第37話
「え? 助けてもらって武器までもらうなんて悪いよ!」
「いやいや、別に俺は投擲以外じゃ使い道ねえし。これ、配信中なんだろ?」
「え? ……あっ、ご、ごめんなさい! ずっと映しちゃってて!」
「別にいいって。どうせ素顔隠してるわけだし。それじゃあ、装備返す分、ちょっと宣伝していいか?」
「え? あ、うん……大丈夫だよ」
「それじゃあ。俺の妹がキリキリマイって名前で活動してるんだ。チャンネル登録よろしくな! よし、オッケーっと」
「……えーと、あなたのはいいの?」
「あっ、忘れてた。俺は今、ひょっとこ兄貴ってチャンネル作ってあるんだけど、そのうち動画投稿と配信やってくから今のうちに登録しておいてくれ。あっ、ルルラっていうフェアリーが歌って踊ってるショート動画があるから、そのチャンネルだな」
「お、お兄様!? 本当にあげちゃったんですか!?」
「ああ、そうだ。ばっちり宣伝しておいてやったから感謝してくれ」
「は、恥ずかしいからやめてほしいって言ったのにぃ……」
ルルラはそう言ってるが、人目に慣れればきっと内気も治るはずだ。
とりあえず、これで宣伝は終わりでいいだろう。彼女に装備を返却したあと、俺は息を吐いた。
「とりあえず、俺の目的も終わったし、街まで送って行こうか? 友達にも合流しやすいだろ?」
「え? ……う、うん。送ってもらえるなら、送ってほしいんだけど……街まで遠くない?」
「俺はいま、【ワープ】の転売中なのは知ってるか? これが一つあれば、パーティー単位でなら移動できるからな」
「あっ、【ワープ】は50000ゴールドになります。欲しかったらいつでも言ってください」
ルルラが慣れた様子で宣伝し、ぺこりと頭を下げる。
それを見て空城院はようやく、心からの笑顔を浮かべた。
「それじゃあ、えーっとパーティー登録お願いしてもいい、かな?」
「ああ。そんじゃ、アンタレスに移動するぞ」
俺は、彼女をパーティーに誘い、アンタレスへと移動した。
「……なつみっ!」
アンタレス噴水広場に移動すると、恐らくは空城院の友人と思われる子が抱きついていた。
「……マナ。ごめんね、心配させちゃって」
「いやっ、それはこっちのセリフっす! ウチがもっと強かったら、なつみをあんな目に合わせなくて済んだのに……っ! あっ、そうっす! ありがとうございます、ひょっとこの兄貴さん!」
ぺこりと深く頭を下げてきたマナと呼ばれた子に、俺は苦笑する。
「いや、俺は別に初心者狩りをする奴らが気に食わないっていう個人的な理由もあるからな」
「素晴らしいっす……ひょっとこの兄貴! あっ、ウチもチャンネル登録しておいたっす! これから楽しみにしておきます!」
ひょっとこの兄貴、ではまた意味が変わらないだろうか?
目を輝かせるマナに苦笑していると、何やら人があつまってきた。
「……あんまりここにいると目立ちそうだし、そろそろ俺はこの辺で」
「本当に、ありがとね」
「ありがとっす!」
人が集まってくる前に、俺はイレルナへと【ワープ】で移動して逃げた。
PKは別にいいが、やるなら強いプレイヤーを狙え、というのが俺の考えだ。
初心者狩りは、ゲームのプレイ人口に関わってくる大問題でもあるからな。
プレイ人口が減れば、ゴールドの現金への換金率も下がるはずだ。
人気ゲームじゃないものに、課金する人間はそれほどいないからな。
……初心者狩り、か。
異世界でも似たようなことがあったな……魔族の奴らは、俺が成長する前に殺そうとしてきたものだ。
思い出したら、ムカついてきたぞ。
―――――――――――
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