?帝国まで頑張ってくれたら、あとは“彼”がなんとかしてくれるだろうけど)
ずっと、冷遇されていた私についてくれていた側近のみんな。私と共に冤罪をかけられてしまった。
どうか、“彼”の元まで逃げ切ってくれることを祈るばかりだ。
“彼”には本当に感謝しかない。
(迷惑をかけちゃう事だけは、謝りたかったなあ)
今となっては、叶わぬ事だが。
「全く、何をしてるんだ。二重三重に策を練らないからそんな事になるんだ」
とか、ぶつぶつ言いながらも手伝ってくれている“彼”が目に浮かぶ。
(好き、だったのかなあ?わかんないや)
願わくば、いつまでも笑い合える関係でありたいとは思ったが。
(多分、恋じゃなくて友愛だったんだろうと思うなあ)
まあ、今となってはどちらでもいいとは思う。もう、全てが遅いのだから。
『やあ、クリスティーナ。いや、来栖の方がいい?』
ぼんやりと座って考えている私の横に、流れるような銀髪と、吸い込まれそうな水色の瞳を持つ男が現れ、私と同じように座る。
(どっちでもいいよ。両方“私”の事だからね。……それにしても迎えが遅いよ、待ちくたびれた)
彼は私の待ち人だ。迎えに来ると、そう言っていたから私も待っていたのに。
『ごめんね。君が気にしてる結果が出るのを待ってたんだ。』
(そう、みんなは無事?)
『ああ。ちゃんと帝国まで逃げたよ』
(なら、よかった。もう一度死んだ甲斐があるわ)
『……本当に、ごめんね。君にばかり、辛い思いをさせて』
いつもの飄々とした笑みの中に、苦さが含まれているのがわかった。彼には彼の苦悩があったのだろう。この世界の管理を任される、彼なりの。
(今更じゃない。それに、貴方の提案を受け入れたのは他ならぬ私なんだから、私が恨むなら貴方じゃなくて過去の私だわ。それに、私は完璧には出来なかったから。ごめんなさい)
『いいんだよ、君は約束を守った。僕も約束を守ろう。……それとは別に、何か僕に頼みたいことはある?』
(……一つだけ、お願いしても良いかしら?––––)
私は一つ、彼にしか出来ないであろうお願いを託した。それは私の、心残りだったから。
『わかった、あとは僕らに任せてよ。それじゃ、君はしばらく、ゆっくりお休み』
いつになく優しげに微笑んだ彼がそう言った途端、私は心地よい眠気に誘われて、ゆっくりと目を閉じた。
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