第56話
メンテナンス時間となり、プレイヤーは全員自動でログアウトされる。
俺もギリギリまでレベル上げをしていたので、レベルは45に上がり、次の街にも無事到着した。
メンテナンスが明けた後は、第三の街を散歩するところからだな。
ネットなどの情報を分身に見てもらっていたのだが、どうやら俺への意見は賛否両論のようだな。
『アサシンブレイク』に大ダメージを与えたことは評価されている一方、さすがに、強すぎたせいでチーターという疑いも出てしまっているようだ。
俺の配信での戦闘動画はかなり切り抜かれて、どの動画も視聴数がかなりあるんだよな。
ま、切り抜いて編集したのは俺の分身だけど。
別チャンネルを用意し、切り抜きによる収益も稼ぐようにしているのだ。
あと、ルルラだけを切り抜くチャンネルもな。こうなってくると、もっとパソコンが欲しくなってくるぜ。
今はノートパソコンとデスクトップパソコンの二つしかないんだよな。
俺が持っているノートパソコンはちょっと編集作業するにはスペックが微妙なんだよなぁ。
いやまあ、どっちもハイスペックのものを持っているだけでも、高校生の俺からすれば十分なんだけど。
これまで、お小遣いを貯めてはパソコンを作るためにしか使っていなかったオタクだったからな……。
チーター疑いに関しては、なんか暴露系の配信者が適当なことを言っているものがあった。案外、それの信者なのかファンなのか、自分にとって都合のいいことを信じたい人たちなのかは分からないが、とにかくそういう人たちが賛同してんだよな。
で、その人たちがちょっと過剰なことをTwotterとかで発言するものだから、俺のところにアンチとなって凸をしてくる。
ただ騒ぎたいだけのやつもいれば、本気で疑って言ってくるやつも出てくる。
そこには、嫉妬とかもあるんだろうな。
勢いだけで一気に登録者数があっ、十万人突破した……んだからな。
かなりの勢いで登録者数が増えているので、これなら明日には十五万人くらいいってるかもしれないな。
ま、アンチがいくら出てきても、俺がチーターかどうかは公式が一番よくわかってるだろう。
メンテナンスが始まってしまったので、やることがなくなった俺は寝る準備をするため部屋を出る。
ちょうど、同じようにゲームと配信を終了した舞が部屋から出てきた。
「兄貴っ」
声音が嬉しそうだ。その姿を見られるだけで俺は……幸せだ。
「『アサシンブレイク』との決闘? すごかったよ!」
「ふふん、お兄ちゃん頑張ったからな!」
「焔ちゃんたちも、皆釘付けで皆で見てたんだよ。もう途中から、兄貴の配信実況みたいになっちゃってたよー」
「そんなことして大丈夫なのか? 結構、男性との関わりとか厳しい事務所みたいじゃないか」
「大丈夫大丈夫。もうひょっとこ兄貴はスポンサーみたいになってるからね」
それは……いいことなのか?
まあ、舞が喜んでくれてるからいっか。
「メンテナンス、結構長いよね」
「だな。今日はゆっくり眠るのか?」
「……い、いつもだよ!」
わりと夜遅くまでゲームをしているのは知っているんだけど、それを指摘することはしない。
なぜなら、舞が必死に隠そうとしているのが可愛いからだ。
「そうだ! 兄貴! 明日っていうか、今日は暇?」
「メンテナンスが終わるまでは……暇だな」
こっちにきてから分身たちが時間のある時にコミックなりラノベなりを読んでいるので、だいたい俺がいなかった間の分は読破済みだ。
新作を漁り始めてもいいのだけど、その時間のことを人は暇というのだろう。
「それなら、ちょっと遊びに行こうよ! あたしの配信もメンテナンス終わるまでやらない予定だしね」
「おう……! 絶対行く!」
「それじゃ、約束だね!」
舞が嬉しそうに頷いて、小指を出してきた。
指切りをすると少し冷たかった舞の小指に触れる。
嬉しそうに笑う彼女に、俺も……笑顔を返す。
こうして、笑っている彼女を見られて良かった。
異世界での生活は最悪だった。……ただ、今舞が心から笑えているのは俺が力をつけたからでもあるだろう。
あのまま、異世界転移の経験がなければ、俺はヤンキーたちにボコられ、引き篭もる……までは行かなくても舞に負い目を感じさせてしまっていただろう。
ただ、今の俺は誰にも負けない力を手に入れた。
これから、何があろうとも舞の笑顔を守ることができるはずだ。
……ま、そういう意味では、女神にも感謝してやってもいいのかもしれないな。
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新作書きましたので読んで頂けると嬉しいです。
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帰還した元勇者はVRMMOで無双する。〜目指すはVTuber義妹を推して推しまくる生活~ 木嶋隆太 @nakajinn
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