第27話







 汎用スキルを買う金はまだ残っているのだが、次の目的はこの街のクランハウスをすべて手に入れることだからな……。

 この金は、そのために取っておく必要がある。


 とりあえず、引き続き金策をしていくことは決めているのだが、物の販売はかなり目立つんだよな。

 おまけに、買い手とやり取りをし、売りつけるまでに時間もかかる。


 そこに拘束されてしまうと、俺のレベル上げが滞る。

 舞に凄いと褒めてもらうためには、トップ攻略組の枠にいた方がいいだろう。少なくとも、春休みの間くらいは。


 俺も、店舗のようなものが持てたらいいんだけどな……。

 そんでもって、アルバイトでも雇ってそいつに販売を任せられれば楽なんだが。


 このイレルナの街であれば、クランハウスを店舗がわりにするとかはできるのかもしれないが……まだプレイヤーはいないので、店舗のように使うのは難しい。


 装備の売却をするなら、プレイヤー人口の多いアンタレスで行うべきだろう。


「ってわけで、商品を売りたいんだけど……何かいい手段はないか?」

「それをシスターの私に聞きますか?」

「いや、一日休みなくブラ「えい」――……働いているシスターさんなら何かと詳しいと思ってな」


 平手打ちを間に割り込まれた。


「そうですね……。異邦人であれば、フェアリーと契約して店番を任せるということもできると思いますが、どうでしょうか?」

「……フェアリー?」

「はい。異邦人の方であれば、妖精の森でフェアリーと契約できるはずです。戦闘の補助をお願いしてもいいですし、出店のようなものを使って店番をするという手段もあると思いますよ?」


 ……へぇ、そんなこともできるんだな。

 ヘルプには書かれていないのだが、さすが年の功だな。


「私、まだ二十歳ですよ?」


 ニコニコ。今までで一番のビンタの準備がされている。あれをくらったら、さすがにHPにダメージを受けそうだ。


 それにしても、なぜ気づかれた。

 俺の心のログでも読んだのかもしれない。

 これからは下手なことを考えないでおこう。


 夜全く寝ていないのなら、人生経験は1、5倍くらいあるのでは? とかはまったく考えてないぞ。

 笑顔の圧から逃げるようにして、俺は石像のところに行ってスキルブックを見る。


 スキルブック。これはこの街でしか購入できないものだ。

 購入後、自分で使用することでそのスキルが使用可能になる。

 ……【ワープ】のスキルって誰でも使える汎用スキルだし、もしかしたら皆欲しがるかもしれないな。


 これ転売したらいい金儲けになるのでは?

 とりあえず、妖精の森でフェアリーを契約できたら、色々と試してみるとしよう。

 もしも、【ワープ】の転売で稼げるのなら、今あるゴールドは【ワープ】への投資用に残しておいたほうがいいだろう。




 冒険者クランで妖精の森について調べてみたところ、イレルナから南にある森を抜けた先にあるらしい。


『ただ、気をつけてくださいね。妖精たちはイタズラしてくることもありますから』


 シスターからのアドバイスだ。

 一体何をされるのだろうか? えっちな悪戯ならお兄ちゃん喜んじゃうぞ。

 そんな冗談を考えながら、森を進んでいく。

 

 この森の出口付近に、フェアリーたちが暮らすで妖精の森があるらしい。

 実は金策のために何度かここには来ているのだが、その時はこの森の入り口周辺で狩りをしていただけだった。


 奥地までは行ってなかったんだよな。


 ここに出現するのは魔法使いタイプの魔物が多く、遠距離攻撃が多い。

 ……とりあえず、新しいスキルを使っていくとするか。

 

 【変化への耐性】はパッシブスキルなので、特に使うことはない。

 今回使用するのは、【偽装者】だ。


 これは、自分の想像したものや変身したいものに姿を変えることができる。

 名前も変更可能ではあるのだが、他のプレイヤーに変身することはできないらしい。

 まあでも,他のプレイヤーになり変わることはできなくても、今の自分ではない何かに変身することはできるわけだ。


 例えば、性別を変更することもできる。……まあ、スキル発動中のみだが。

 目立ちたくないときは、このスキルを使って正体を隠して活動するのもありかもしれない。


 とりあえず、今回変身するのは――発見した魔物、シャーマンゴブリンだ。

 大きな杖を持って歩くゴブリン三体のうち、一体に姿を変えた俺はそちらへと近づいていく。

 シャーマンゴブリンはこちらに気づいたが、俺を仲間と認識したようで特に攻撃してくることはない。


 ……へぇ、バレないんだな。

 これは便利だ。今の俺の状態は敵から発見されていない状態でもあるため、これなら――次のスキルに移行できるな。


 俺は最後尾にいたシャーマンゴブリンの背後から掴み掛かり、口元を押さえる。

 同時に、スキルを発動する。【致命的な一撃】と【暗殺の一撃】と【暗殺宣告】だ。シャーマンゴブリンの弱点部位を見極めた後、【暗殺の一撃】による不意打ちを仕掛ける。


「……っ!?」


 シャーマンゴブリンは悲鳴をあげたが、すぐに静まり返って動かなくなる。

 ……へぇ、便利だな。

 シャーマンゴブリンはドロップアイテムを残して天へと消え去っていったが、他のシャーマンゴブリンはまだ気づいていない。

 しばらく様子を見ていると、シャーマンゴブリンがちらと後ろを振り返ったが……別に俺が倒したとは思っていないようだ。


 別に、魔物が一体、二体減ろうとも気にしないようだ。そういうAIなんだろうな。


 ……これなら、いくらでも不意打ち可能だな。

 俺はその調子でシャーマンゴブリンを倒し、【偽装者】を解除する。






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