第45話


 そんなことを考えながら、俺はアンタレスの街近くで情報を集めていた。


 掲示板に、『アサシンブレイク』の目撃情報はいくらでもある。

 こちらで、最新の目撃情報を確認し、奴らを狩っていく。

 ……お、ちょうど近くにいるみたいだな。

 すぐにそちらへと移動すると、冒険者を追っている男女のパーティーを見つけた。


 必死に逃げている初心者をいたぶるように追いかけているな。


 逃げているプレイヤーたちは、まだゲームを始めたばかりなんだろう。

 装備品はチュートリアルを終えたばかりのものであるため、あれは確かにターゲットにされるな。


「そろそろ、仕留めるかぁ?」


 弓を構え、嬉しそうな声をあげる男の喉を――俺は背後からかっさばいた。

 グロテスクな表現はなく、クリティカルで処理され、弓使いは死ぬ。


「な!? てめ、ひょっとこ兄貴か!」

「すぐに仲間をよべ! ターゲットが出たぞ!」


 三人が武器を構えながら、俺を見る。

 逃げていた冒険者たちが足をとめ、驚いたように俺を見てくる。


「さっさと逃げな」

「は、はい! ありがとうございます!」


 ここで残られても面倒だ。

 『アサシンブレイク』も追うつもりはないようだ。

 俺の前に立つ三人は、笑みを浮かべる。


「ひょっとこ兄貴……おまえ今、うちで賞金かけられてるの知ってるか?」

「知らん。興味もない」

「おまえを倒せば、三十万ゴールドと好きな装備がもらえるのさ!」

「それ俺が自首したら俺にくれるとかないのか?」

「あるわけねぇだろ!」


 大剣を持った男が叫びながら地面を蹴ると、残っていた二人も動き出す。


「知ってるか!? 対人戦にはレベル差なんてあってないようなものなんだよ!」

「その弱点丸出しの首をはねてやるわよ!」


 そう言って俺に向かって大剣を振り下ろしてくる男。

 そんなものが当たるわけがないだろう。俺がかわそうとすると、脇から女性が飛びかかってくる。

 こいつも短剣使いか。

 振り抜かれた一撃をかわしながら、目を切り裂いた。


 大剣を思い切り振ってきたが、短剣で撫でるように軌道を逸らすと、突っ込んできていた男に当たりそうになる。


「クソ! 【パワーストライク】!」


 大剣使いがスキルを発動すると、体が勝手に動き出し、無理やりに俺の方へ大剣を振り抜いてくる。

 スキルによって、無理やりに俺をターゲットにして軌道を逸らしたのか。

 そういう使い方もできるんだなぁ。


 俺に向かって振り下ろされた一撃だったが、それはもちろんかわさせてもらう。

 【パリィ】で弾ける技かどうかは、ちょっと分からないくらいの重圧だったからな。


 スキル発動後の硬直時間があるのだろう。隙だらけのその首元へと短剣を振り抜こうとすると、槍を持っていた男が突っ込んできた。

 槍、ね。ただの突撃攻撃なので、俺はそれを左手の短剣で先を逸らし、そのままカウンターで首を切る。


「さっきから……首を切るのに躊躇いなさすぎないか!?」

「手っ取り早いからな」


 だって、数百の魔族と戦ったこともあるんだぞ? 一体一体丁寧に仕留めてたら時間がかかって仕方ないもん。

 さっと、右の短剣でまだ動けていない大剣使いの首を切りつけたところで、こちらに矢が飛んできた。

 短剣で弾く。さらに連続で矢が放たれるが、すべて見切って弾く。

 遅れて、火魔法が飛んでくる。リアルなら魔法も魔力をまとった短剣で切れるのだが、今のところそういうスキルはないんだよな。

 仕方なく攻撃をかわすと、目の赤い集団が十人ほど現れた。


 さっき、彼が言っていた援軍だろう。


「いたぞ! ひょっとこ兄貴だ!」


 皆、やる気満々なようで。

 血気盛んなのはいいことだが、やる気だけじゃな。


 弓と魔法による援護を受けながら、六人の前衛が突っ込んでくる。

 六人がお互いの隙を潰すようにしながら攻撃を加えてくる。

 思っていたよりも連携はしっかりしているな。


 ただ、二つのチームが合同して攻めてきている感じか。

 恐らく、五人五人のパーティーが俺の目撃情報をうけて駆けつけたんだろう。

 なので……そこを突けば、連携が乱れ始める。


「あだ!?」

「ちょっと!?」


 お互いのパーティーが入れ替わり立ち替わりになるように俺が動いていくと、案の定、ぶつかった。

 そもそも、一人の人間に対して、六人というのは数が多いのだ。

 弓と魔法だって、俺に接近するまでは援護できていたが、今はそれらもうちあぐねている状況だ。


「はい、さいならー」


 ぶつかって隙を作ってしまった二人に短剣を振り抜くと、すぐにそれを助けるように背後から剣を振り下ろしてくる。

 俺がそれをかわすと、女性の肩に剣がめりこみ、大ダメージ。

 

「……ちゃんとしないと、同士討ちが増えちゃうぞ?」


 剣を振ってきた男と、別の男の喉を切り裂いた。

 女性は慌てて後退しながら、ポーションで回復を始める。

 それを守るようにもう一人が後退するので、必然的に俺に対応できる人数が三人になる。




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